「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』7月の献立会議【前編】

7/3~30に提供するコース内容を師弟で話し合う、京都『衹園さゝ木』の献立会議前編。7月は京都の風物詩・祇園祭が行われたり、七夕の節句があったり、夏の土用入りを迎えたりと歳時が多い時期です。コースの中にうまく取り入れつつ、お客に「おいしく、楽しく」食べていただく料理を考案。前編では先付、八寸、お椀についての会議模様をお届けします。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:竹中稔彦

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

調理スタッフは、煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、千谷友哉さん、桑原汰知(たいち)さん、下澤海里(かいり)さん。他、4月より一年生が5名入店。また、『衹園さゝ木』監修予定の店舗より2名が参加。


先付

佐々木
7月は梅雨も明け、夏本番。京都では1カ月間にわたる祇園祭が行われ、街も今まで以上に盛り上がりを見せる時季。行事ごとも多いですね。そのへんを折りこみながら、献立を考えていきましょう。

ではまず、先付からいく? 前菜や八寸からスタートする? 案がある人は意見出して。
坂東:
先付で、まず涼を感じていただけたらと思います。

ガラスの丸い器にトサカノリを敷き、海水ジュレ、シロエビや甘エビ、海水ジュレの層に。そしてキャビア、新ショウガか新レンコンの甘酢漬けを散らし、スライスしたラディッシュ、ミニオクラを飾ります。
器の中に海藻やエビがいて、海の中で泳いでいるみたいな見た目にできたらな、と。
田中:
僕はタコの先付がいいなと思っています。

一口大くらいに乱切りした長芋やキュウリに発酵させたトマトウォーターのジュレをかけ、昆布オイルで油霜したタコをのせてキャビアを添えます。彩りと酸味を添えるため、パプリカのピクルスを周りに散らして。

昆布オイルを試作したので、味をみていただけますか。二番だしの昆布を揚げてから油と合わせました。味は抜けていますが、香りは移っています。

佐々木:
(においをかいで)……確かにええ香りやね。
千谷:
2品考えてまして、一つ目はタコを煎り酒だしで低温で火入れしたもの。大葉オイルで和えたキュウリとトマトと共に盛り、キャビアを添えます。

もう一つは、毛ガニと針打ちしたキュウリを混ぜて発酵トマトジュレをかけた一品。キャビアを添え、天にキュウリのよりを飾ります。
下澤:
車エビとウニの先付を考えました。
地漬けした青ズイキを敷き、車エビと針打ちしたラディッシュ、フィンガーライム、枝豆を盛り、ウニをのせ、軟らかく仕立てたユズジュレをかけて穂ジソを散らします。和えながら食べていただくイメージです。
佐々木:
なるほど。 うーん……タコもええけど、坂東のシロエビの料理いいね。

ただ、海水ジュレは濃いとキャビアの塩分が負けるから、昆布だしでのばして。あと、7月はワカメが旬やからトサカノリじゃなくワカメを叩き切りにして合わせるとええんちゃうかな。
新レンコンはレンコン餅にして冷製に。その上にシロエビともう一種……うん、イカも盛ると存在感が出てきそうや。キャビアをのせ、上からゆるゆるに仕立てたワカメの海水ジュレをかける。
坂東:
何か飾りはいりませんか?
佐々木
いらんと思う。オクラとかをのせるとそっちが目立ってキャビアの存在感がなくなるねん。見た目に寂しかったら考えよう。赤が必要ならイカじゃなく車エビにするとか、器でリカバリーできないか、とか。

……あ、海水ジュレじゃなく、昆布ジュレも合いそうや。
粉末にした昆布をエスプレッソマシンに入れて抽出すると、濃い昆布だし、うま味の塊みたいなんが出てくる。それをちょっとだしでのばしてジュレにするねん。どっちが合うか試してみよう。

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