『神楽坂 石かわ』×現代作家

×高仲健一vol.2【鼎談】築いたものを壊しながら前に進む

2023.01.19
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連載:『神楽坂 石かわ』×現代作家

くねくねと細い山道を進んだ先に現れる高仲健一さんの工房兼ご自宅を、ギャラリー『桃居』の広瀬一郎さんを伴って訪れた『神楽坂 石かわ』店主の石川秀樹さん。クリエイターとして同時代を生きてきた高仲さんと石川さんには共通点が多いと、二人を見守ってきた広瀬さんは言います。現代作家と料理人の20年の歩みを振り返りつつ、高仲さんの初期から近年の作風の変化に迫ります。

文:渡辺紀子 / 撮影:喜多剛士 / 編集:伊東由美子
高仲健一さん(画家・書家・陶芸家)

1966年生まれ。20代で東洋美術や工芸に魅せられ、絵を描き始める。会社員を経て、93年に千葉県へ移住。窯を築き、陶芸を始めるなど本格的な創作活動へ。東京の『ARTS&SCIENCE』や『銀座 日々』などで個展を行う。

広瀬一郎さん(工芸ギャラリー『桃居』店主)

1948年生まれ。出版社勤務、飲食店経営を経て、87年に『桃居』開店。東京都港区西麻布にて、産地や権威にとらわれず、生活に根付いた工芸作家のうつわを紹介する場としてのギャラリーを営む。

石川秀樹さん(日本料理店『神楽坂 石かわ』店主)

1965年生まれ。20歳で上京し、フリーターを経て、都内の日本料理店で計8年修業を積む。その後、埼玉や八重洲の割烹で計8年料理長を務め、2003年、37歳で独立開業。『神楽坂 石かわ』の他に、同じく神楽坂に『虎白(こはく)』、銀座に『蓮 三四七』など、スタイルもさまざまな計9店舗を展開する「石かわ」グループを率いる。

山の暮らしが創作の原点

ish0001-2d囲炉裏の煙で黒く燻された2階で鼎談が始まった。左から、広瀬さん、高仲さん、石川さん。

高仲健一(以下:高仲)
『桃居』で初めて石川さんにお会いした時、龍の掛け軸を買っていただきましたが、絵をちょっと見ただけですぐ「買います」って。そのリズムがすごく面白いなぁと思ったんです。
広瀬一郎(以下:広瀬)
高仲さんも李朝のうつわをコレクションしてらっしゃるけど、思いきりのよい買い方が石川さんと似ている。お互いのバイブレーションがぴったり合ってるから、作る人、使う人を越えたお付き合いが始まったんでしょうね。
石川秀樹(以下:石川)
僕は作家の方と積極的にはお付き合いしないようにしているんです。うつわを選ぶ時に影響されてしまうから。でも、高仲さんとはほぼ同級生で、自分の店を持った頃に出会ったこともあって、特別なご縁を感じています。山の家も素晴らしくて、訪れるのが楽しみになっています。
高仲:
住み始めてもう25年以上経ちます。水道もガスもなく、薪の火で煮炊きするような、半自給自足の生活です。今は子どもたちも独立して夫婦2人になりましたが、ヤギや鶏、犬、猫、亀など、たくさんの生き物たちと暮らしています。
そういう山の暮らしが、作陶の原動力になっていると思うんですよ。

ish0001-2e山のてっぺんに家はある。緑の木々に覆われた自然環境。作品づくりのヒントがあふれている。

ish0001-2f

李朝から怪獣へ

ish0001-2g高仲さんと石川さんの仲を取り持つ、キューピッドのような存在の広瀬さん。

石川:
改めて、作陶を始めた頃の話を聞いてもいいですか。
高仲:
窯を築いたのは29歳の時で、李朝(※)を手本に作陶を始めました。できたうつわを神田の名喫茶『李白』に持っていくと、ご主人が500年前の李朝の茶盌(ちゃわん)の隣に並べるんです。一目瞭然、自分の至らなさが分かる。これは李朝の文化を学ばねばと思って、毎日、漢文、漢詩を朗読し、仏書、日本古典を勉強し、座禅を組むようになりました。僕にとって、技術の習得というより精神的に深めていくことが必要でした。これは今も変わらないです。

※李朝:約500年続いた李氏朝鮮の時代のうつわを指す。戦国武将、利休らが好んで用いた。名もなき職人たちの手になるうつわは、厚手でひずみがあり、素朴な作風が特徴。侘び寂びを好む日本人に今も愛され続けている。
広瀬:
料理人にとっては、料理に寄り添ってくれるうつわも大事でしょうが、挑発してくるような、どう使いこなせばいいんだろうといううつわも大事。最近の高仲さんの怪獣とか宇宙防衛軍といった作品はまさにそれかなと思うんですけど。
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