『神楽坂 石かわ』×現代作家

×谷口 嘉vol.2【一問一答】気品とテクスチャーを生む、型吹きの強みとは?

「ガラスという素材は制約も多いですが、美しく、そして、面白い」と、谷口 嘉(よしみ)さんは言います。日常使いのうつわにクリエイティビティを発揮しつつ、時には大きなアート作品も出がける気鋭のガラス作家。繊細でエレガント、独特の“揺らぎ”を感じさせる作風は、いかにして築かれたのか? 縁に金彩を施す理由は? 『神楽坂 石かわ』店主の石川秀樹さんから5つの質問を預かり、神奈川県川崎市にある工房を訪ねました。

文:渡辺紀子 / 撮影:綿貫淳弥 / 編集:伊東由美子

目次


Q1:ガラス作家を志したきっかけは?

ish0006-2a『銀座 日々』で発表する新作の二段重を制作中の谷口さん。これから磨く工程に入る。

小さい頃から何かを作り、手を動かすことが好きで、美大を受験しようと決め、絵よりは造形の方が向いているという自覚があったので、陶芸の道に進めないかと工芸分野のある美大を探しました。

ところが、自宅から通える範囲で受験候補に挙がった美大には、当時、油絵から陶芸へ進むコースしかなく、工芸コースはガラスか金属のみ。その2つならガラスだろうと、受けたところ合格し、この道に進むことになりました。ガラスという素材の面白さ、美しさに気づいたのは学び始めてからです。

大学で学んだ創作はアート作品がメインでした。ガラスを実際に触るのは2年生からだったのですが、卒業までの3年間では足りないなと思い、卒業後は吹きガラスの研修施設で5年働くことにしました。その後、大学の研究室の助手として6年。それからフリーになりました。

同じガラスを扱うのでも、アート作品と違ってうつわは形式がある程度決まっています。制作工程も、アート作品に比べて作業的な順序が組み立てやすいので、仕事としてはやりやすいと感じます。
本格的に今のようなうつわの仕事を展開しだしたのは2016年からになります。

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