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【レシピ付き】福島を味わう懐石vol.1「春の前菜」

風評払拭につなげる復興庁の情報発信事業「福島を味わう 食文化の結びPROJECT in福島」。その一環として、去る2月、福島市で100人規模の食事会が行われました。“食材の宝庫”福島の農水産物を随所に用いたオリジナル懐石料理を手掛けたのは、日本料理アカデミーを中心とした福島県内外の料理人。知られざる福島食材の魅力と共に、全9品のレシピを4回にわたってお届けします! vol.1は7つの料理からなる春の前菜。懐石ならではの丁寧な仕事も必見です。


※復興庁公式サイト「福島の今」内「福島を味わう 食文化の結びPROJECT in福島

目次

田村圭吾さん(京都・西陣『京料理 萬重(まんしげ)』若主人)

昭和45年生まれ。京都・西陣で昭和12年に創業した『京料理 萬重』三代目。「日本料理アカデミー」には設立時から参加し、現在は地域食育委員長。「京都料理芽生(めばえ)会」会長、「全国芽生会連合会」副理事長を歴任。「野菜ソムリエ京都」を立ち上げ、現在顧問を務める。今回の懐石は、寿司以外の前菜を担当。

北倉滉大(こうだい)さん(京都・伏見『京料理・寿司 松廣』若主人)

江戸前寿司と京料理を供する、創業60余年の『京料理・寿司 松廣』三代目。「京都料理芽生会」会員。平成生まれの29歳で、今回の調理チームの中では最年少ながら、前菜の寿司と水物を担当。

福島食材を京都らしい懐石仕立てで

福島食材を使ったオリジナル懐石料理の前菜手前から、郡山(こおりやま)産ふきのとう白扇(はくせん)揚げ、大豆 利休麩 白酢和え 三つ葉、つぶ貝白子和え、いわし煎り鰹、鮫川(さめがわ)村産紅白梅長芋、郡山産菜の花浸し。真ん中は、福島県「天のつぶ」を使った箱寿司。調理担当:『京料理 萬重』田村圭吾さん、『京料理・寿司 松廣』北倉滉大さん(寿司)。

海に面した「浜通り」、奥羽(おうう)山脈と阿武隈(あぶくま)山地に挟まれた「中通り」、磐梯山(ばんだいさん)と猪苗代湖(いなわしろこ)を有する豪雪地帯の「会津地方」。全国3位を誇る広大な面積を有する福島県は、気候風土の違う3つの地域で、多彩な農水産物が育まれてきた。

ところが、2011年の東日本大震災後、福島県の食材は原発事故による風評被害にさらされている。その影響は未だ払拭されず、県民を悩ませ続けている。

復興庁は風評被害の払拭のため様々な取り組みを行っているが、その一環として、去る2月18日に県内で行われたのが今回の食イベント。オリジナルの懐石料理を通して、多くの参加者が福島の農水産物の魅力に触れた。

この懐石を仕立てたのが、日本料理アカデミー所属の京都の料理人と、全国芽生会連合会を中心とした福島県内外の料理人。日本料理アカデミーの副理事長で、京都の老舗料亭『山ばな平八茶屋』主人の園部晋吾さんは、「県内の産地を訪問し、漁業・農業の生産者と交流した上で食材を選びました」と話す。

園部さんが中心となって献立を組んだ全9品の懐石料理は、彩り豊かな前菜から始まる。「福島と京都の出逢い」をテーマに、福島県産の野菜に、利休麩や京豆腐など京の味を合わせた7つの料理で、早春の季節感を表現している。

福島のお米「天のつぶ」を使った箱寿司のレシピ

「天のつぶ」は、福島県が15年かけて開発したオリジナル品種の白米。2011年のデビューということもあり、震災復興のシンボルになっている。しっかりとした硬めの食感と粘りが少ない特徴を生かし、今回は箱寿司に仕立てた。

【材料 ※6本分】

福島県「天のつぶ」……850g
鯛……900g
酒塩(酒に少量の塩を加えたもの)……適量
●鯛の漬け酢
|米酢……500㎖
|淡口醤油……10㎖
|塩……1g
車エビ……25尾
塩……適宜
煮干瓢(かんぴょう)※2…30g
●寿司酢(作りやすい分量)
|米酢……2ℓ
|砂糖……1.5㎏
|塩……450g

※煮干瓢
干瓢(乾燥)100gを粗塩でもみ、傷をつける。水洗いし、10分ほど水にさらしてから、約15分茹でる。鍋に水500㎖・濃口醤油150㎖・ザラメ150gを沸かし、細かく切った干瓢を煮汁が50㎖程度になるまで中火で煮る。

【作り方】

<寿司飯を作る>

「天のつぶ」を洗い、30分ほどザルに上げておく。1ℓの水に30分浸水させてから炊く。
①を半切りに移して広げ、寿司酢200㎖を回しかけ、切るように手早く混ぜる。自然に冷まし、硬く絞った布巾をかぶせておく。

<鯛を塩〆にする>

鯛をそぎ切りにし、3%の塩をして1時間ほど置く。
酒塩で洗い、漬け酢に1分ほど浸ける。水気を拭き取り、血合いを切り取る。

鯛を塩〆にし、漬け酢に浸ける。

<仕上げる>

車エビを5%の塩水で4分ほど塩茹でし、氷水で急冷する。殻をむいて開き、縦に切る。頭と尾の部分を少しカットして形を整える。
押しずしの型に②の寿司飯140gを広げて手で押す。煮干瓢をのせ、再び寿司飯140gを敷き詰める。端の方は多めに寿司飯を入れ、しっかりと手で押して平らにする。④、⑤を並べて押し、型から外す。

鯛と車エビを箱寿司にする

⑥をさらしで包み、1時間ほど置いてから食べやすい大きさに切り出す。

つぶ貝白子和えのレシピ

春先から旬を迎えるツブ貝は、コリッとした食感と磯の香りが際立つ、なめらかな白子和えに。大根と共にツブ貝を下煮することで、適度な柔らかさが生まれ、心地よい歯ごたえになる。

【材料】

ツブ貝……10個
酒……300㎖
水……500㎖
大根(乱切り)……100g
煮汁※1……500㎖
●白子の和え衣
|タラ白子……200g
|塩・酒・薄口醤油……各適量
柚子・クコの実……各適量

※1:煮汁
二番だし:薄口醤油:みりんを10:2:3で合わせたもの。

【作り方】

ツブ貝はよく水洗いし、殻ごと下茹でする。流水にさらしてから身を取り出す。水管の両横にある唾液腺などを取り除いて掃除し、しっかりと洗う。
①を酒・水・大根と共に圧力鍋で15分加熱し、細かく切る。
煮汁をひと煮立ちさせて②を加え、蓋をして15分ほどコトコト煮る。
タラ白子は塩を振り、よく揉んでぬめりを取り、水洗いして2時間ほど水にさらす。
④を再び洗い、酒を振る。蒸してしっかりと火を通し、粗熱を取って裏漉しする。
③を⑤で和え、薄口醤油で味を調える。柚子の皮をおろして混ぜ合わせて猪口に盛り、クコの実を飾る。

ツブ貝を旨煮にし、白子和えに左/ツブ貝を煮上げた③の状態。右/⑥の白子和え。

鮫川村産紅白梅長芋のレシピ

阿武隈山系の頂上部に位置する鮫川村で育つ、持ち味の強い長芋を梅型に切り、シロップと割り梅酢にそれぞれ浸けて紅白梅に見立てた。シロップ漬けは蒸してホクッと、梅酢漬けはシャキシャキの生と、食感に変化を持たせている。

【材料】

鮫川村産長芋……700g(約1本)
●シロップ
|水……900㎖
|砂糖……300g
●割り梅酢
|梅酢……300㎖
|二番だし……900㎖

【作り方】

鮫川村産長芋を8㎝長さに切り、梅型に抜く。5㎜厚さの輪切りにする。
①の半量をバットに並べ、スチームコンベクションオーブンを95℃に設定し、食感が残るように蒸す。
シロップをひと煮立ちさせて②を30分浸け、陸上げする。
残りの①を割り梅酢に30分浸け、陸上げする。

長芋をシロップと割り梅酢に漬ける

大豆 利休麩 白酢和え 三つ葉のレシピ

『萬重』田村さん愛用の京都『とようけ屋 山本』の「絹ごし豆腐」を使った白和え衣は、大豆の風味がはんなり上品。そこに煮大豆と利休麩を合わせ、京都らしい和え物に。「大豆は食感が残るよう煮上げるのがコツ」と田村さん。

【材料】

大豆……100g
大豆の煮汁※1……1ℓ
利休麩……1個(80g)
利休麩の煮汁※2……600㎖
三つ葉……適量
●白酢
|絹ごし豆腐……2丁(800g)
|薄口醤油……大さじ2
|砂糖……80g
|米酢……100㎖

※1:大豆の煮汁
大豆の戻し汁:薄口醤油:濃口醤油:砂糖を20:1:1:2で合わせたもの

※2:利休麩の煮汁
カツオ昆布だし:薄口醤油:みりんを12:1:1で合わせたもの

【作り方】

<大豆を煮る>

大豆はよく洗い、たっぷりの水に1日浸ける。戻し汁は残しておく。
①を少し食感が残る程度に塩茹でする。
鍋に煮汁と②を入れ、弱火で1時間ほど煮る。そのまま煮汁に一晩浸しておく。

<その他の材料の下準備をする>

利休麩の煮汁をひと煮立ちさせ、利休麩を加えてさっと煮る。そのまま煮汁に一晩浸しておく。
三つ葉の軸をさっと茹で、2㎝長さに切る。

<白酢を作る>

絹ごし豆腐をさっと茹で、1時間ほど重しをして水切りする。
⑥を裏漉しし、すり鉢に移す。薄口醤油・砂糖・米酢を加えてすり混ぜる。

白和え衣

<仕上げる>

④の利休麩の汁気を切り、大豆と同サイズに切る。ボウルで③の大豆と合わせ、白酢で和える。

大豆と利休麩の白和え

猪口に盛り、⑤の三つ葉を飾る。

いわし煎り鰹のレシピ

番茶と梅干しで10時間下煮する昔ながらの仕事で、イワシを骨まで柔らかく火入れ。醤油や砂糖で照り煮にするが、田村さん曰く「見た目がおかずっぽくなりすぎるので」、粉ガツオをまぶして仕上げた。

【材料】

小イワシ(体長10㎝程度)……10尾
番茶……1ℓ
梅干し……2個
酒……150㎖
濃口醤油……50㎖
砂糖……30g
粉ガツオ……適量

【作り方】

小イワシをよく水洗いする。鍋に並べ、梅干しと番茶を入れ、柔らかくなるまで弱火で10時間ほど煮る(茶振り)。煮汁が少なくなったら水を足し、煮上がりの煮汁を150㎖にする。
酒・濃口醤油・砂糖を加え、煮汁がなくなるまで弱火で煮絡める。
②の粗熱を取り、粉ガツオをまんべんなくまぶす。

イワシを照り煮にし、粉ガツオをまぶす

郡山産菜の花浸しのレシピ

郡山市の布引高原は菜の花畑が一面に広がっている。その春の風景を前菜の彩りに添えた。柔らかい花の部分だけを使い、他の料理との調和も考えて、しっかりと水にさらして苦みを抑えている。

【材料】

郡山産菜の花……2束(花の部分だけを使用)
●浸し地
|二番だし……400㎖
|薄口醤油……40㎖
|みりん……40㎖

【作り方】

浸し地の材料を合わせてひと煮立ちさせ、冷ましておく。
郡山産菜の花は先の柔らかい部分を使う。食感が残る程度に塩茹でし、すぐに冷水に取って急冷し、しばらく水に浸けておく。※苦みを生かしたい場合は水にさらさないこと。
②の水気を切って①に半日浸す。

郡山産ふきのとう白扇揚げのレシピ

郡山市で自然栽培された大きなフキノトウを白扇揚げに。今回はシンプルに塩をぱらっと振って供したが、田楽味噌をのせてもよい。

【材料】

郡山産フキノトウ……20個
小麦粉(打ち粉用)・片栗粉(衣用)・塩・揚げ油……各適量

郡山産フキノトウは汚れのある外葉を取り、しっかりと開いて、刷毛で小麦粉をまんべんなく付ける。
片栗粉と水を同割で合わせた衣を①に付け、180℃の油で揚げる。塩を軽く振る。

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