【レシピ付き】<第121回>スッポンと、なにわ黒牛
大阪府下の料理人による勉強会「大阪料理会」。第121回は、2人の料理人が意欲作を発表しました。法善寺横丁の『法善寺 浅草』店主・辻 宏弥さんが選んだテーマは、スッポン。4・5月と2カ月に渡って配信した連載「和食を科学する 料理理科」の実験を経て生み出した椀物を披露しました。西天満『キュイジーヌ・ド・オオサカ・リョウ』店主の畑島 亮さんは、日本料理として供す牛肉の一品を提案。地元のブランド牛・なにわ黒牛を冷菜として仕立てました。その2品のレシピをご紹介します。
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辻 宏弥(ひろや)さん(大阪・法善寺横丁|『法善寺 浅草』店主)
1978年、大阪生まれ。同志社大学法学部を卒業後、銀行員を経て、『神戸たん熊』で日本料理の世界へ。2011年、昭和12年創業の『法善寺 浅草』に入り、17年、四代目店主となる。持ち前の勤勉さで、スッポン・フグ・鱧料理を得意とする割烹の料理を進化させ続けている。
『法善寺 浅草』●大阪市中央区難波1-1-12 https://houzenjiasakusa.gorp.jp/
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畑島 亮さん(大阪・西天満|『キュジーヌ・ド・オオサカ・リョウ』)
1976年、大阪府生まれ。ミナミの料亭や北新地の割烹にて腕を磨き、フレンチ・イタリアンの料理人との交流からソムリエ資格も取得。2010年に独立し、和食と串カツを看板に、ワインを楽しめる店をオープン。大阪の食材に軸足を置きつつ、和洋を行き来する柔軟な発想が持ち味。『キュイジーヌ・ド・オオサカ・リョウ(Cuisine d’Osaka Ryo』●大阪市西天満4-2-7 昭栄ビル1F http://cuisine-d-osaka-ryo.com/
低温調理のすっぽん丸仕立て椀——辻 宏弥さん作
昆布だしでスッポンを煮出しただしに、低温調理の身を合わせた丸仕立てのお椀。焼きネギ、ズッキーニを添えて。
「丸仕立て」はスッポン料理の代名詞でもあり、スッポンといえば酒で煮るのが定石とされているが…。『法善寺 浅草』は、一年中、スッポンのコースを用意する専門店ということもあり、店主の辻さんには「酒を使わずスッポンのだしをとったらどうなるのですか?」という質問が料理人からよく寄せられるという。
そこで辻さんは、酒を加えず、昆布だしだけでスッポン1匹を1時間ほど煮出して、だしとる実験を試みた(連載「和食を科学する 料理理科」の「スッポンの最適調理を考える参照)。その結果を踏まえて、今回は、酒を使わず、昆布だしで甲羅・首・胸だけを煮出して、スッポンだしをとった。
「丸鍋には濃厚なだしがよく合うので、酒も加えた方がいいのですが、椀物にする場合は、昆布だしだけで煮出した方が上品なだしがとれると分かりました」と辻さん。
昆布だし(水700㎖に昆布20gの割合)にスッポン1匹の甲羅と首、胸部分を加えて1時間ほど煮出したスッポンだし。
味付けは淡口醤油と「煮詰め酒」。煮詰め酒とは、酒1ℓを弱火で300㎖まで煮詰めたものだ。甘みはそれほど強くないが、驚くほど強い酸味が感じられる。「これが全体の引き締め役になります。特に昆布の旨みのキレがよくなるんです!」と辻さん。
さらに、「スッポンだしをとった後の身は、やや出がらしのようになって、食感がキシキシしてしまう」と常々思っていたことから、椀種となる足の身はだしをとるのに使わず、最適な火入れを工夫。しっとりと仕上げるため、80℃で霜降りをしてから、煮切り酒と塩でマリネして真空状態にし、これを60℃で30分ほど低温調理した。
だしと身のそれぞれにベストと思う仕事を施したお椀は、エンペラで「月とスッポン」を表現。「酒で煮出さないスッポンだしと、身のしっとり感を強調したかったので、吸口はなしで供しました」。
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