大阪料理会

【レシピ付き】漬物の汁で複雑味を増した桜鯛の酸湯(スァンタン)仕立て

『上方中華 新瓊(しんたに)』の新谷亮人さんは、関西の食文化を中国料理で表現する異色の料理人です。2024年から大阪料理会に参加、今回が初の発表とあって、会員は興味津々。上野修三さん考案の「魚の爽煮(さわに)」をヒントに、桜鯛の一品を披露しました。焼き霜にした鯛に熱々のスープをかけ、香味を付けた2種の油を滴々と。スープの決め手は、漬物の汁と梅干し。複雑味のある酸の表現、香味油の利かせ方など、「和食に大いに取り入れられる」と畑 耕一郎会長が評した注目のレシピをご紹介します。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

文:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

新谷亮人さん(大阪・中崎町『上方中華 新瓊』店主)

1977年、大阪で中国料理店を営む両親のもとに生まれる。調理師学校卒業後、京都『青冥(ちんみん)』で中華の世界に入り、千葉の名店『知味斎(ちみさい)』で技と精神を磨く。2006年、江坂に『中国菜 老饕(ラオタオ)』を開店。人気を博すも、「関西の食文化を中国料理で表現したい」と一大決心。2022年、“上方中華”を謳い、再出発。「大阪の和食を学びたい」という熱量が伝わり、24年、会員に。中国料理からアプローチする新たな大阪料理が、会員の注目を浴びている。

『上方中華 新瓊』新谷亮人さん作 桜鯛の爽煮(さわに) 酸湯仕立て

昨年発売された『上野修三の仕事』で、最初に紹介されている3月の料理は「目張(めばる)の爽煮」でした。上野さんは梅干しを使って、さっぱりとした梅煮にしていました。

この料理を中国料理の手法で仕立てるとしたら…と考えたのが、この一品です。梅干し入りの煮汁を、酸湯(酸味の利いたスープ)に置き換えてみました。今回のテーマは「保存食品と春の幸の融合」なので、乳酸発酵した漬物の汁、梅干しとその漬け汁などで酸味を表現しています。

主役の魚は、今が旬の桜鯛。「爽煮」という料理名から連想し、さっと煮るのではなく、焼き霜にして生の状態で盛り、熱々のスープをかけて半生状態で味わっていただく仕立てにしました。

自家製漬物の乳酸発酵による酸味を利かせる

中国には、発酵させた野菜の複雑な酸味を利かせた料理が幾つもあります。酸辣湯(サンラータン)もその一つで、元は辛いスープに酸っぱい漬物を加えたのが始まりとされています。

うちでは、四川泡菜(パオツァイ)という漬物を常に仕込んでいます。砂糖と酢に塩水、少しの紹興酒などを合わせた液体に、季節の野菜を漬けて乳酸発酵させたもので、塩水を継ぎ足して25年間作り続けています。今回は、その汁を使いました。これを老塩水(ラオエンスイ)と言います。

新谷さんが自家製する四川泡菜の汁(老塩水)。

野菜は4時間ほど風干ししてから老塩水に漬けます。翌日から3日以内が食べ頃ですね。今漬けているのは、キャベツ、大根、ニンジン、ショウガ。その旨みが老塩水に溶け出ています。

日本の漬物で代用するなら、高菜や野沢菜の漬物の汁が近いと思います。白菜を塩水に浸けて乳酸発酵させるのも手です。酸味の中に甘みや旨みがあって、調味に使うと複雑味がぐんと増します。

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