【レシピ付き】野菜だしが効いた初夏の3品
大阪府下の料理人による勉強会「大阪料理会」は、今回で122回目の開催。3人の料理人が、それぞれテーマを決めて一品ずつ発表し、会員が試食してコメントや質問をします。法善寺横丁の『浪速割烹 㐂川』店主・上野 修さんはSDGs的視点で養殖イサキをテーマに焼物を披露。東心斎橋の『旬鮮和楽 さな井』店主・長内敬之さんは、今年よく出回っているという流れ子(トコブシ)を使って、薯蕷(じょうよ)蒸しを考案しました。西心斎橋の『和洋遊膳 中村』店主・中村正明さんは、大阪の郷土料理「えびなす」をフレンチ風にアレンジ。実は偶然にも、3名とも“野菜だし”を底味として利かせていて…。その狙いとは? 3品のレシピと共にご紹介いたします。
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上野 修さん(大阪・法善寺横丁|『浪速割烹 㐂川(きがわ)』店主)
1961年、大阪生まれ。19歳で『㐂川』に入店後、『志摩観光ホテル』のメインダイニング『ラ・メール』へ。総料理長・高橋忠之氏にフランス料理を学ぶ。1994年、『㐂川』二代目に。西洋料理の技術や発想、食材を柔軟に取り入れ、洗練された大阪好みの料理を仕立てる。「大阪料理会」運営委員長。
『浪速割烹 㐂川』●大阪市中央区道頓堀1-7-7 https://kc9j800.gorp.jp/
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長内敬之さん(大阪・東心斎橋|『旬鮮和楽 さな井』店主)
1964年、福井県生まれ。京都や大阪の名店などで料理長を務めた師匠の下、新地の割烹『七生(ななお)』(閉店)にて修業。2005年、独立。チャレンジングな発想で魅せる割烹仕事に、確かな技術が息づいている。ユーモラスなトークも持ち味。「大阪料理会」運営委員。
『旬鮮和楽 さな井』●大阪市中央区東心斎橋2-2-11 日宝セブンセンタービル1F https://syunsenwaraku-sanai.gorp.jp/
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中村正明さん(大阪・西心斎橋|『和洋遊膳 中村』店主)
1963年、奈良県生まれ。20歳で『志摩観光ホテル』のメインダイニング『ラ・メール』入店。総料理長・高橋忠之氏の下、フランス料理を修め、スウェーデン日本大使館の公邸料理人に。さらに『浪速割烹 㐂川』で腕を磨き、1995年に独立。和洋の枠に捉われない自由闊達な料理に定評がある。奈良に菜園を持ち、自ら野菜も栽培。「大阪料理会」運営委員。
『和洋遊膳 中村』●大阪市中央区西心斎橋2-3-22 https://kc2k200.gorp.jp/
伊佐木の共焼 茴香(ウイキョウ)風味——上野 修さん作
「養殖のイサキ」と「昆布を使わないだし」がテーマです
昆布や魚介などの海の幸がどんどん失われています。この事態に、料理人としてどう向き合っていくのか? もっと真剣に考えようと、この数年、仲間と共に「いただきますを考える会」を発足し、産地を訪ねたり、勉強会を重ねたりしてきました。
そして今年2月、継続可能な食を目指して、RelationFish株式会社を設立。漁業の支援や海の環境保全のため、大学などの研究機関と共同で養殖を手掛けようと活動を始めたところです。
そんな中で出合ったのが、和歌山県串本の『大瀬戸水産』が養殖する「大瀬戸イサキ」です。
「海と共に生きる」というスタンスで、自然環境や生態系に配慮した養殖をやっておられて、そのひたむきな姿は胸を打つものがありました。
そこで今回は、天然にはない養殖イサキならではの魅力を引き出そうと考えました。
今回届いた大瀬戸イサキは800gの大物で、脂のりも抜群。まったく臭みもないので、ウロコも内臓も丸ごと使って一品を仕立ててみました。
淡泊な魚で、水分も多いので、三枚におろしたら軽く干した後、脱水シートで余分な水分を抜いて、身の味を凝縮させています。ウロコは素揚げにして食感のアクセントに。内臓はさっと炊いてウイキョウと合わせてソースにしました。
ソースには昆布だしを使いたいところですが、今回は“昆布をいかに節約するか?”も自分の中ではテーマでした。
日本料理人にとって昆布の枯渇は大問題です。今、ある昆布をできるだけ大事に使っていかないと、本当に日本から昆布がなくなってしまいます。
昆布に代わるようなだしを、皆で考えていこう!という気持ちで、今回はトマトやアスパラガスの皮などで、エコな野菜だしをとりました。
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