【レシピ付き】夏の寄せ物、三者三様の仕立て
123回目を数える、大阪府下の料理人による勉強会「大阪料理会」。3人の会員が各自テーマを決めて一品ずつ仕立て、皆で試食してコメントや質問する本会で、6月末に発表された料理をご紹介します。堺市の『山海料理 仁志乃(にしの)』店主・西野保孝さんは、潮汁を天ぷらに。北新地の割烹『味菜(あじさい)』店主・坂本 晋さんは、泉州のトビアラと大阪の丸ナスで割烹風の美しい「えびなす」を仕立てました。宗右衛門(そうえもん)町の『浪速割烹 和亨(わこう)』店主・杉本 亨さんは、涼しげな夏野菜のゼリー寄せを発表。7月の料理ということで、3品とも葛粉やゼラチンを使った寄せ物がベースですが、それぞれの個性が光る三者三様の仕立てになっています。
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西野保孝さん(大阪・堺|『山海料理 仁志乃』店主)
1961年、大阪・堺生まれ。調理師専門学校を卒業後、土佐料理店での修業を経て地元に戻る。1991年、行基(ぎょうき)生誕の地として知られる家原寺門前にて、『山海料理 仁志乃』を創業。地の利を生かして泉州の海鮮を主に、会席料理から鍋、居酒屋風の一品まで幅広く提供。大阪料理会のムードメーカーながら、研究熱心な一面も覗かせる。
『山海料理 仁志乃』●堺市西区平岡町282-1 https://www.umai-nishino.com/
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坂本 晋さん(大阪・北新地|『味菜』店主)
北新地『神田川本店』で修業し、北新地に店を構えて30余年。全国から産地直送で旬の食材を取り寄せ、新旧の技を巧みに融合させて割烹料理を仕立てる。育て上手としても知られ、実力派の若手料理人を次々と輩出。「大阪料理会」では運営委員として、古き仕事も惜しみなく披露している。現在、WA・TO・BIにて「『味菜』の割烹料理」を連載中。
『味菜』●大阪市北区曽根崎新地1-5-4 岩伸スプレッドビル1F https://ajisai-osaka.com/
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杉本 亨さん(大阪・宗右衛門町|『浪速割烹 和亨』店主)
1970年生まれ。『浪速割烹 㐂川』で研鑽し、『天神坂上野』の創業メンバーとして活躍。恩師である上野修三氏の薫陶を受けて、1999年に独立。品書きに80種以上の単品料理を揃え、大阪流カウンター割烹としてのスタンスを守り続けている。穏やかな気性だが、探求心は旺盛。柔軟な発想や仕立ての美しさは、大阪料理会でも定評がある。
『浪速割烹 和亨』●大阪市中央区宗右衛門町2-13 メトロホテル2F
鯛潮天婦羅——西野保孝さん作
“食べる潮汁”をテーマに、極シンプルに仕立てました
うちは堺という場所柄もあって、魚介料理が人気です。宴会のお料理でよく鯛をお出しするのですが、アラがたくさん余るので、だしを取って冷凍で保存していますが、これを汁物でない一品にできないか、と考えて、葛で寄せて揚げてみました。
一見すると炊いた大根の天ぷらのようですが、食べるとプルッとした食感で、お客様にも驚かれます。「潮汁の天ぷらです」とご説明すると、さらに驚かれて…(笑)。「面白いやんか~」と、なかなか好評です。
潮汁は、椀物としてお出しするより、ずっと濃厚に仕立てています。この潮汁に1割の葛粉を加えて煉り上げていくのですが、うちでは、これを2日ほどは寝かせています。作りたてよりも締まって弾力が出るので、揚げやすくなります。
このお料理は、天然鯛であることが大事です。養殖でもやってみたのですが、ちょっと脂が勝ちすぎているというか…きれいなおだしが取れませんでした。
今回は、煎ってミルにかけ、細かくした粗塩を添えて、シンプルにお出ししています。
潮汁をとった後の中骨や頭に残った身をほぐして加えるという手もあるのですが、それだと逆に面白くないかなと思って、あえて何も加えず、“食べる潮汁”というイメージで仕上げました。
会員からは「何か香りを足したり、ショウガをアクセントに聞かせてもよかったのでは?」という意見が多く出た。会長の畑 耕一郎先生は「白キクラゲや枝豆を食感に加えてもいいと思う」とアドバイス。「いろいろと独自にアレンジしてみたい」という会員の関心度の高さが感じられた。
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