大阪料理会

【レシピ付き】SDGsがテーマの秋の料理

2022.09.12
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連載:大阪料理会

世界中がSDGs(持続可能な開発目標)に取り組む中、「大阪料理会」でも身近な課題として会員の意識を高めてきました。8月に行われた125回目の本会では、和食の視点からSDGsを考えようと、3人の会員がそれぞれ料理を発表。吹田市の料亭『柏屋』の松尾英明さんは、枯渇が心配される昆布に代わるだしを提案。安定供給できる菌床栽培のキノコを通して、食材の旬についても考えを発表しました。東天満『懐石料理 雲鶴(うんかく)』の島村雅晴さん作は、だしがらを使った昆布コショウが決め手の、がんもどき。曽根崎『小嘉津(こかつ)』の早川友博さんは、“低活用魚”の鯉を丸ごと味わう味噌煮を披露しました。

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
松尾英明さん(大阪・千里山|『柏屋 大阪千里山』店主)

1962年、大阪府生まれ。関西学院大学理学部物理学科を卒業後、滋賀の名料亭『招福楼』で修業。89年、実家の日本料理店『柏屋』に戻り、3年後、料理長になる。2018年、農林水産大臣より「第9回料理マスターズ シルバー賞」を受賞。21年、龍谷大学大学院の農学研究科 修士課程を卒業。「大阪料理会」運営委員として、会では様々な提案を行っている。
『柏屋 大阪千里山』●吹田市千里山西2丁目5−18 https://jp-kashiwaya.com/

島村雅晴さん(大阪・東天満|『懐石料理 雲鶴』店主)

1977年生まれ、和歌山県出身。北新地『北瑞苑』で9年修業し、2005年に28歳で独立。7年後、東天満に移転。古文書などを読み、日本の古き佳き文化を独学する一方で、科学的アプローチも取り入れる、柔軟で探求心旺盛なお人柄。培養肉の研究開発ベンチャー「ダイバースファーム」、養殖を支援し、海里の環境保全に努める「RelationFish」などを共同経営。
『懐石料理 雲鶴』●大阪市北区天満1-18-17 http://www.unkaku.jp/

早川友博さん(大阪・曽根崎|『小嘉津』店主)

1976年、岐阜県生まれ。ご本人曰く「超田舎育ち」。辻調理師専門学校を卒業後、大阪・北新地にて昭和27(1952)年に創業した『小嘉津』に入る。2011年、35歳で同店を引き継いで三代目となる。19年に現在の地に移転。華美に走らず、質実な日本料理の正道を行く、生真面目な職人。昔ながらの食材や古い料理にも関心が高い。
『小嘉津』●大阪市北区曽根崎1-2-8 マルビル1F https://kokatu.gorp.jp/

帆立貝の飛竜頭(ひろうす)ときのこの煮物椀——松尾英明さん作

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昆布とカツオ節を使わずだしを取り、食材の旬を考える一椀に

天然昆布の不漁が続き、昆布を大切に使わなくてはならないことは周知されていると思います。そこで今回は、昆布に頼らずに旨みを深める、だしを考えてみました。

だしの要になるのは、帆立貝と野菜。
北海道産の帆立貝は、養殖が主流です。質も良く、量も安定しているため、漁獲量減少の危機を乗り越えることができたサステナブルシーフード(持続可能な水産物)の代表格です。
まだまだ我々和食の料理人にも、お客様にも“天然至上主義”が根強いですが、質の高い養殖ものにもっと注目すべきだと私は考えています。

帆立貝柱は蒸し汁をだしとして、身は飛竜頭に加えています。また、ヒモの部分などは、野菜と共に煮出して、これもだしのベースとしています。
さらに、ここにキノコの旨みを加えようと考えました。エノキ茸をさっと煮て、その煮汁ごと野菜とヒモのだしに加え、しっかりと混ぜ合わせて濾す。エノキ茸をだしで洗って旨みを移す、というイメージです。手間はかかるのですが、あえてこの作業を3回に分けて行うことで、雑味のないピュアなエノキ茸の旨みを取り込もうと考えました。

実は、このお椀は、もう一つテーマがありまして…。“食材の旬”について、私なりに考えたことをお伝えできればと思っています。

キノコは秋からが旬ですが、菌床栽培のものは年中出回っています。長野県のキノコ農家さんとお話しする機会があって知ったのですが、コンスタントに作ることで、菌床栽培は品質が安定するのだそうです。ですが、秋冬の食材というイメージが強く、春夏は売れないばかりか、買い叩かれてしまう。こうした問題が品質向上や安定供給の妨(さまた)げになっているのです。

菌床栽培のエノキ茸は年中使える、我々にとってはとても有難い食材です。そこに、プロとしてどんな価値を付けて、どう調理するか? これからの和食の料理人は真剣に考えていくべきではないか、と思うのです。

魚介も野菜も食材の値が高くなり、天然ものはますます希少になっていきます。
天然の争奪戦をするよりも、“時季外れ”に捉われず、今あるもの、持続可能な食材に目を向けて、新しい味わいを創出する。そんな考え方が必要なのではないかと思い、この一椀を考案しました。

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松尾さんの熱い提案に、会員全員が聞き入っていた。試食が始まると、「吸い地の味が深い」と驚きの声が上がった。さらに「初めての食感!」とキクラゲの調理にも興味津々。「乾燥キクラゲを3~4時間蒸しています」という松尾さんの回答に、メモを取る会員が多かった。

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