【レシピ付き】大阪らしい遊び心、3者3様の表現
127回目の大阪料理会は、チャレンジングな力作揃い。西天満『割烹くぼた』の久保田 博さんは、主役素材だけでなく、醤油や花ガツオも燻製。干し野菜のだしと合わせて、独特な複雑味のある一品を仕立てました。新地の『慶喜』の石橋慶喜さんは、エリンギをアワビに見立てる疑似料理に挑戦。枚方市の『天の川なかなか』店主・岡本正樹さんは、なんとゴマ油を自家製した後のカスと、副産物の練りゴマをそれぞれ使ってスイーツと和え物を考案しました。「そこまでやる!?」という手間がかりの3品は、食べ手にとって面白味のある、大阪らしい遊び心に満ちています。
※大阪料理会 公式サイトhttp://www.ukamuse.jp/kameiten.htm
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久保田 博さん(大阪・西天満|『割烹くぼた』店主)
1977年、熊本県球磨(くま)郡生まれ。北新地『味菜(あじさい)』で3年の修業を経て、オランダの『ホテル オークラ アムステルダム』、東京や西宮の和食店で腕をふるう。再び『味菜』に戻り、2010年、『割烹くぼた』を開店。九州の食材を大阪料理会で紹介するなど故郷愛あふれる人情家。大阪料理会きっての釣りキチとしても知られる。
『割烹くぼた』●大阪市北区西天満4-6-14 イーデザインビル101
https://www.kappou-kubota.com/top
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石橋慶喜さん(大阪・北新地|『慶喜』店主)
1962年、北海道・函館生まれ。20代後半から北新地で修業を始め、2002年に独立。「作れるものは手作りすべし」という師匠の教えを守り、クジラベーコンや利休麩も自家製。アンコールペッパーやオリーブ油の玉「オロバイレン」などを取り入れる進取の気性にも富む。大阪料理会では、驚くほど手間をかけた料理を発表することも多々。常に会員の興味をそそる存在だ。
『慶喜』●大阪市北区曽根崎新地1-5-2 大川ビル本館2F https://kc42401.gorp.jp/
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岡本正樹さん(大阪・枚方|『天の川なかなか』店主)
1961年、大阪生まれ。叔父の串揚げ店で料理を覚え、83年に独立。独学で和食の腕を磨き、2004年に『天の川なかなか』をオープンする。オリジナリティのある串揚げを組み込んだ、独自のコースが評判に。自家菜園で野菜を育てたり、卓上の炊飯釜をデザインしたりと、フットワークが軽い。大阪料理会では、意想外の提案をするアイデアマンとして目されている。
『天の川なかなか』●枚方市山之上北町3−12 http://www.e-nakanaka.net/
たら白子薫香みぞれ煮——久保田 博さん作
燻製の香りに干しゴボウと干しカブの風味を重ねました
タラの白子は鮮度がいい状態で入手できず、臭みが気になることがあります。それで、燻製にかけてみたら、これが思いのほか美味しかったんです。
主役の白子を燻製するなら、だしの方にもその香りがあった方が一体感が生まれるかなと思って、花カツオと淡口醤油も燻製してみました。
燻製にはスモークガンを使っています。密閉容器や袋に素材を入れ、チューブで燻煙を送るというもので、白子なら5分と短時間で仕上がります。冷燻なので火が入ることもないですし、コンパクトで場所も取らない。手軽に燻製にトライできる優れものなんですよ。
だしは燻製花カツオと羅臼昆布でとりますが、もう少しコクが欲しかったので、干しゴボウの旨みを加えました。カブのみぞれ仕立てにしたかったので、余った皮も干して合わせ、湯を注いで濾し、旨みを抽出しています。ちょうど、お茶を淹れるような感覚ですね。
タラ白子の持ち味と燻製の香りは、とても相性がいいと思いました。ここに、干しゴボウ特有の香りや干したカブの旨みが加わると、風味に複雑さが生まれます。さらに、振り柚子で柑橘香を添えて仕上げました。
大半の会員が「タラ白子は燻製にすると、ぐっと存在感が強くなる」という感想。だしの燻製香はそれほど強くないが、干しゴボウの香りが印象的、という声も。本会の運営委員長・上野 修さんは「いろんな風味が重なって生まれる複雑味がとても良かった」と話した。
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