【レシピ付き】未利用魚のボラとアカエイの調理提案
カラスミのための卵巣を取った後のボラ、養殖場で厄介者になっているアカエイ。どちらも鮮度がよければ造りでも美味しくいただける魚ですが、独特の臭みが気になるからと今では和食の品書きから姿を消しつつあります。魚介の高騰によって、料理の値段を上げざるを得ない状況が続く昨今、お客様の懐具合を考え、こうした未利用魚を和食店でも出せるように工夫してはどうか? 第128回の大阪料理会では二人の会員が提案を行いました。どちらも独自に下処理を工夫することで、臭みをまったく感じない仕上がりに。苦心の末に生まれた2品をレシピ付きでご紹介します。
※大阪料理会 公式サイトhttp://www.ukamuse.jp/kameiten.htm
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松尾慎太郎さん(大阪・北浜『弧柳(こりゅう)』店主)
1975年、大阪府吹田(すいた)市生まれ。調理師専門学校卒業後、法善寺横丁『浪速割烹 㐂川(きがわ)』に入り、12年間、腕を磨く。他ジャンルの料理店でも経験を積んで2009年、北新地にて独立。22年、北浜に移転し、さらに高みを目指している。大阪料理会では、センスのよさや的確な仕事ぶりで一目置かれる存在だ。
『弧柳』●大阪市中央区内淡路町3-3-3 https://www.koryu.net/
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辻 宏弥(ひろや)さん(大阪・法善寺横丁|『法善寺 浅草』店主)
1978年、大阪生まれ。同志社大学法学部を卒業後、銀行員を経て、『神戸たん熊』で日本料理の世界へ。2011年、昭和12年創業の『法善寺 浅草』に入り、17年、四代目店主となる。持ち前の勤勉さで、スッポン・フグ・鱧料理を得意とする割烹の料理を進化させ続けている。
『法善寺 浅草』●大阪市中央区難波1-1-12 https://houzenjiasakusa.gorp.jp/
ボラの糠(ぬか)みそ煮——松尾慎太郎さん作
卵巣を取った後の身の皮目の匂いを、糠でマスキングしました
ボラは昔から大阪湾でもよく揚がる魚です。特に冬の寒ボラは美味とされ、大阪でも親しまれていた魚ですが、魚屋さんに聞いたら、カラスミにする卵巣を取ったら、残りはほとんどが破棄されているそうで…。すっかり未利用魚になってしまったボラを美味しく食べる方法はないか、と考えたのがこの一品です。
今日は大阪湾で獲れた4㎏の立派なボラで、卵巣を取った後のものをあえて仕入れました。鮮度がよかったので生で食べてみたら、思いの他、身はきれいな味で。ただ、ちょっと皮目の匂いが気になりました。
この臭みを取るにはどうしたらいいか?と考えていた時に、ふと糠で炊いたらどうだろう、と思い付いたんです。ヒントになったのは、筍のアク抜き。糠の風味で筍のえぐみがマスキングされるでしょう。
去年、田辺大根を漬けた糠床が、ちょうどいい状態だったので使いました。新しい糠よりも発酵による旨みと塩気があるでしょう。これを生かさない手はないと思って。
霜降りしたボラを、水で伸ばした糠でゆっくり炊いて、そのまま一晩おいて、糠の味をボラに染み込ませています。この時点で少しパサつきが気になったのですが、仕上げに濃口醤油と砂糖を少し加えたら、砂糖の保湿効果でふっくらしっとり仕上がりました。
糠の味が主張しすぎないように、ボラの頭や骨からとっただしを底味として利かせています。糠床の塩気や旨みと、いい塩梅でバランスが取れたと思います。仕上げにカラスミを振りかけ、穂紫蘇で風味と色どりを添えて、ご馳走感を出しました。
糠床でイワシなどを炊く福岡の「ぬか炊き」「陣田(じんだ)煮」、北陸の「コンカイワシ(イワシの糠漬け)の煮込み」など糠を使った郷土料理はあるが、それとは趣の違う洗練された味わいで、「糠の風味がちょうどいい」と年配の会員が絶賛。未利用魚の調理法として糠の可能性に注目が集まった。また、「ボラは出世魚なので縁起がいい魚。売り方次第で、もっと広まるのでは?」という意見も出た。
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