大阪料理会

【レシピ付き】水晶鱧——『はしま』山本 英さん作

20年前、とある京都の名店の鱧の薄造りに感動し、鱧の骨抜きを独自に研究してきた京橋『はしま』の山本 英(はなぶさ)さん。「大阪料理会」でその技を披露して以来、「鱧といえば山本さん」と目されています。シーズン真っ只中とあって、今回の発表に会員はやはり骨抜きによる生の鱧料理を期待していたよう。応えて、山本さんの提案は「水晶鱧」。2.5㎏の大物を、背と腹に分けて骨抜きをし、夏らしく涼しげな一品に仕上げました。まったく加熱していない鱧は、まさに水晶のごとき透明感。薄造りとはまた違う、生ならではの食感が出色でした。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
山本 英さん(大阪・京橋|『はしま』店主)

1977年、大阪市生まれ。中央大学英文学科を卒業後、22歳で父が営む『はしま』に入店。和食の基礎を学び、25歳で店長に。「コースの中でいろんなタイプの“美味しさ”を表現したい」と意欲を燃やし、京橋では希少な日本料理店として人気を獲得。大阪料理会では、探究心旺盛な40代として活躍が期待されている。

骨抜きをして腹と背の身で仕立てを変えた、夏らしい生鱧の一品です

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鱧の骨抜きを研究し始めて20年くらいになりますが、シーズンが始まると、お客様から「生鱧を食べたい!」というお声を毎年いただけるようになりました。

出始めの鱧は魚体が小さいので、骨を抜くのも大変です。ですが、湯引きにはない透明感や、もちっとした食感、噛むほどににじみ出てくる繊細な旨みなど、やはり生の鱧にしかない味わいを楽しんでいただきたいので、せっせと毎日、骨抜きをしています(笑)。

6月半ばになると鱧も大きくなり、随分、骨抜きがしやすくなります。今日、お出しした鱧は2.5㎏。3㎏くらいまでの大きなサイズが脂ものって、生でお出しするには向いていると思います。

このくらいのサイズになると、背と腹の身を分けた方が、骨抜きしやすいですね。皮を引いて、腹の方は横から、背の方は真ん中あたりに切り込みを入れて開き、その切り口から骨を抜きます。

僕はしょっちゅうやっているので、30分くらいで1尾分を抜いてしまうのですが、身がはがれてしまうという声をよく聞くので、コツを少しお話しします。背の方は身が分厚いので、皮側とその逆の両方から骨を抜くといいと思います。骨が折れることもありますが、その方が身ははがれにくくなります。

また、一気に抜くと身がついてきてしまうので、根元を抑えながら、少しずつ。でも、スピードは速く、という感じでしょうか。鱧はいかり気がある方が骨は抜きやすいと思います。

腹と背では身の厚みが違うので、薄い腹身はバーナーで焼き目を付けて、塩をしたウニを巻きました。せっかくなので、腹と背で趣向を変えて楽しんでもらおうと工夫したものです。

夏らしい仕立てに、と考えて、全体を冬瓜ジュレでまとめています。生のまますり下ろして、だしと白醤油で味を付け、清涼感のある味わいに仕上げました。

osa0017-1c生ならではの鱧の味わい、食感を堪能した会員は、その丁寧な仕事と卓越した技に感心しきり。骨抜きのコツに質問が集中した。ベテラン会員からは「冬瓜の上部と下部を分けて、青い上部を後から加えるともっと色がきれいに仕上がったのでは?」「種を一緒にだしで煮ると、冬瓜の風味が強く感じられる」とのアドバイスが。山本さんにとっても得るものの多い発表となった。

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