大阪料理会

【レシピ付き】じゃこ海老飛龍頭(ひろうす)——『味菜旬香 菜ばな』前田武徳さん作

今回担当の3名の共通テーマはSDGs。東大阪市の『味菜旬香 菜ばな』店主・前田武徳さんは、泉州などでよく揚がる体長5㎝足らずの小エビ、通称じゃこエビに着目しました。前田さんの両親が地元で営む豆腐店の木綿豆腐を合わせて飛龍頭に仕立て、フードマイレージを意識した地産地消の一品を提案。頭と殻は香煎にして飛龍頭に混ぜることで、じゃこエビの風味を強調します。おからに鴨ロースを漬け込むという意外なアイデアも披露しました。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:川島美保 / 撮影:福本 旭
前田武徳さん(東大阪・小阪|『味彩旬香 菜ばな』店主)

1973年、東大阪市生まれ。高校卒業後、梅田の飲食店などを経て、『旬菜 山崎』で腕を磨く。父が営む豆腐料理店『龍鳳洞 石切(りゅうほうどう いしきり)』を手伝い、2011年に独立。穏やかなお人柄ながら勉強熱心で、大阪料理会ではベテラン会員に古い仕事などを積極的に習い、自身の料理に反映している。

じゃこエビの頭も殻も生かして、香りと旨み濃厚な飛龍頭を作りました
 
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泉州でよく揚がるじゃこエビは、体長10㎝ほどのものはトビアラと呼ばれ、大阪人にとっては親しみ深い食材。身が小さくて仕込みの手間がかかるため地元消費が多く、扱う料理人は限られていますが、ギュッと凝縮した旨みがあり、僕が大好きな食材の一つです。

今回はSDGsがテーマなので、頭と殻も使い切る方法を考えました。長時間オーブンで焼いてすり鉢でするだけですが、これがなんとも香ばしいエビパウダーになるんですよ。和え物の仕上げに振るなど、幅広く使えると思います。

僕の実家は地元の東大阪で豆腐店を営んでいまして、とびきり美味しい青大豆の木綿豆腐が手に入る。その強みも生かして、「じゃこ海老飛龍頭」に仕立てました。好みの具材を混ぜて作る飛龍頭はバリエーション豊富で、ある意味サステナブルな料理だと僕は考えています。

豆腐の風味を生かしたいので、じゃこエビと豆腐の割合は1:4程度。そこに、実が締まっていて甘い地元の八尾えだまめとニンジンを彩りに、食感のアクセントにはキクラゲを加えました。最後に味を見ながら、じゃこエビの香煎を加えるのがポイントです。

飛龍頭は揚げた後に合わせだしで5分ほど炊いて味を煮含めますが、そのだしにもじゃこエビの殻で旨みを添えました。エビの存在感が増して、風味豊かな飛龍頭に仕上がったのではと思っています。

これだけでお出ししても良いのですが、ボリューム感を出すために鴨ロースを添えました。もちろん使うのは河内鴨ですが、ここで僕なりのひと手間。おからに数日漬け込むことで、臭みが取れて旨みが増し、身にしっとり感も出ます。おからの活用法の一つとして参考にしていただけると、豆腐屋の息子として嬉しいです。

薬味に添えた生七味味噌は、飛龍頭にも鴨ロースにもよく合います。こちらも田楽や風呂吹き大根など、何にでも合うのでぜひお試しください。

osa0018-2c地元の魅力的な食材や食品を生かし、東大阪まで足を運んでもらう吸引力に繋げたいと語る前田さん。蓋を開けた瞬間に鼻をくすぐる香ばしいエビの香りに、「シンプルだけれど印象に残る一品」との感想が多数。一方で、「もう少しエビの身を残して存在感を出すと、より魅力的になるのでは?」との意見も。鴨ロースのおから漬けは誰もが興味を抱き、「野菜を漬け込んでも美味しいお漬物になります」との前田さんの言葉に、ますます関心が高まっていた。

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