大阪料理会

【レシピ付き】鱧酒盗焼き——『旬菜 喜いち』板倉誠司さん作

初夏から主役素材として和食を彩る鱧も、夏が過ぎると、涼しげな定番の湯引きや落としでは供しにくくなります。秋めいた焼き物などが求められる中、『旬菜 喜いち』の板倉誠司さんが提案したのは酒盗焼き。鱧の胃袋と浮き袋で酒盗を自家製し、タレのベースに用いました。さらに、鱧の子(卵巣)を明太子風にし、すり身と合わせて「裏白椎茸」に。会員も興味津々だった、余りがちな内臓を巧く活用したレシピをご紹介します。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
板倉誠司さん(大阪・東大阪『旬菜 喜いち』店主)

1972年、大阪府東大阪市生まれ。調理師専門学校卒業後、大阪府内や奈良の割烹、和食店で修業し、2008年に独立。地元に『旬菜 喜いち』を開く。大阪の郊外で地域のお客様に愛される和食を目指し、親しみやすさの中に独自の工夫を凝らす。その真面目な仕事ぶりは、大阪料理会の会員も認めるところだ。

鱧の胃袋・浮き袋は酒盗に、卵は明太子風にして、焼き物の味付けに使いました

osa0019-1b

初夏から関西は鱧のシーズン。晩秋まで長く使いますが、胃袋や浮き袋、鱧の子が余って、もったいないな~とずっと思っていました。

そこで、胃袋や浮き袋で酒盗を仕込んでみたんです。きれいに洗ってからベタ塩し、1週間ほど置いてから酒を加えて、また1週間。いい感じに発酵してくれました。

その汁は調味料として活用しています。内臓の方はそのままアテとしてオススメしてもいいのでしょうが、うちでは酒と少量のみりん・淡口醤油でさっと煮て酒盗汁を作り、鱧を漬けて焼いています。鱧の持ち味がぐっと深まって、お客様にも評判です!

卵の方は塩辛にしてお出ししたりもしますが、ふと明太子のように味を付けてみたらどうかな?と思って、やってみたらコレが結構美味しくて。
うちでは、酒を主体に淡口醤油やみりん、昆布とカツオ節の旨みも加えますが、梅肉を作る時に余る梅干しの種も入れています。そこに唐辛子でアクセントを付ける感じですね。

鱧の子で作ると、明太子よりちょっと品がいい味になると思います。今回は、鱧のすり身と合わせて、椎茸の傘裏に塗り、蒸し焼きにしています。
このすり身は、鱧の尾の身を使っています。身幅も狭く、厚みもないので、焼き物や湯引きではお出ししにくい部分ですけど、すり身にはできますから。

すり鉢でしっかりと当たって、卵白を加えて滑らかさを出し、そこに明太子風の鱧の子を加えています。今回の発表で、「昆布だしを少し足したら、もっと滑らかになる」というアドバイスをいただいたので、ぜひやってみようと思っています。

osa0019-1c「鱧は味わいが淡泊なので、なかなか焼き物で個性を出しにくい。鱧から酒盗を作り、その旨みをタレに利かせる工夫が良かった」との意見が大多数。裏白椎茸に使った卵の明太子風も「目の付け所が面白い」と好評だった。畑 耕一郎会長は、「鱧らしいクセのない品のある酒盗の味が素晴らしい」と評した。

この記事は会員限定記事です。

月額990円(税込)で限定記事が読み放題。
今なら初回30日間無料。

残り:621文字/全文:1682文字
会員登録して全文を読む ログインして全文を読む

フォローして最新情報をチェック!

Instagram Twitter Facebook YouTube

この連載の他の記事大阪料理会

無料記事

Free Article

おすすめテーマ

PrevNext

#人気のタグ

Page Top
会員限定記事が読み放題!

月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です