大阪料理会

【レシピ付き】始末料理(突出し3種盛と汁)——『浪速割烹 和亨』杉本 亨さん作

「大阪料理は“始末の心”をもって仕立てるべし」。『浪速割烹 和亨(わこう)』の杉本 亨(とおる)さんは、修業時代の師匠・上野修三さんに叩き込まれたと言います。独立して20余年、常に心掛けてきた始末の料理は、円熟味を増しています。今回は、突出しとして好評だという3種の盛合せを披露。さらに、切れ端やヘタ、皮などを有効活用して取る、芳醇な野菜だしを使って、椀物を仕立てました。「始末がテーマとは思えない、満足度の高さがある」と会員を唸らせた4品のレシピにご注目を!


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

杉本 亨さん(大阪・宗右衛門町|『浪速割烹 和亨』店主)

1970年生まれ。『浪速割烹 㐂川(きがわ)』で研鑽し、『天神坂上野』の創業メンバーとして活躍。恩師である上野修三氏の薫陶を受けて、1999年に独立。品書きに80種以上の単品料理を揃え、大阪流カウンター割烹としてのスタンスを守り続けている。穏やかな気性だが、探求心は旺盛。柔軟な発想や仕立ての美しさは、大阪料理会でも定評がある。

食材を使い切る創意工夫で、料理の魅力も高めるのが“始末の心”だと思います

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始末というと、余った食材を捨てずに使う、というイメージが強いですが、そうではなく、食材を巧く使い切って、値打ちのある料理を作ることだと僕は思っています。

うちは割烹なので、食材の一番いいところは一品料理に使いますが、残った部分も鮮度はいいし、食材として遜色(そんしょく)ない。上手に活用し、3種の突出しにしてお出ししています。お客様には「豪華やな、これだけでお腹いっぱいになるわ」と、好評をいただいてます。

今回は、余りがちな鱧の尾の身、牛スジ、野菜の残りを活用した3品です。
鱧は油焼きにして、自家製のチーズ豆腐と盛り合わせ、カラスミでご馳走感を添えました。チーズ豆腐は、絹ごし豆腐とクリームチーズを1:2で合わせています。

うちでは10㎏のランプ肉の塊を仕入れていますが、さばくと結構大量のスジが取れるんです。煮込みにして酒のアテに、というのでは割烹らしくないし、ちょっと手をかけて菅ゴボウに詰め、タレ焼きにしてみました。

胡麻地和えは、余った野菜を使って付加価値を高めた一品。例えば、冬瓜は緑の皮付きで使うので、白い部分が余る。これを太い麺状に切り、葛打ちして湯がくと、シャクッと面白い食感に。キュウリなら、たて塩して雷干し。ホウレン草の軸や糸瓜の残りなどを合わせると、かなり食感豊かな和え物になります。

今回はもう一品、野菜だしをご紹介したくて、汁物を添えました。
野菜のピュレと合わせてソースにしたり、味噌汁のベースとして使ったり。うちでは、かなり重宝しています。

白菜の外側や玉ネギの切れ端、ニンジンのヘタやカブの皮などなど、捨てずに大鍋にどんどん放り込んで、野菜と同量の水で40分ほど煮出しただけ。セロリなど洋風の香りの強い野菜は向かないかな、と思っています。

造りのツマなど少し赤みが欲しい時、ニンジンは重宝する食材ですけど、案外ロスが多くて。そこで、人参豆腐を作って椀種にしました。鱧の子を忍ばせて旨みを補強しています。

osa0019-2c「食材を使い切るための引き出しが豊富!」「どの品も手間がかかっていて、割烹らしい品がある」という会員のコメントに、杉本さんは安堵の表情。試食用の野菜だしの汁には、だしがらとなった野菜(画像右)も加え、「40分煮出しても風味が残ってます。野菜の上澄みの美味しい部分だけを、だしに使うというイメージです」と解説した。

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