【レシピ付き】「大瀬戸伊佐木つけ焼き 谷中ご飯」と「三州仕立て 糸瓜油煮 水辛子」——『柏屋 大阪千里山』松尾英明さん作
『柏屋 大阪千里山』の松尾英明さんは、担当回で常に「今、料理人として向き合うべきこと」をテーマに料理を発表しています。今回は、養殖魚の未来について。和歌山・串本の『大瀬戸水産』の養殖イサキを使った料理を通して、会員に語りかけました。そのイサキの混ぜご飯に添えたのは、茶懐石の名店に教わったという汁物「三州仕立て」。八丁味噌の粒味噌を煮出すという、赤だしとは似て非なる古き佳き仕事を披露しました。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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松尾英明さん(大阪・千里山|『柏屋 大阪千里山』店主)
1962年、大阪府生まれ。関西学院大学理学部物理学科を卒業後、滋賀の名料亭『招福楼』で修業。92年、実家の日本料理店『柏屋』料理長に。2018年、農林水産大臣より「料理マスターズ シルバー賞」を受賞。21年、龍谷大学大学院の農学研究科 修士課程を卒業。「大阪芽生会」会長、「全日本・食学会」常任理事、「RelationFish株式会社」取締役副社長COO 。「大阪料理会」運営委員として会では様々な提案を行っている。
和歌山の串本でサステナブルな養殖に取り組む『大瀬戸水産』のイサキです
「大瀬戸伊佐木」は僕が勝手に付けた名なんですが(笑)、和歌山県串本町で、地球にやさしいサステナブルな養殖業を展開する『大瀬戸水産』の養殖イサキです。
日本料理店では、店側もお客様もまだまだ「天然魚至上主義」。僕も長らくそうでした。でも、地球温暖化などの影響で海の環境が変わり、天然魚が安定して入手できなくなるかもしれない…。料理人の仲間と「RelationFish(リレーションフィッシュ)株式会社」を立ち上げ、その活動の中で出合ったのが大瀬戸さんのイサキでした。
これからの料理人は、単に上質な養殖魚を見極めて使う、というだけではダメだと思うんです。生産者と共に新しい養殖魚の価値を生み出し、漁業を支援するような活動をしていかないと。本当に欲しい魚介が手に入らなくなってしまう。
この料理は、今年の春先にお出ししていたもので、お客様にも大変好評をいただきました。ところが、今回の発表に合わせて、「料理会の仲間にも1㎏超えの養殖イサキの実力を味わってもらおう!」と意気込んで取り寄せたら、春先と身質がまったく違っていたんです。
養殖魚でも夏は痩せるんですね。同じ1㎏超えでも、見た目がスリムで、脂がきつくない。お造りにしたら、旨みがほどよくて実に美味しかった! 逆に冬場の大瀬戸伊佐木は脂のりが良すぎて、お造りより焼き物や蒸し物向きだと思います。
今回は、特に脂のりがいいものを選んで送っていただきました。タレ焼きにして、ショウガご飯に混ぜ合わせ、実山椒の香りで楽しんでいただきます。うちでは、実山椒は出始めの柔らかく香りのいいものを掃除して、濃いめの塩水で湯がき、冷凍保存しています。
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