【レシピ付き】天王寺蕪づくし——『懐石料理 喜一』北野博稔さん作
大阪産の野菜をテーマにし、11月に開催された「大阪料理会」。2人目の料理担当である『懐石料理 喜一』の北野博稔(ひろとし)さんは、「なにわの伝統野菜」である天王寺蕪を用いた3品を発表しました。定番の含め煮に加え、皮はきんぴら、葉と茎は漬物にして盛り合わせ、天王寺蕪をまるごと使用。メインのお椀は、なんとイタヤ貝のヒモでだしを取り、身はすりおろした天王寺蕪と合わせて真丈に。淡雪のようなふわっと儚(はかな)い食感が、会員の興味を誘っていました。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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北野博稔さん(大阪・河内長野|『懐石料理 喜一』店長)
1983年生まれ。高校卒業後、兵庫県の料理屋で3年修業し、2005年、父が営む創業30余年の日本料理店『懐石料理 喜一』に入る。ワイン好きが高じて、ソムリエの資格を取得。日本料理とワインの相性を追求する若手として、大阪料理会でも一目置かれている。
イタヤ貝と天王寺蕪の相性を追求した「蕪真丈のお椀」です
イタヤ貝は帆立貝に似た二枚貝で、うちではぬたや酢味噌和えにしてよくお出ししています。帆立貝と同じようにヒモの部分を除いて使うことが多いのですが、捨ててしまうのはもったいない。そこで、オーブンで乾燥させてだしを取ってみました。
水に昆布と乾燥させたイタヤ貝のヒモを加え、二番だしを取るような要領で20分ほど煮出しました。雑味が出ないように弱火で煮出すと、クリアで甘みのあるだしが取れたんです。磯の香りも思ったほど強くなく、これなら吸い地になると思って、お椀に仕立てました。
椀種は蕪真丈。ここにはイタヤ貝のむき身を使っています。真丈にはすり身を少し加えることが多いですが、イタヤ貝らしさを出したかったので使っていません。すり潰すと粘りが出てモチッとするので、イタヤ貝だけで十分だと思いました。
そこに、すりおろした天王寺蕪をたっぷりと加え、メレンゲも合わせて、ふわっとした淡雪みたいな食感に仕上げています。天王寺蕪は甘みがあって、持ち味が濃い。実が緻密なので、すりおろしてザルに上げてもそれほど水分が落ちないんです。ふわっと、しっとりした真丈に仕上がりました!
『西野農園』の天王寺蕪を改めて食べさせていただき、皮も葉も茎も美味しいと感じました。今回、西野さんもご参加されると聞いたので、感謝の気持ちを込めて、定番の煮物と、皮のきんぴら、葉と茎の漬物もご用意させていただきました。
天王寺蕪の名は、江戸時代から大正期まで天王寺村の名産物だったことに由来。日本最古の和種蕪とされる。
真丈のふわふわ感と柔らかさに注目が集まり、若手の北野さんはこの笑顔に。「天王寺蕪の香りのよさが真丈を通して伝わってくる」という意見が多く聞かれた。生産者の西野孝仁さん(右)は、「天王寺蕪は根が太く、形は扁平。葉茎も美味しいので、丸ごと食べていただきたい」と話した。イタヤ貝のだしも好評で「燻製にしても面白いだしが引けるかも」という意見も。
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