大阪料理会

【レシピ付き】新しい鱧料理vol.3ドライトマトが決め手の「鱧のルイベ 六月柿風味」

盛夏に向かって、酷暑の日々が続く7月半ば。「湯引きや落としはちょっと食べ飽きた」という声も聞かれるこの時季にふさわしい鱧料理をと、北新地の割烹『味菜(あじさい)』店主の坂本 晋(すすむ)さんはルイベに着目しました。一つはドライトマトを包んだもの。もう一つは一枚落とし(薄切り)に。どちらも、ドライトマトと鱧のアラからとっただしで下味を付けますが、その風味が不思議と梅を思わせます。70代の熟練の仕事に、会員は感心しきり。そのレシピを大公開します。

※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

坂本 晋さん(大阪・北新地|『味菜』店主)

1954年、岐阜県高山市出身。北新地『神田川本店』で修業し、北新地に店を構えて40余年。全国から産地直送で旬の食材を取り寄せ、新旧の技を巧みに融合させて割烹料理を仕立てる。育て上手としても知られ、実力派の若手料理人を次々と輩出。大阪料理会では運営委員として、古き仕事も惜しみなく披露している。WA・TO・BIでは連載「和食のいろは」内で季節の一品のレシピを紹介している。

『味菜』坂本 晋さん作
鱧のルイベ 六月柿風味

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北新地で独立して40年以上、いろんな鱧の料理をお出ししてきたので、やり尽くした感があって(笑)。今回は、随分と悩みました。盛夏になると、「落としはもう飽きた」なんて声も聴くので、酷暑の日に向く仕立ては?と考えて、ひらめいたのがルイベ。冷凍させた魚を解凍せずにスライスして食べさせる北海道の郷土料理をヒントにしました。

シャリッとした食感や、キンと冷たい舌触りは、今までの鱧料理にはなかったもの。シャーベットも重ねて、清涼感たっぷりに仕上げました。

ドライトマトで梅のような風味を

ルイベは、鱧だしの味を含ませてから凍らせて作ります。その鱧だしを取るのに、ドライトマトの戻し汁を使いました。

ドライトマトを水で戻し、その戻し汁と共に鱧のアラを煮出して、だしを取ります。塩や淡口醤油などで吸い地より少し濃い目に調味すると、酸味と甘みが引き出され、梅のような風味になるんですね。梅と鱧は鉄板の相性ですから、どこか安心感のある味わいに仕上がります。

六月柿はトマトの古名です。ドライトマトは干し柿のような風味がありますし、今回、ふと思い出して料理名に用いました。お客様との会話のきっかけにもなると思いますよ。

仕立てを変えた2種のルイベを一皿に

ルイベは2種作りました。一つは、骨切りして、先のドライトマトの鱧だしに3分浸けます。大きめの一口大に切り、だしがらのドライトマトをかき揚げにして包み、凍らせました。
お出しする3時間ほど前に冷蔵庫に移すと、ほどよく溶けて、ひんやり心地よい食感になりますよ。

もう一つは、骨切りせずに、ドライトマトの骨だしに10分浸けてから、冷凍庫へ。こちらは、一枚落としにして、そのまま盛り付けます。口の中の温度で溶ける感覚をお楽しみいただきます。

osa0029-3c左はドライトマトの天ぷらを包んだ鱧のルイベ。右が一枚落とし。

ドライトマトの鱧だしを、シャーベットとソースに

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鱧の下味に使ったドライトマトの鱧だしは、半量ずつに分けて、一つはシャーベットに。冷凍庫に入れ、時折かきまぜて、シャリシャリッとした食感に仕上げます。

もう一つは、ひと煮立ちさせて水溶き吉野葛でしっかりとろみを付け、ソースにしました。キンと冷やしてから皿に敷き、ルイベを盛り付けてお出しします。

osa0029-3e「お客様が鱧の落としに飽きがくるのは、ちょうど盛夏の頃。その時期に、涼感たっぷりのルイベはうってつけ」「ドライトマトを煮出して梅のような風味を楽しませるという発想が素晴らしい」と、会員たちが口を揃えて絶賛。この日は、事務局の笹井良隆さんが昭和4年刊の「浪華風流料理鑑(かがみ)」から鱧料理を紹介するプチ講座も。

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