【レシピ付き】ムール貝を和食に! 冷製の茶碗蒸し仕立てで
極レアに蒸し煮したムール貝は、しっとりジューシー。蒸し汁を使ったジュレは濃密な海の味です。近年、日本でも盛んに養殖されているムール貝を、新たな和食の食材として提案したいと、意欲作を発表したのは、「辻󠄀調理師専門学校」日本料理教員の竹本正勝さん。茶碗蒸しに枝豆を加え、冷製で夏の名残を表現。ノロウイルスを不活性化させるムール貝の低温調理に、会員の関心が集まりました。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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竹本正勝さん(辻󠄀調理師専門学校・日本料理教員)
1971年、広島県生まれ。辻󠄀調理師専門学校を卒業後、同校に勤める。N.Y.の日本料理店『Brushstroke(ブラッシュストローク)』に2年間出向。海外で現地の食材を使って和食を仕立てる経験を通し、「古い和食の仕事の大切さを痛感しました」と語る。大阪料理会には23年に入会したばかりのニューフェイス。
「辻󠄀調理師専門学校」竹本正勝さん作
ムール貝と枝豆茶碗蒸し
ムール貝は世界で一番食されている二枚貝だそうです。ところが日本では、長らく牡蛎の養殖場に繁殖する“やっかいもの”でした。
二枚貝では珍しく初夏から初秋に味がよくなるため、ちょうど牡蛎の旬と被らないんです。そこに注目し、近年は宮城県や北海道の余市などでブランド化が進んでいます。瀬戸内や三重の的矢などの牡蛎の産地でも、ムール貝がさかんに養殖されるようになっています。
とはいえ、ムール貝というと、フレンチやイタリアンのイメージ。和食の世界にはまだまだ浸透していませんが、安定して入手できる上、リーズナブルなので、もっと注目してもいいと思い、今回テーマ食材として選びました。
ムール貝の“蒸し汁”に注目
ムール貝はうま味成分がとても豊富です。ハマグリほどではないですが、アサリの1.5倍。白ワインや白ビールで蒸し煮にすることが多いですが、その蒸し汁がとても美味しいですよね。
和食の貝の蒸し物といえば酒蒸しですから、今回は煮切り酒・昆布と合わせて低温のスチームコンベクションオーブンで蒸し、その蒸し汁をジュレにして、冷製の茶碗蒸しにかけました。蒸し汁にかなり塩分があるので、昆布だしと割っています。貝類のうま味成分は「コハク酸」なので、名付けてコハクゼリーです(笑)。
低温調理で、生に近い食感に
冷製茶碗蒸しの上に盛り付けたムール貝は、できるだけ生に近い食感を狙いました。ただ、貝類だけに気を付けなければならないのが、ノロウイルスです。
ノロウイルスを死滅させるためには、中心温度85~90℃で90秒以上の加熱が必要ですが、それでは火が通りすぎてしまいます。そこで、今回はノロウイルスを不活性化させる低温調理として実証されている60℃で1時間以上の火入れをしました。
大粒を使いたかったので、1個75~85gのものを選んでいます。むき身にして火入れすると身が縮むので、殻ごと加熱しました。レアな火入れでしっとりジューシーに、独特の風味も生かせたかな、と思います。
主役を引き立てる枝豆の茶碗蒸し
主役はあくまでムール貝とその蒸し汁なので、土台にした茶碗蒸しは脇役です。季節感を添えるためトウモロコシで…と思ったのですが、美味しくなりすぎて(笑)、ムール貝の存在感が弱まってしまう気がしたので、今回は枝豆を使いました。
枝豆の量もかなり控えめにしています。1.5倍くらい入れた方が味はいいのですが、食感がざらついてしまうので…。逆にアクセントとしてトマトを添えて、バランスを取っています。
ムール貝を安全にレアに火入れする低温調理に会員の関心が集まり、「初めての食感でとても美味しい。可能性を感じた」と好評を博した。畑 耕一郎会長は「SDGs的な観点からも、いい提案だった」と総括。一方、ムール貝とトマトの相性の良さから「トマトウォーターをジュレに混ぜるなど、もっと主張させてもよかったのでは?」との声も。「古酒で酒蒸ししても面白そう」という意見も出た。
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