大阪料理会

【レシピ付き】鮎のワタの苦みを生かした「和え麺」の提案

「辻󠄀調理師専門学校」日本料理教員の岡本健二さんが、今回テーマとしたのは“苦みの表現”。落ち鮎のワタの苦みをマイルドに調整し、和え麺のソースにしました。鮎の身はしっとり、頭も骨も柔らかくするために選んだ加熱法は、コンフィ。なんと加熱してから三枚に卸し、頭や骨をペーストにしてワタと合わせ、身は皮目を炙って温かく。アカザカズラ(オカワカメ)のほのかな苦みを重ねて、品のいい一品に仕立てました。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

岡本健二さん(辻󠄀調理師専門学校・日本料理教員)

1977年、大阪府出身。辻󠄀調理師専門学校を卒業後、日本料理教員として同校に入職。TV「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」にレギュラー出演。ドラマ「高校生レストラン」など、メディアに多数協力。2019年開催のG20大阪サミット首脳夕食会の調理も担当。大阪料理会には2023年から参加し、今回は初の料理発表となった。

「辻󠄀調理師専門学校」岡本健二さん作
鮎の和え麺

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初秋になると、鮎は産卵のために川を下り始め、「落ち鮎」と呼ばれるようになります。夏の間は鮎といえば塩焼きですが、落ち鮎は魚体も大きく、骨も硬いため、甘露煮や有馬煮などにすることが多くなります。

今回は、落ち鮎を丸ごと美味しく食べていただこうと、コンフィにしました。頭も骨も捨てるところなし。大阪らしい“始末の心”で、和え麺を仕立てました。

鮎のワタの“苦み”を生かしてソースに

鮎の醍醐味はワタの苦みにあると思います。この苦みをいかに生かすか?というのが、今回のテーマです。苦みというのは、五味の中でも表現が難しいと思うんです。ダイレクトにワタの苦みを味わう塩焼きとはまた違う、調和のとれた苦みの表現を考えてみました。

まず、鮎を実山椒入りの太白ゴマ油でコンフィにして丸ごと加熱します。頭も骨も柔らかくなりますから、ワタと共にペーストにして麺と和えました。コンフィにする際に使った油で乳化させ、鮎魚醤で味を調えています。苦みがマイルドになって、突出することなく、全体に馴染んでいると思います。

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実は、この仕立てはサンマの料理として考えたものです。今年は豊漁と聞きますから、ぜひサンマでもやってみたいと思います!

コンフィにしてから三枚に卸す

コンフィは骨まで柔らかく火入れするのに向いていますが、肝心の身の美味しさが失われては元も子もありませんから、加熱の温度帯と時間には気を配りました。80℃から100℃まででいろいろ試した結果、スチームコンベクションオーブンのオーブンモードを80℃に設定して2時間という火入れに辿り着きました。

今回は、コンフィにした鮎を三枚に卸して使います。かなり身が柔らかくなっているので、冷蔵庫で3時間ほど冷やして身を締めておくのがポイントです。冷たくなった身は、バーナーで炙って、ほんのり温かく提供します。

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アカザカズラの苦みを重ね、かけだしジュレで

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鮎を丸ごと使った麺に青みとして添えたのは、アカザカズラ。別名はオカワカメです。ツルムラサキの仲間で、ほんのり粘りがあって、独特の青さが鮎の風味とよく合う上、ほろ苦さもあるので今回の苦みというテーマにもマッチします。

仕上げに、かけだしをジュレにして、とろんとかけています。ここにはショウガを利かせているので、風味のアクセントにもなっていると思います。

osa0031-3fコンフィの温度帯や加熱時間、火入れした鮎を三枚に卸すという仕事に、会員は興味津々。ワタの苦みの加減は「品がいい」「料理全体に一体感がある」と称する声がある一方、身と骨や内臓を分けて別々に火入れした方が鮎の個性が際立つのでは?というコメントも。秋ナスなど野菜と合わせるのも良さそうという提案も出て、活発な意見交換が行われた。

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