【レシピ付き】キノコ料理vol.2切り方に注目! だしまでキノコづくしの意欲作
「キノコ」がテーマの10月の大阪料理会。西天満『キュイジーヌ・ド・オオサカ・リョウ』畑島 亮さんは、「安価で入手しやすい菌床栽培のキノコを使って、新しい料理を!」と、チャレンジングな一品を提案しました。エノキ茸はマナガツオと合わせて干し貝柱に見立て、エリンギはなんと麺に。軽く干して旨みを濃縮させた椎茸、素揚げした花びら茸を盛り合わせ、その4種のキノコの切れ端を活用した濃厚なだしで仕上げた意欲作。「切り方」と「だし」にご注目を!
※大阪料理会 公式サイト https://osakaryourikai.com/
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畑島 亮さん(大阪・西天満|『キュイジーヌ・ド・オオサカ・リョウ』)
1976年、大阪府生まれ。ミナミの料亭や北新地の割烹にて腕を磨き、フレンチ・イタリアンの料理人との交流から、ソムリエ資格も取得。2010年に独立し、和食と串カツを看板に、ワインを楽しめる店をオープン。大阪の食材に軸足を置きつつ、和洋を行き来する柔軟な発想が持ち味で、そのアイデアは大阪料理会でも注目の的だ。
『キュイジーヌ・ド・オオサカ リョウ』畑島 亮さん作 茸づくし土瓶蒸し風
地球温暖化の影響なのか、近年は天然のキノコが採れないという声を少なからず聞きます。そこで今回は、あえて入手しやすい菌床栽培のキノコを使って、新しい料理に挑戦しました。
ポイントは2つあります。まず、切り方を工夫して新しい食感や風味を生み出すこと。もう一つは、キノコで美味しいだしを引くことです。どちらも楽しんでいただける料理を、と考えたのが、今回の羹(あつもの)。まずはキノコだしを味わってほしかったので、土瓶蒸しの器を使いました。途中でスダチを搾って、味変も楽しんでいただきます。
エノキ茸の束を貝柱に見立てる!?
ある時、まかないで食べた炒め物にエノキ茸が束のまま入ってまして(笑)。シャクっとした食感で、エノキ茸の違った表情が楽しめたので、束で使うと面白いな、と思ったんです。
ベーコンや豚肉でエノキ茸を巻くことはあっても、魚を使うことは少ないので、太刀魚やイカなどいろいろ試してみたところ、太刀魚が一番相性が良かったんです。しかも、一緒に味わうと、なぜか帆立の貝柱のような風味と食感で。自分でも驚きました。
1束のエノキを半分に分けて太刀魚の細切りで巻き、一口大に切ったら薄く衣を付けて焼いています。焼いている間にも帆立のような香りがして、この食べ合わせはちょっと発見でした!
独特の弾力に驚くエリンギ麺
他のキノコに比べてエリンギは軸が太いのが特長ですが、この部分の切り方を変えてみようと思って。桂剥きにしてから輪切りにすると、麺状になります。それをさっと湯がいて食べてみたら、すごい弾力だったんですよ!
僕の庖丁の技術の問題もありますが(笑)、この切り方だと太い部分と細い部分ができてしまいます。ですが、それが逆に面白い食感になっていると思います。
今回は温かい麺にしましたが、もう少し暑い時期なら、キンと冷やしただしと合わせて小鉢に入れ、八寸や前菜の一品にしてもいいですね。
キノコの濃厚なだしを主役に
エリンギ麺を食べていただくのに、カツオ昆布だしより、キノコでだしを取った方が断然合うと思ったので、いろいろ試作してみました。
エノキ茸やエリンギの傘の部分、アワビに見立てて波切りにした椎茸や、あしらいの花びら茸の切れ端などを活用しています。天日干しにしたかったのですが、うちの店は車通りが多い道に面しているので、衛生面を考慮して店内で風干しに。網を敷いたバットの上に広げ、ダクトの下に置いて風を当て、カリカリになるまで乾燥させています。
これを約5倍の水で戻して、昆布と共に20分ほど煮出しました。塩だけでアタリを付けて味見したら、めっちゃ濃厚で美味しくて。そのままお出ししたいくらいでしたが、エリンギ麺のだしとしては少し弱かったので、淡口醤油とみりんで加減しています。
「本当に帆立貝を食べているみたいだった!」と驚きのコメントが多かったのは、マナガツオで巻いたエノキ茸。エリンギ麺も「想像以上の弾力で、麺にする発想が斬新」と大好評。畑 耕一郎会長は、「茸だしの美味しさに感心した。切り方一つで、まだまだ新しい料理が生まれる可能性を示唆するいい料理だった」と、この笑顔に。
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