大阪料理会

【レシピ付き】発酵食vol.1自家製ひよこ豆味噌を使った白味噌椀

大阪料理会では毎月、3人の会員が料理を発表しますが、今回のテーマは発酵食。東心斎橋『旬鮮和楽 さな井』の長内敬之さんは、ヒヨコ豆を使った自家製味噌で、正月の雑煮をイメージした一椀を披露しました。椀種は蓮根饅頭。中に潜ませた餅銀杏を作る際にできる重湯と、乾燥タモギ茸の戻し汁、玉ネギ麹でコクと甘みを加えた吸い地は、2時間煮込んで深みを出しています。動物性の食材を使わない精進仕立てながら、豊かな滋味を堪能させる熟練の仕事に会員は感心しきりでした。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

長内敬之さん(大阪・東心斎橋|『旬鮮和楽 さな井』店主)

1964年、福井県生まれ。京都や大阪の名店などで料理長を務めた師匠の下、新地の割烹『七生(ななお)』(閉店)にて修業。2005年、独立。チャレンジングな発想で魅せる割烹仕事に、確かな技術が息づいている。ユーモラスなトークも持ち味。「大阪料理会」運営委員。

『旬鮮和楽 さな井』長内敬之さん作
蓮根饅頭 自家製ひよこ豆味噌の白味噌椀

1月にお出しする雑煮を、自家製の味噌で仕立ててみました。歳を重ねたせいか、ここ数年は市販の白味噌の塩分がちょっときつく感じるようになりまして。年末は白味噌の値が上がるので、コストを抑える意味でも、一度自分で作ってみようと思ったんです。

ヒヨコ豆を使うと、大豆よりもあっさりとした白味噌ができます。旨みが少し物足りないかなと思ったので、乾燥タモギ茸の戻し汁や重湯、玉ネギ麹を加えてコクや甘みを補強しました。2時間ほどかきまぜながらじっくりと煮込んで、吸い地にしています。

ヒヨコ豆で仕込んだ自家製白味噌

自家製ひよこ豆味噌左が前日に仕込んだ自家製ヒヨコ豆味噌。右は1週間前に仕込んだもの。色が少し濃くなっている。

白味噌は大豆・米麹・塩で仕込みますが、発酵期間が短いので比較的自家製しやすいと思います。大豆を使ったスタンダードなものだと専門店には負けますから(笑)、ヒヨコ豆で作ってみました。独特の香りがあって、白味噌よりも軽やかな味わいに仕上がります。

ポイントは、ヒヨコ豆を乾燥タモギ茸の戻し汁に浸けて戻したこと。以前、大阪料理会で畑(耕一郎)会長が「タモギ茸はいいだしが出る」と仰っていたので、試してみたら大正解でした。タモギ茸はうちでカリカリになるまで乾燥させています。

スチコンを使って戻したヒヨコ豆を90℃で4時間蒸したら、皮を剥いて粗く潰し、米麹と塩を加えて60℃で9時間発酵させています。ヨーグルトメーカーを使うと簡単にできますよ。

通常の白味噌は豆と米麹を同割にするそうですが、うちのレシピは米麹多め。塩分はぐっと控えめです。近年は味噌漬け用のあら味噌の値も上がってますから、おせち用のマナガツオを味噌漬けするのに、この自家製ヒヨコ豆味噌を使ってみようと思っています。

餅銀杏を作った後の重湯を活用

左が餅銀杏を仕込んだ後のお粥をペーストにした重湯。乾燥タモギ茸の戻し汁と合わせて吸い地のベースに。

椀種を蓮根饅頭にしたのですが、その芯に餅銀杏を一粒入れています。うちでは、むき銀杏に米と水を合わせて土鍋で炊いて作りますが、お粥のようなものが残るでしょう。もったいないから、まかないで食べていたのですが、これを白味噌の吸い地に使ってみようかと。

というのも、師匠が雑煮を作る時に「旨みが深くなるから」と炊きたてのご飯をすり鉢で潰し、白味噌と混ぜていたんですね。餅銀杏の副産物を使えば、ほんのり銀杏の香りが付いて一石二鳥。いいアクセントになっていると思います。

乾燥タモギ茸の戻し汁と合わせて煮始めて、その量の1/5くらいの自家製ヒヨコ豆味噌を溶き入れ、吸い地にしています。

味の調整役は、塩を使わない玉ネギ麹

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うちでは、玉ネギの切れ端などを使って玉ネギ麹を作り置き、なにかと重宝しています。少し甘みが足りないな、もう少し濃厚さが欲しいな、という時に甘酒の感覚で使うことが多いですね。今回は、白味噌の吸い地に甘みを足すために加えています。これからの時季なら、数の子を漬けると美味しいですよ。

多くの場合は、生の玉ネギに塩麹を合わせて作りますが、僕はこれが苦手でして…。生の玉ネギは風味がきついですし、塩分が加わると、甘酒のようには使えないでしょう。そこで、玉ネギを蒸してから潰し、米麹と水を合わせて60℃で8時間発酵させています。この方が、風味が穏やかで、日持ちもするんですよ。

ヒヨコ豆を使った自家製味噌に、会員は興味津々。「白味噌に重湯を合わせる発想が勉強になった」「餅銀杏の後のお粥を使ったことで、銀杏の風味が感じられて白味噌の吸い地がとても美味しかった」という声も。乾燥タモギ茸の戻し汁や玉ネギ麹の使い方にも質問が集まった。

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