【レシピ付き】発酵食vol.2自家製酒盗とカツオの共和え
発酵食というテーマを受け、堺の『山海料理 仁志乃(にしの)』店主・西野保孝さんは、自家製の酒盗を主役に一品を考案。「酒盗は塩抜きして使うことが多いですが、そのまま食べて美味しいくらいの塩分で仕込んでいます」。苦みもなく、まろやかな味わいの酒盗をカツオと叩き合わせて共和えにし、アクセントには玉ネギや高知の柑橘・文旦を。パンチのある酒肴ながら、セルクルを使って美しく仕立てました。
※大阪料理会 公式サイト https://osakaryourikai.com/
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西野保孝さん(大阪・堺|『山海料理 仁志乃』店主)
1961年、大阪・堺生まれ。調理師専門学校を卒業後、土佐料理店での修業を経て地元に戻る。1991年、行基(ぎょうき)生誕の地として知られる家原寺門前にて、『山海料理 仁志乃』を創業。地の利を生かして泉州の海鮮を主に、会席料理から鍋、居酒屋風の一品まで幅広く提供。大阪料理会のムードメーカーながら、研究熱心な一面も覗かせる。
『山海料理 仁志乃』西野保孝さん作 酒盗と鰹の共和え
僕は土佐料理店で修業していたので、その頃からカツオの酒盗をよく使っていました。酒盗は保存食なので、カツオの内臓にしっかりと塩をして発酵させるのが一般的。ものすごく塩辛いので、修業店では塩抜きして使っていましたが、最初からほどよい塩分で漬けた方が美味しいのでは?と思って、自家製するようになったんです。
うちは堺市にあって、漁港にも近いので、親しい魚屋さんにカツオの内臓を譲ってほしいとお願いしていて。捨てる部分なので、喜んで持ってきてくれます。それを使って毎年、酒盗を仕込んでいます。今回の共和えには4月に仕込んだものを使いましたが、2年物も味見してもらおうと持参しました。
左が2年物。右は4月に仕込み、半年ほど経った酒盗。「2年物は味が深く、よりまろやかになっています」と西野さん。
自家製の酒盗は“塩分控えめ”がポイント
酒盗には、カツオの肝臓と胃腸、消化器官の幽門垂(ゆうもんすい)を使います。流水で血抜きしながら、水が濁らなくなるまで洗ったら、胃や腸管などを開いて内容物をこそげ出し、肝臓の血の塊などもしっかりと除きます。
殺菌の意味も込めて、まずは酒に漬けて6時間。それから水気をよく切って、塩漬けにします。塩は、内臓の約10%量。通常は20%くらいなので、かなり塩分控えめです。それだけに腐敗しないよう、初めのうちは毎日かき混ぜ、1週間くらいたったら週1にして、3カ月ほど過ぎたら安定してくると思うので、その後は思い立った時に混ぜています。
カツオの身の存在感を感じる共和えに
今回の共和えは、この酒盗だけで味を付けています。カツオと酒盗の割合は2:1くらいにしました。呑ませる塩梅ですね。
なめろうのような一品ですが、カツオは大きめのサイの目切りにしています。叩いて細かくしてしまうと、カツオならではの食感が楽しめないでしょう。逆に酒盗の方はカツオにしっかりと絡むように叩いてから合わせています。
今回は共和えにしましたが、イカと和えても美味しいと思います。うちでは、卵黄を酒盗漬けにすることも。アテにもご飯のお供にもなりますよ。
アクセントに玉ネギと文旦を利かせて
カツオと酒盗の組合せはかなりパンチがあるので、玉ネギで香味と食感を、文旦で爽やかな酸味を添えています。文旦は高知の特産ともいえる柑橘で、粒感がしっかりしているので、いいアクセントになっていると思います。
少しコクが欲しかったので、太白ゴマ油も加えました。ざっくりと混ぜ合わせたらセルクルに詰めて、冷蔵庫で30分ほど置いて固めてからお出しします。その方がカツオの身に酒盗の味が少し入って、全体的に一体感も出ると思います。
「塩分がきつすぎず、まろやかで、苦みも少ない。美味しい酒盗だった」と会員が口を揃えた。「大阪料理は、こうした捨てる部分も上手く活用して、美味しく仕立てる精神が大事。手をかけることの大切さを改めて学ばせてもらいました」と運営委員が語る一幕も。畑 耕一郎会長は「酒盗和えは、馬刺しや牛肉でやっても旨い。筍を酒盗ダレでかけ焼きにしてもいい」と提案した。
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