大阪料理会

【レシピ付き】発酵食vol.3醤油もろみを使ったチーズをきずしのソースに

釣り人の顔も持つ西天満の『割烹くぼた』店主の久保田 博さんは、毎回、自身が釣り上げた旬魚の一品を披露しますが、今回は鮮度を生かしたサゴシのきずし。そこに、テーマとなる発酵食のチーズを合わせました。醤油もろみを使ったハードタイプの「モロマッジョ」を加熱して、酸味を引き出したソースときずしの相性に、会員は驚嘆。大好評を博したレシピをご紹介します。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

久保田 博さん(大阪・西天満|『割烹くぼた』店主)

1977年、熊本県球磨(くま)郡生まれ。北新地『味菜(あじさい)』で3年の修業を経て、オランダの『ホテル オークラ アムステルダム』、東京や西宮の和食店で腕をふるう。再び『味菜』に戻り、2010年、『割烹くぼた』を開店。九州の食材を大阪料理会で紹介するなど故郷愛あふれる人情家。大阪料理会きっての釣りキチとしても知られる。

『割烹くぼた』久保田 博さん作 大阪湾サゴシのモロマッジョソース掛け

少し前に、和歌山のチーズ専門店『Copain de Fromage(コパン・ドュ・フロマージュ)』とコラボさせていただく機会がありまして。ご主人の宮本喜臣さんは、日本で唯一の「チーズ洗練士」だそうで、チーズを作るのではなく、スパイスやハーブなど様々な食材を使って風味付けをする職人です。

日本酒とチーズの相性を追及されていて、和歌山の湯浅の醤油もろみを生かした「モロマッジョ」というハードタイプのチーズをイタリアの工房と開発しています。味噌のような熟成香とミルキーなニュアンスが同居しているこのチーズを使って、日本酒に合う一品を考案しました。

モロマッジョは加熱すると酸味が際立つので、ソースにして大胆にきずしと合わせてみました。今年はサゴシが豊漁なので、大阪湾で先日釣った700~800gサイズのものをフレッシュ感が残るように酢〆しています。

MOrmaggio (モロマッジョ)和歌山『Copain de Fromage』の「MOrmaggio (モロマッジョ)」。イタリアの老舗チーズ工房「グッファンティ社」と共同開発したオリジナルチーズ。

モロマッジョの酸味を引き出してソースに

和食店でクセのあるチーズを使うのは難しいと思うのですが、モロマッジョなら面白いソースができるのでは?と、加熱してみたら大正解で。宮本さんはそのまま食べてほしいと思っているでしょうが…(笑)、火を入れると鮒(ふな)ずしの飯(いい)を思わせる独特の風味になるんです。

モロマッジョを溶かして、カツオ昆布だしやみりん、砂糖と合わせてソースにしているのですが、分離しないように刻んでから軽く片栗粉をまぶしておきます。チーズフォンデュと同じやり方ですね。

醤油もろみを使ったチーズなので、醤油はいらないかな?と思ったのですが、僕の故郷の熊本の濃口醤油は甘みがあって香りもいいので、少しだけ風味付けに加えました。

サゴシの鮮度を生かす釣り人のきずし

きずしは、大阪湾で僕が釣ったサゴシで作りました。晩秋から初冬は餌を食べ始めたばかりなので、まだ脂が少ないのですが、明石などを回遊してきたこのサゴシはしっかり脂がのっていました。今年はサワラは少ないようですが、サゴシは入れ食い状態です。

すぐに神経締めをして、しっかり冷やして鮮度を保っているので、砂糖や塩をまぶしておいてもなかなか浸透していかないんですよ。砂糖で1時間、塩で3時間ほど〆ましたが、身はいかったまま。こんなブリブリ感のあるサゴシを扱えるのは、釣り人の特権ですね。

サゴシは皮目が旨いので、皮付きのまま酢〆にして、2日ほど寝かせています。僕流のきずしは4~5日寝かせるのですが、今回はこの鮮度を生かそうと思って。フレッシュ感が残る、なかなかいい塩梅に仕上がったと思います。

塩〆の前に砂糖を使うと、まろやかに

僕はきずしを仕込む時に、塩だけでなく砂糖もよく使います。ホテルに勤めていた時代に、フレンチの方に教わったマリネの仕事の応用ですね。

砂糖は脱水効果もありますが、僕はまろやかさも出したい場合に使います。塩と砂糖を併用した方が魚の生臭みも取れるんですよ。

モロマッジョを試食した会員は、「古代のチーズ(奈良・飛鳥の蘇)を思わせる和食向きの風味」「田楽味噌に少し加えたり、マグロやカツオとも相性が良さそう」と興味津々。加熱してより発酵香と酸味が際立ったソースも大好評で、「フレッシュ感のあるサゴシのきずしとベストマッチ!」と絶賛するコメントが目立った。

この記事は会員限定記事です。

月額990円(税込)で限定記事が読み放題。
今なら初回30日間無料。

残り:837文字/全文:2514文字
会員登録して全文を読む ログインして全文を読む

フォローして最新情報をチェック!

Instagram Twitter Facebook YouTube

この連載の他の記事大阪料理会

無料記事

Free Article

おすすめテーマ

PrevNext

#人気のタグ

Page Top
会員限定記事が読み放題!

月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です