大阪料理会

【レシピ付き】小籠包風のアジつくね揚げを、碓井豌豆の風味で

5月末に開催された「大阪料理会」のテーマは、初夏から味がのってくるアジ。「ごちそうプロデューサー」として活躍する料理研究家・広里貴子さんは、アジフライと小籠包をミックスさせた新発想の一品を披露しました。つくねにしたアジに道明寺(どうみょうじ)粉の衣を付けて揚げ、真ん中を箸で割ると…。溢れ出すのは、アジの骨だし+トマトウォーター。目にも鮮やかな碓井豌豆(ウスイエンドウ)のペーストと絡めていただく、初夏の変わり揚げ物です。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

文:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

広里貴子さん(大阪・大正|『貴重』)

大阪市出身。ごちそうプロデューサー。辻󠄀調グループ校卒業後、同校の日本料理技術講師を9年間務め、2006年に有限会社「貴重」(kicho)設立。NHK連続テレビ小説の料理指導や、商品開発、料理講習など広く活躍している。海里の環境保全に努める「RelationFish」取締役兼務。

「貴重」広里貴子さん作 鯵の捏ね揚げ 羽曳野(はびきの)碓井豌豆

以前、お肉のつくねのフライを小籠包風に仕立てたことがあったので、アジでやってみたら面白いかな、と思って挑戦しました。

アジのアラで取っただしとトマトウォーターを合わせてゼラチンで固め、アジのつくね生地で包んで衣を付けます。揚げるとゼラチンが溶け、箸で割ればメンチカツやハンバーグの肉汁のように中からドバ~ッと流れ出てくるという仕掛けです。

少し濃度を付けた碓井豌豆のペーストにこの液体を絡め、ソースのようにして召し上がっていただけたらと思います。

ウスターソースをイメージした塩梅

アジのつくねから流れ出る液体は、つくねの材料の端材を活用して作りました。
まず、アジをさばいた後に残ったアラ、貝塚早生(わせ)玉ねぎのヘタや皮を昆布やショウガの皮と煮出して、だしを取ります。

そこにトマトウォーターを合わせると、ウスターソースのような風味になるんですよ。といっても煮込んではいないので、ちょっとライトな味わいです。アジフライはやっぱりウスターソースがよく合うので、遊び心で作ってみました。

揚げ時間、1分10秒のワケ

泉州の岡田浦で揚がる平アジに、貝塚早生玉ねぎ、実山椒を合わせて、つくね生地にしています。アジのわずかなクセは、山椒が抑えてくれます。

アジは半量をすり身に、残りは5㎜角に切って合わせています。鮮度のいいアジを使っているので、揚げた時に角切りの方はほんの少しだけレア感が残るようにと考えました。

中のゼラチン生地が溶ける火入れは、つくね1個50gに対して170℃の油で1分から1分10秒。このくらい短時間で揚げると、アジに火が通りすぎないので一石二鳥でした!

衣は、カリッと揚げたかったので打ち粉に米粉を使い、溶き卵、道明寺粉の順で付けています。ただ、1分くらいでは道明寺粉に火が通らず、揚げ色が付かないので、あらかじめ煎って膨らませています。

碓井豌豆で彩りと旬味を添えて

碓井豌豆のペーストには少し濃度を付け、中から溶け出た液体と絡まりやすいように。このペーストにも、アジのアラから取っただしを活用しました。

大阪の羽曳野市は碓井豌豆発祥の地。大阪が誇る伝統野菜ですから、晩春から初夏にかけての大阪の和食には欠かせません。初夏の揚げ物らしく、鮮やかな緑を効かせて盛りました。

もうすぐ旬が終わってしまうので、今回は羽曳野の農家の方にお願いして花も送っていただきました。見た目も可愛らしいですし、食べると意外としっかりエンドウの風味がするんですよ。

アジの揚げ物の中から肉汁のように液体があふれ出るという仕掛けや、ウスターソースをイメージしたという発想が興味をそそった。一方で、「碓井豌豆の味が強すぎて、アジのだし+トマトウォーターの存在感が少し弱かった」という指摘もあった。

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