和食を科学する料・理・理・科

椀物のための肉だしvol.2うま味と香りのバランス

東京・南青山の日本料理店『てのしま』の林 亮平さんは、椀物に向く肉だしを「短時間の抽出で、一番だしのようなピュアな旨みを引き出したい」と考えています。前回のカツオ昆布だしとの比較実験で分かった課題は、「脂分」「濁り」「酸味」「牛肉らしい香り」の4つ。今回は、農学博士の川崎寛也先生と解決のための実験を重ねます。牛肉を焼いてからだしを取ると、香ばしさは付きますが、アミノ酸が減ります。そのバランスを取るために二人が考えた牛肉の焼き方とは?

文:中本由美子 / 撮影:綿貫淳弥

目次

林 亮平さん(東京・南青山『てのしま』店主)

1976年、香川県丸亀市で生まれ、岡山県玉野市で育つ。立命館大学を卒業後、京都の名料亭『菊乃井』に入り、村田吉弘氏に師事。17年の間に『菊乃井本店』副料理長、『菊乃井 赤坂店』渉外料理長を務め、20カ国以上でのイベントも経験。2018年に『てのしま』開業。自らのルーツである瀬戸内海の離島・手島(てしま)の再興を目指し、日本料理と向き合う。ポジティブかつロジカルで、積極性が高く、行動的な料理人だ。

川崎寛也さん(農学博士)

1975年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科にて伏木 亨教授に師事し、「おいしさの科学」を研究。「味の素㈱」食品研究所エグゼクティブスペシャリストであり、「日本料理アカデミー」理事。「関西食文化研究会」での基調講演でも活躍している。専門は、調理科学、食品科学など。近著に「おいしさをデザインする」「味・香り『こつ』の科学」(柴田書店)、「日本料理大全シリーズ」(日本料理アカデミー)。

【実験1】漉し方を変えると、酸味に変化が

林 亮平(以下:林)
前回、カツオ昆布だしと同様に短時間抽出で牛赤身だしを引いて、気になる点を4つピックアップしました。今回は、それを解決するための実験ですね。
川崎寛也(以下:川崎)
もう一度、牛赤身ミンチを煮出してみましょう。改善する点は2つ。漉す時にレードルで肉を押さないこと。これで酸味がある程度抑えられると思います。脂分は漉した後のだしを冷却して固め、取り除きましょう。

牛赤身ミンチ150gに昆布だし500mlを合わせ、ひと煮立ちさせてから弱火で5分抽出。キッチンペーパーを2枚重ねて、レードルで押さずに漉した。

ブラストチラー(急速冷却機)で冷却して脂を取り除いた状態。

林:
脂はきれいに取れましね。酸味はどうかな…。(味見して)あれ? かなり弱くなってますよ!
川崎:
前回もお話ししましたが、酸味はヒスチジンというアミノ酸によるものなんですね。レードルで押さなかったことで、ヒスチジンの量が少なくなって酸味が抑えられたのだと思います。
林:
でも、気になるのはこの濁りです。
川崎:
濁りの原因は、水に溶けていない成分があること。今回の場合は赤身肉なので、たんぱく質でしょう。肉のたんぱく質をしっかり変性させると、濁りは取れるはずです。焼いてから煮出せば、林さんが求める和牛らしい香りも付いて、きれいなだしが取れるかもしれませんよ。
林:
香りもぐっと良くなりそうですね!ぜひ、やってみましょう。

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