和食を科学する料・理・理・科

魚をしっとり焼き上げるには?

例えば、鯛の塩焼き。注文を受けてから塩を振って焼き上げると、ん?ちょっとパサついている? 対して、幽庵焼きや西京焼き。身の水分が少ない魚であっても、しっとり焼き上がっている。その違いは、魚の保水力を高めるか、否か。京都の老舗料亭『一子相伝なかむら』六代目の中村元計さんは、古来からある日本料理の焼き魚とはまったく違う火入れを試みています。保水力を高めるのではなく、そもそも脱水させない「香油焼き」。今回は、塩焼き、幽庵焼きのメカニズムを紐解きつつ、農学博士・川崎寛也先生が中村さんの新しい火入れについて解説します。

文:中本由美子 / 撮影:香西ジュン
中村元計(もとかず)さん(京都『一子相伝なかむら』六代目)

1962年、文化文政の頃に創業した老舗料亭の長男として、京都に生まれる。大学卒業後、臨済宗総本山 天龍寺僧堂にて修行。24歳で生家に入り、一子相伝の味を父から伝授される。その後、京都大学修士課程にて栄養科学を学んだり、海外の名シェフとの交流を通して、調理のサイエンスを追求。2021年春に龍谷大学大学院農学研究所で博士号を取得。日本料理アカデミー海外事業委員長、日本料理ラボラトリー実行委員長としても活躍している。

川崎寛也さん(農学博士)

1975年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科にて伏木亨教授に師事し、「おいしさの科学」を研究。「味の素㈱」食品研究所上席研究員であり、「日本料理アカデミー」理事。「関西食文化研究会」での基調講演でも活躍している。専門は、調理科学、食品科学など。

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