和食を科学する料・理・理・科

淡水魚の匂いを“変換”する

2022.08.19
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連載:和食を科学する料・理・理・科

鯉やフナ、ビワマスなど、琵琶湖や周辺水系の恵みたる淡水魚を生かした料理で高い評価を受ける『ひさご寿し』。その店主・川西豪志(たけし)さんには、こんな悩みがあると言います。「淡水魚ならではの香りは、食べ慣れた人なら“芳香”と感じてもらえるのですが、苦手な人には“クセ”と受けとられてしまうことがあって…」。そこで川崎寛也先生が、スパイスやハーブで、淡水魚の匂いを好ましい香りに“変換”してみませんか?と提案。かくして、スパイス&ハーブを20種以上も取り揃えて選抜実験がスタート。果たして、“当たり”は見つかるのでしょうか?

文:河宮拓郎 / 撮影:高見尊裕
川西豪志さん(滋賀・近江八幡『ひさご寿し』店主)

近江八幡出身。10代から『ひさご寿し』で修業の後、有馬の温泉旅館で日本料理全般を5年間学び、再び『ひさご寿し』へ。縁あって先代の娘さんと結婚し、店を継ぐ。当時は「鯉の飴焼きとか、子どもの頃から食べ慣れた川魚料理しかできなかった」そうだが、滋賀ならではの食材や郷土料理について意欲的に勉強。今や、滋賀県日本調理技能士会理事・龍谷大学非常勤講師など多彩な肩書きを持つ。https://www.hisagozushi.com/

川崎寛也さん(農学博士)

1975年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科にて伏木亨教授に師事し、「おいしさの科学」を研究。「味の素㈱」食品研究所上席研究員であり、「日本料理アカデミー」理事。「関西食文化研究会」での基調講演でも活躍している。専門は、調理科学、食品科学など。

淡水魚の香りの正体は?

川西豪志(以下:川西)
うちは、僕の代になってから、滋賀の食材に特化した料理屋へとシフトしました。魚介も琵琶湖や流入河川で獲れる淡水魚をメインにしています。
漁師さんと情報交換をし、琵琶湖のどの辺りで獲った魚なのかを把握して、年を追うごとに扱う魚種も増えてきました。
川崎寛也(以下:川崎)
琵琶湖の多彩な魚介を使えば、ここでしか味わえない滋賀の和食が作れる。独自性が生まれますね。
川西:
ですが、淡水魚は海の魚ほど万人受けしない。独特の匂いがある、と言われてしまうんです。泥を吐かせたり、調理法を様々に工夫したりはしているんですが、決定打がまだ見つけられなくて…。
川﨑:
淡水魚独特の匂いの主成分は、「ピペリジン」。アンモニアにも似た特有の悪臭を持つ有機化合物です。また、海水魚にはない匂い成分の「ゲオスミン」や「2-メチルイソボルネオール(2-MIB)」もあって、「土臭」「カビ臭」の元凶として知られています。
これらの匂いは、主に体表のぬめりや皮、内臓に由来することが多く、身はそれほど匂わないと思います。とすると、加熱するのが最も有効なのですが、もう一つ、スパイスやハーブの香りと合わせて匂いを“変換”する。つまり、別の好ましい香りに変化させる、という方法もありますよ。
川西:
スパイスやハーブは香りや個性が強いので、日本料理に合うのかな…と躊躇(ちゅうちょ)していたのですが。それに、種類がありすぎて、どうやって選べばいいものかと。
川﨑:
確かに、一つずつ料理に用いて試してみると、ものすごく時間や手間がかかってしまいますよね。こういう時は、実験条件を決めて、網羅的に探す「スクリーニング」という手法で、片っ端から試していくのがいいんですよ。今回は、「香りのスクリーニング」ですね。
川西:
スクリーニング…。理系っぽい用語が出てきましたね。どんな実験になるんだろう。
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