和食を科学する料・理・理・科

水ナスのアクを感じさせない調理とは?

春から夏の終わりまで、比較的長く出回る水ナスは、水分が多く、アクが少ないと言われ、漬物やサラダなど生で食べることが多い品種。ですが、郷土料理をアレンジした水ナスの煮物を供する奈良『味の風 にしむら』の西村宣久(のりひさ)さんは「水ナスは炊くとアクが強くなる」と言います。そのため3時間かけて念入りにアク抜きしているそうですが、「もっと効率的な方法はないか」「そもそも効果があるのか」など、そのアク抜き法に今ひとつ自信が持てないのが悩みでした。そこで今回は、水ナスのアクがテーマ。まずはアクを舌で確認するところから、実験スタートです。

文:川島美保 / 撮影:香西ジュン
西村宣久さん(奈良・桜井『味の風 にしむら』店主)

1974年奈良生まれ。16歳から日本料理人の道を歩み始め、奈良の日本料理店『味の旅人 浪漫』で10年修業した後、2005年に独立。椀物はその都度カツオ節を削り、焼き魚は塩の使い方や焼き方を細かく調整するなど、素材の持ち味を最大限に生かすための丁寧な仕事を怠らない。基本を大切に、一つ一つの技を磨き上げることに重きを置く謹直なお人柄。

川崎寛也さん(農学博士)

1975年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科にて伏木 亨教授に師事し、「おいしさの科学」を研究。「味の素㈱」食品研究所上席研究員であり、「日本料理アカデミー」理事。「関西食文化研究会」での基調講演でも活躍している。専門は、調理科学、食品科学など。近著に「おいしさをデザインする」(柴田書店)。

水ナスにアクはあるのか?

西村宣久(以下:西村)
5月のコースで、水ナスと干しエビの煮物をお出ししています。うちでは米油で干しエビとタカノツメを炒め、その油を水ナスに絡めてから30分ほど煮ています。
川崎寛也(以下:川崎)
水ナスというと漬物など生食のイメージが強いですが、煮ることもあるのですね。
西村:
水ナスの産地・大阪南部の郷土料理をベースにしているんですよ。もとは、トビアラなどの小エビと、塩抜きした水ナスの古漬けを炊いたもの。それを自分なりにアレンジしています。
どうしても水ナスのアクが気になるので、皮目に筋を入れて塩水に3時間ほど浸してから煮ています。
川崎:
え? かなり長時間ですね。

ryo0026b

西村:
以前は10分ほどだったのですが、ある時、3時間ほど放置してしまったんです。その水ナスを煮たら、中がうっすら黄色く色づいて、ものすごく美味しく仕上がりまして。
長時間、塩水に浸すとアクが抜けるのかな?と思ったのですが、科学的に意味があるのか知りたくて…。
川崎:
水にさらすことで、切り口が空気に触れて変色するのを防ぐ効果はあると思いますが、時間はそれほど関係ないような…。
まずは、水ナスにどのぐらいアクがあるのかを確認する必要がありますね。
この記事は会員限定記事です。

月額990円(税込)で限定記事が読み放題。
今なら初回30日間無料。

残り:3973文字/全文:4779文字
会員登録して全文を読む ログインして全文を読む

フォローして最新情報をチェック!

Instagram Twitter Facebook YouTube

この連載の他の記事和食を科学する料・理・理・科

無料記事

Free Article

おすすめテーマ

PrevNext

#人気のタグ

Page Top
会員限定記事が読み放題!

月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です