今月の和菓子

2月の和菓子——福枡(ふくます)

多くの京都の人が「節分が終わると、ホッとする」と口にします。それは、厳しい底冷えから春に向かう時季であり、旧暦では立春が新年の始まり、前日の節分を大晦日と捉えるから。西陣の菓子司『千本玉壽軒(せんぼんたまじゅけん)』三代目・元島真弥さんもまた、「節目のお菓子です」と話します。今回は、京都人の節分の捉え方、そして、元島さんが一菓に込めた想いに迫ります。

文:小林明子 / 撮影:岡森大輔

「節分は年に4回ありますが、立春前の2月は特別。厄除招福(やくよけしょうふく)を祈願します」。

季節の始まりの日とされる立春・立夏・立秋・立冬の前日を節分と呼ぶ。季節の変わり目には邪気(鬼)が生じやすいとされ、お祓いの行事が各地で行われるようになった。なかでも、2月4日の立春は旧暦の正月に当たるため、その前日の2月3日は大晦日。江戸時代以降、特に重視されるようになったので、節分といえば立春の前日だけと思っている人も今は少なくない。

2月初旬の京都は恐ろしく寒い。雪が降り積もる年もある。極寒の都大路を、節分が過ぎれば春が来ると自分に言い聞かせながら、表鬼門に当たる吉田神社、裏鬼門に当たる壬生寺(みぶでら)などに足を運び、新年の福を祈願する。自宅では鬼が嫌うイワシを塩焼きし、頭は柊(ひいらぎ)に刺して玄関に飾り、身を食べる。炒り豆を撒いて食べるのはもちろん、年齢分の豆を包んだおひねりで身体の悪いところを撫で、氏神様に奉納する風習も京都にはまだ残っている。

そんな大切なアイテムである炒り豆を盛る、“益々福が来ますように”との願いを掛けて“福枡”と呼ばれる容器をモチーフにした薯蕷(じょうよう)饅頭はこしあん入り。手仕事の温かみが出るように、コテで1線ずつ焼きつけた〼(枡:ます)の字に合わせてゆるやかな四角に成形。豆をイメージした白ゴマを3粒、座りが良い右下の位置に貼り付けている。

元島さんが得意とする、すりおろしたつくね芋の力でふっくら蒸し上げる薯蕷は、職人の腕が試される難しい生地。つくね芋と砂糖を混ぜてからしばらく寝かすのもコツのひとつだ。上用粉と合わせてからは練りすぎても、逆に練りが足りなくてものど越し良く仕上がらない。経験がモノを言う。

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