今月の和菓子

12月の和菓子——京のクリスマス

近年、京都の若手の茶人の間で根付きつつある“聖夜の茶会”。菓子司でも、クリスマスにちなんだ和菓子の注文が入るといいます。『千本玉壽軒』三代目・元島真弥さんは「型がない分、難しいテーマでもあります」と話します。「洋菓子であればサンタクロースのマジパンなど直接的な表現をするところですが、和菓子では時間をかけすぎない、作り込まないからこその良さを表現したい」とも。心を灯すような、一菓をご紹介します。

文:小林明子 / 撮影:岡森大輔

「モチーフは、私の母校を毎年彩る大きなツリーです」。

木枯らしが吹き始めると、街のあちこちでクリスマスソングを耳にするようになる。菓子業界全体にとっては一大商機だが、20数年前は京都の菓子司とクリスマスの縁は決して濃いとは言えなかった。伝統を守りつつも革新的な表現を行うことで知られる人気店が現れ、状況は少しずつ変わっていく。以降、京都の菓子司もクリスマス商戦にこぞって参入するようになった。

『千本玉壽軒』でも、元島さんが修業をスタートさせたタイミングと重なったこともあり、ちょうどその頃から自由な発想を生かした菓子作りが始まる。以来、さまざまなクリスマスの和菓子を誂えてきたが、しばしばモチーフにしているのは、煉瓦造りの校舎が代名詞の母校に毎年出現するクリスマスイルミネーション。今や京の冬の風物詩にもなっている、見上げるほどの樹高を誇るヒマラヤ杉のツリーだ。

こんもりした形、枝ぶりが美しいツリーは、純白の芋練り切りと挽茶で染めた白あんの二種を重ねて篩(ふるい)を通す“きんとん”で表現。ところどころに雪が積もる様子を描き出している。とは言え、茶席用の生菓子はイメージが固定されないよう、“作り込み過ぎない”を旨としているため、色付きの飾りはあえて避けつつも、金と銀の箔を散らして華やかに。それぞれの記憶の中にあるツリーやクリスマスのひと時が連想できるような、控えめの意匠に留めている。

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