【レシピ付き】ナス料理 Vol.3 東京『江戸前芝浜』
近隣に東京タワーや増上寺が迫る、東京・芝公園の路地の一角にある『江戸前芝浜』。主人の海原 大(かいばら ひろし)さんが文献を紐解き、自ら再現して美味しいと感動した江戸料理が楽しめる話題の店です。今回はその中から、シンプルで清らかな味わいゆえに、素材の美味しさが心に残るナスの南蛮煮を披露。「江戸料理ではナスにエビや魚をよく合わせますが、高級品だった砂糖を使わず、すっきりと切れ味のいい醤油味が基本です」。相性のいい油もここでは一滴も使うことなく、ナス本来の持ち味で勝負します。
東京・芝公園『江戸前芝浜』海原 大さん作
寺島茄子の南蛮煮
江戸時代の料理書『料理伊呂波(いろは)庖丁』に、「なすび南蛮煮は小茄子色格好性宜を へたを切丸形にて酒せうゆ当分にして汁気なくなりまで煮つめもちゆる」とある。
「昔はお酒と醤油を同割にしてナスを煮ていたようです。冷蔵庫がなかった時代に保存性を考えてのことだと思いますが、そのままでは味が濃すぎますから、醤油の量は少し控えめにしています。この南蛮煮は仕上がりの色よりも、味の含ませ方がポイント。あらかじめナスに塩をまぶしておくことで味の通り道ができ、煮えムラも少なくなります」。
調味料は炎を上げてしっかりアルコールを飛ばした煮切り酒と、濃口醤油のみ。調理法もシンプルだからこそ、細部にまできちんと気を配らないと美味しくできないという。ナスからじんわりしみ出てくる滋味こそが、この料理の真髄だ。
小ぶりな江戸東京野菜の寺島茄子を使う
今回使うナスは、7月から8月に旬を迎える江戸東京野菜の「寺島茄子」。長さ7~12㎝ほどのやや小ぶりで、「蔓細千成(つるぼそせんなり)」とも呼ばれる江戸生まれの古い品種だ。
名前の由来は、ナスの栽培に適した白鬚(しらひげ)神社周辺、寺島村(現・東京都墨田区向島)で盛んに栽培されていたことから。しっかりした身質の賀茂なすなどとは異なり、加熱すると種の周りがとろっとなり、ぐずぐずになるほど柔らかく、旨みに通じるという。
「寺島茄子を使う時は、食べる直前に煮汁をたっぷりかけてお出しします。フレッシュ感を残したナスに汁をたっぷり含ませて食べると、とろけるような食感が際立ち、煮汁の味と共にナスの持ち味が口の中で合わさって美味しいんです」。南蛮煮のほか、油で揚げたり、焼きナスにしたりしても美味しい品種。9月以降は、さらに小ぶりの小ナスで作るという。
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