大阪『柏屋』流、重陽のもてなし Vol.1 器・設え編
「五節句の中でも、雛祭りや子どもの日などは家庭での行事として残っていることが多いですが、旧暦9月9日の重陽の節句は、ご存知でない方も多い。だからこそ、お伝えできることは精一杯したいと思うのです」とは、大阪の料亭『柏屋』の亭主・松尾英明さん。菊を使った遊宴や故事があったことから「菊の節句」とも呼ばれ、『柏屋』では「菊尽くし」なるコースを秋分より(9/24~10/22)提供します。どのように菊の節句を解釈し、器や設え、料理でもてなすのか。Vol.1は主に器・設えについて、Vol.2では料理についてお伝えします。
重陽の節句は、五節句を締めくくる大事な存在
四季折々の風情を大切に、旬の食材を用いて五感を満たす。そんな伝統を重んじつつ、現代的な趣向も取り入れた日本料理で魅了する『柏屋』が建つのは閑静な住宅街。凛とした佇まいの数寄屋造りが目を引く。
現当主は二代目の松尾英明さん。大学時代に茶道を習い始めたことで日本文化の素晴らしさに開眼。卒業後、父が勧めた滋賀県の名料亭『招福楼(しょうふくろう)』で修業を積んだ。
実家に戻って4年後の1993年に、数寄屋建築の名匠・中村利則氏の設計で建て替え。茶室を含む全5室の趣異なる個室を設え、新たな一歩を踏み出した。
茶の心を大切に、日本文化を守り継ぐ松尾さんが料理を作る上で大切にしているのは季節感。なかでも、宮中で行われていた祭祀が姿を変え、無病息災や子孫繁栄を祈る行事として民間に根付いた五節句に重きを置いている。
松尾英明さんは1962年大阪生まれ。関西学院大学理学部を卒業後、滋賀の名料亭『招福楼』にて修業。1989年『柏屋』へ戻り、1992年料理長に。2013年農林水産大臣より「第4回料理マスターズ ブロンズ賞」受賞。2018年「第9回料理マスターズ シルバー賞」受賞。2010年よりミシュランガイドで三つ星2020年にはミシュラングリーンスターを獲得。2021年龍谷大学大学院 農学研究科 修士課程卒業。2022年『紫紅社』より「柏屋の『季』」発行。
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