佐々木 浩流、12月の献立の立て方【前編】
本格的な寒さが到来する12月。『衹園 楽味』の献立試食会でも、温かい料理が多く登場します。今回、特に注目なのが「先付」。外気で冷えた身体を温める一品を提供するのが定石ですが、店主・佐々木 浩さんがお客を観察する中で見出した、新たなスタイルを提案します。
『衹園 楽味』:料理は先付、造りの後、魚・肉・野菜のネタ箱が豪快に並べられ、どう調理するか、料理人とお客がやり取りをして料理を決めるスタイル。「おすすめ」の品書きから選ぶことも可能で、試食会では先付と「おすすめ」の料理を決めるため、料理人がそれぞれ試作した1~3品を披露。佐々木 浩さんとスタッフ数人が試食し、ブラッシュアップを図る。
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佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)
1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。98年、36歳で独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。直営店の『衹園 楽味』は「大人の居酒屋」をコンセプトに掲げ、2013年に開店。アテをつまみながらお酒を楽しめる『食ばぁー 楽味』併設。
『衹園 楽味』の料理人。上左/髙橋貴明さん。2015年入店で、煮方を務める。上右/水口直規さん。2016年入店で、向板を担当。下左/焼き場の堀越優希さんは、2022年入店。下右/見習いの山下一我さんは、2024年入店。
試食したのは佐々木さんのほか、左/『衹園さゝ木』女将の佐々木太津子(以下:太津子)さん、右/ソムリエの佐々木恭輔(以下:恭輔)さん。
髙橋貴明さん作──先付 野菜の炊合せ
- 髙橋:
- 12月21日は冬至で、一年で昼が最も短く、夜が長い日。陰が極まり陽の力が復活する日ともされ、「一陽来復」と呼ばれることもあります。この日に良い「運」を呼び込もうと、「ん」の付くものを食べる風習があるので、「ん」の付く野菜だけで先付を作りました。
レンコンはレンコン餅にし、炊いた南京(ナンキン)と金時ニンジン、地漬けにした春菊を盛り合わせ、銀餡をかけています。
レンコン餅は、ペーストと粗みじんを合わせて塩で調味し、片栗粉を付けて揚げたもの。だしで炊いた南京と金時ニンジン、茹でて地漬けにした春菊と共に器に盛り、カツオ昆布だしを薄口醤油・塩水・みりんで調味し、薄葛でとろみを付けた銀餡をかけた。振り柚子をして完成。
- 恭輔:
- 冬場に出てきたら嬉しい先付ですね。野菜だけなので、ある程度お金をいただく店としては満足していただけるのかな、とちょっと不安もありますが。
- 佐々木:
- 女性はこういうの好きでしょ。
- 太津子:
- はい、大好きですね。ほっこりしますし。
- 佐々木:
- うん、ええ先付やと思うねんけど…。
「大人の居酒屋」を掲げるこの店は、たとえ雪がちらついてても始めにビールを飲む人が多いと思うねんけど、どう?
- 髙橋:
- 確かに、多いですね。
- 佐々木:
- そしたら、この料理やとちょっと重いねんな。
「お疲れさん!」言うて乾杯して、クーッとビールを飲む。そん時に2口くらいでパクパクッと何かつまんで、まだ1/3くらいビールが残ってるところに追い先付としてコレが出てきたら最高、「気が利いてるやん!」って思うわ。その歯切れの良さ、リズム感が良くない?
- 髙橋:
- そうですね。次にお出しする水口の料理が、自家製シーチキンのシューなんですが、ちょっと工夫したらいけるかもしれません。
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