「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』2月の献立会議【後編】

2月17日から切り替わる『衹園さゝ木』の献立を調理スタッフ全員で話し合う献立会議後編。今回はコース後半、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザートを決めていきます。弟子との会話から溢れる“さゝ木イズム”に注目です。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「弟子と挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:竹中稔彦

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

右より煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、千谷友哉さん、桑原汰知(たいち)さん、ピスケルニック・ナディアさん、下澤海里(かいり)さん。調理スタッフは、右より煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、千谷友哉さん、桑原汰知(たいち)さん、ピスケルニック・ナディアさん、下澤海里(かいり)さん。


焼き物

佐々木:
焼き物は、前編で坂東が言ってたトラフグの白子グラタンでいこか。
坂東:
具は白子の他、ホタテ、百合根、キクラゲ、カリフラワーがいいかな、と思っています。
佐々木:
そうやな。ただ、カリフラワーは花の部分より軸の方を入れた方がうまいで。
で、上からパン粉をかけて焼き目を付ける。スプーンを入れた時に広がる香りが最高や!さらに唐辛子のもみじおろしをポン酢と合わせて、小さじ1杯くらいのせると和の香りがしてええと思うで。


進肴

佐々木:
アツアツの白子グラタンを食べた後、一献を誘うような一品があってもええよなぁ。鉢物に自然と繋がるような。

……あ、京都の冬といえばぬた和え。でも、定番のイカやタコと和えただけやとオモロないから、ちょっと気が利いたやつをお出ししたいな。
例えば平皿に食材を重ねて、その上にワケギ、ほんで辛子酢味噌を和えずにかける、みたいな。お客さんに混ぜて食べてもらうねん。
坂東:
ミル貝やホッキ貝はいかがでしょう?
佐々木:
ミル貝はちょっとクセあるわ。ホッキ貝の方が甘くてうまいな!
あとは大徳寺麩を入れると色味も食感も違ってええと思う。天には針打ちしたウド、カイワレ、レッドソレル(マイクロハーブの一種)なんかをのせるといいと思うわ。

鉢物

佐々木:
ご飯にいく前にホッとしてもらう鉢物。誰か考えてきた?
坂東:
カニしゃぶで、今季最後のカニを楽しんでいただくのはどうかなと思います。だしはカニミソと、白味噌か田舎味噌かの味噌仕立て。ネギやセリなどの野菜と一緒に召し上がっていただきます。

佐々木:
カニしゃぶなぁ……ええねんけど、鍋でいくならコース仕立てにするのはどう?
例えば初めに椎茸を食べていただく。その次にセリと白菜の芯、ほんで最後にカニ。その方が特別感あると思わん? しかも最適な火入れで出せるし、お客さんにもしっかり味わっていただける。その代わり、野菜一つ一つ、めっちゃうまいのを厳選せなあかんで。
カニも、鍋の中でしゃぶしゃぶするんじゃなくて、脚の殻の一面だけへいで鍋に入れ、火が入ったらお客さんの前でグッと寄せて食べやすい状態にしてお出しするねん。

坂東:
おいしそうです! だしは味噌仕立てじゃない方がいいですかね。
佐々木:
そうやな。一番だしに塩と醤油で調味したシンプルなものがええと思うわ。

ご飯物

千谷:
カニしゃぶのだしがあるなら、雑炊とかだしを生かせるものがいいですね!

佐々木:
そうやな、雑炊もええけど……あ、カニの天津飯どやろ。カニをガッサーと入れて、あんかけにするねん。

ただ、前にうちの定番でもあるカニチャーハンを別のものに変えた時、「カニチャーハンをこの人に食べてもらおと思って連れてきたのに!」て言われたことがあってな…、全席に作り直したことあるねん…。ちょっと、様子みながらやってみよか。

デザート

佐々木:
デザートどうしようかな。
桑原:
雪が降る季節ですが、梅も咲き始めるので、その光景をテーマに考えました。
チーズケーキで雪を表現し、フルーツを梅酒などに漬け込んでコンポートに。白と紅色のコントラストがキレイな一皿です。

坂東:
僕は和風ティラミスがいいかなと思ってます。スポンジを黒蜜に漬け込んで、マスカルポーネのムース、カスタードクリームなどで層にします。上にきな粉、チョコレートのソースをかけてもいいかなと思います。
佐々木:
この季節、イチゴは使わへん?
あ、この前食べた亀岡のイチゴ、抜群にうまかったなぁ。
ナディア:
私はイチゴシャーベットに花ワサビを添えたものがいいなと思います。
佐々木:
いや、めっちゃいいイチゴはつぶすのもったいないなぁ…。「食べて」って言ってるようなイチゴ。器に一つおいとくだけでいいと思うわ。

で、2皿目にぜんざいはどうかな、と思うねんけど。あかん?古い?

坂東:
あったまりそうですね。いいと思います!
佐々木:
栗2つと白玉を入れてさ、塩昆布添えてお出しする。

桑原や坂東が言ったような華やかなものは、3月に入って春めいてきてからがええと思う。最後の冬の2月を噛みしめてもらうならぜんざいかな。

最後のドリンクどうする?
桑原:
抹茶がよさそうですね。
佐々木:
せやな。では一旦、これで試作していきましょう!
全員:
はい!


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