「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』4月の献立会議【前編】

京都『衹園さゝ木』で4/8~30に提供する夜のコース内容を決める献立会議。いよいよ春満開、季節感ある料理案を、弟子たちは大将・佐々木 浩さんにぶつけます。対して佐々木さんは、春の淡い味わいや、一瞬しかない旬味を生かす調理法を指南。前編では、先付・前菜・お椀・焼き物の献立について話し合います。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:内藤貞保

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

調理スタッフは、右より煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、千谷友哉さん、桑原汰知(たいち)さん、ピスケルニック・ナディアさん、下澤海里(かいり)さん。

先付

佐々木:
急に温かくなって、すっかり春の陽気。お客さんに季節を感じていただけるよう、いい献立を立てましょう!

京都は4/25くらいまで筍がおいしいから、僕は“コースの華”である焼き物は筍を出したいと思ってる。でも他に案があるなら、じゃんじゃん意見を出してください。焼き物を2つ出してもええと思うしね。

ではまず、先付からいこか。
下澤:
僕は春キャベツと貝類で考えました。
春キャベツは乳酸発酵させて酸味を立たせ、ざっくり切って器に敷きます。アサリだしのあんをかけ、ホッキ貝の炙り、レア目に湯引きした車エビをのせ、コゴミの地漬けを添えます。

ナディア:
ホワイトアスパラガスを使ったすり流しはどうでしょう。
剥いた皮をゴボウチップスのように揚げて添えると面白いと思います。
佐々木:
あれはな、ゴボウやからうまいねん。
アスパラガスは味が淡いから、油に負けるねんな。
坂東:
僕が考えたのは、パッと見て春らしい色合いの一品です。
セルクルに春キャベツ、ゴマ酢で和えたコゴミやホッキ貝を詰め、周りにスナップエンドウのサヤのすりながしを流す。豆とナノハナの黄色い花を盛り付けます。
佐々木:
そのスナップエンドウ、逆にした方がうまいんちゃう?
スナップエンドウは皮の食感が命。豆をすり流しにして、食感が楽しい皮を散らした方がええんちゃうかな。
田中:
僕は春キャベツを使ったロールキャベツを考えてて……。
佐々木:
なんかみんな春キャベツばっかりやな(笑)!
田中:
はい(笑)。
タネはすり身をベースに、素揚げで香りを立たせたサクラエビ、ウルイなどの春野菜を混ぜたもの。
甘鯛のアラか、ホワイトアスパラからとっただしを張り、エビオイル、もしくは春らしいフキノトウオイルを垂らし、大徳寺納豆のパウダーをかけるのはどうかな、と。

佐々木:
うーん……先付に甘鯛の香りはちょっと強すぎると思うな。
千谷:
僕はアオリイカを使いたいと思いました。昆布オイルとライム果汁で和え、ウドのピクルス、スナップエンドウを添えます。
そして、地漬けしたホワイトアスパラガスにトビコを加えた白酢を添え、召し上がっていただこうかと。
桑原:
僕は、ハマグリを使いたいです。軽く茹でて炙るかマリネしたものに、ハマグリと新玉ネギのだしであんかジュレにしたものをかける。酸味を利かせ、スナップエンドウやウド、ウルイなどの野菜を添えます。
佐々木:
うーん、春キャベツの意見が多いし、春キャベツでいくか…? でも、何と組み合わせるか、やなぁ。
今、ほんまにうまいもんてなんやろな。
桑原:
貝ですかね。
佐々木:
貝やなぁ。
千谷:
ホタテはどうですか。
ヒモも炙って入れたらおもしろい食感になるかと。
佐々木
おっ、ええかもな。ほなこうしよう。
春キャベツに塩をして、軽く乳酸発酵させる。そこに生のホタテ貝柱と、提供直前に炙ったヒモや子も添える。スナップエンドウ、さらにキャビアをトッピング。

でも……なんぼ和食の先付と言っても、タッチが軽すぎるというか、油脂が少なすぎるような気がする。めっちゃキレイな味わいのグリーンのオリーブオイルとかあるといいなぁ。それに、ちょっと香りを足す感じ。
坂東:
パセリのオイルとか…。
ナディア:
木の芽オイルはどうですか?
佐々木:
ええやん! キレイな味わいのオリーブオイルに、木の芽を混ぜる。当たり鉢で当たって裏漉ししたやつな。ミキサーやと香りが飛ぶから。それを5滴くらい垂らしたら、うまいと思う!

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