昆布はどうなる?

消費量ナンバーワン“昆布王国”富山の昆布事情

富山県は北前船や北海道開拓の歴史を背景に、昆布の消費において全国ナンバーワンの座を長年守り続けてきました。しかし、そんな“昆布王国”と呼ばれる富山にもかげりが。前回は、いかに昆布食が富山に根付いたか、富山独特の食べ方、郷土料理などを紹介しました。今回は昨今の昆布事情について、富山県高岡市の昆布製造メーカー『室屋(むろや)』五代目・室谷(むろたに)和典さんにうかがいました。

文:坂下有紀 / 撮影:田中祐樹

真昆布だけでなく、あらゆる昆布が緊急事態!?

kon0001b(画像提供:『室屋』)

「2021年度は福井県に1位の座を譲り、今年はどうなるかと心配していましたが、辛うじて首位を奪還できました」と話すのは、1927(昭和2)年の創業から富山県高岡市で昆布業を営む『室屋』の五代目・室谷和典さん。

「長年、富山は昆布の消費額において、2位以下に圧倒的な差をつけていましたが、近年は全国的に昆布消費が大きく落ち込み、富山と他県との差もかなり縮まっています。若い世代の昆布離れ、家庭での昆布消費の減少、そこに加えて昆布の不漁による供給不足。かつての1位と今の1位では、まったく意味が違います」と、王者・富山も抗(あらが)えない変化の波が押し寄せているという。

kon0610c「北陸昆布協会」副会長、「たかおか昆布アンバサダー」なども務める『室屋』代表取締役社長の室谷和典さん。

近年の天然真昆布の不漁を問題視し、「昆布はどうなる?」の連載はスタートしたが、今あらゆる昆布が危機に直面していると室屋社長は考える。

「地球温暖化による海水温の上昇は水産資源や漁業・養殖業に大きな影響を与え、昆布の生育環境が大きく変わってしまいました。利尻、羅臼など、昆布は産地の名称がついているでしょう。産地が変わればまったく別物、代替はきかないし、他では同じものが育たないのです」。

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昆布の消費が減ったといっても、需要に対して供給は充分ではない。

「量・質ともに揃ったものが不足し、全国の昆布屋は仕入れに苦労しています。料理人さんも味の決め手となるだし昆布を探し回られ、特に昆布の加工食品メーカーでは大量に必要とするため、従来の味を保ち続けることが困難だといわれています」。

室谷社長は昆布不足の主要因を次のように指摘する。

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