なぜ、促成真昆布が主流になったのか?
7月20日、天然真昆布漁の解禁日に合わせて南茅部(みなみかやべ)を訪ねた我々は、昆布一色に彩られた港町に息を飲みました。けれど、4日の間、出合ったのは1年養殖の促成昆布ばかり。大半の漁師が促成昆布を養殖し、その作業に追われていました。なぜこれほどまでに促成が主流になったのか? また、促成とはどのように育つのか? その仕事を、引き続き臼尻(うすじり)地区の川井靖之さん・英親(ひでちか)さん親子に伺いました。
促成昆布の長さは5m!
「じゃ、行ってくるわ~」と、沖の養殖場へ向かった川井さん親子が、臼尻漁港に戻ってきたのは1時間後。船には大量の促成昆布がこんもりと積まれていた。
養殖場は、天然ものの漁場よりも沖合にある。種付けしたロープを海に沈めると、昆布が海底に向かって育っていく。それは海の中で暖簾のように揺れている感じだろうか。夏場には昆布が5mほどの長さに育っている。それを船上に備え付けたクレーンで、ロープごと引き上げて収穫するそうだ。
臼尻漁港に戻ると、川井さん親子はすかさずクレーンで収穫した昆布を釣り上げ、なんと海の中へ。このまま置いて、明朝2時頃またクレーンで引き上げ、トラックに乗せて作業場へ運ぶと言う。
天然真昆布の種苗で約8カ月栽培
促成昆布の種苗は、天然真昆布から採取される。促成や2年物などの養殖昆布よりも、やはり胞子の質が高いのだそう。「だから、天然がないと養殖もできないゆうこと」と川井さん。天然昆布が激減していることを思うと少し薄ら寒い気持ちになる。
天然から採取された胞子は、専用の施設で糸に着床させ培養する。「水槽の中で、日照と水温を調節して、1年経ったように昆布に勘違いさせよるんだ」。
この種苗糸が、10月中旬から月末に川井さんたち組合員に配布される。これをロープ(養生綱)に差し込んで、沖の養殖場で海に沈める。川井さんのロープは1200本。いよいよ促成養殖のスタートだ。
1~2月になると、成長のよいものを残して、短いものを落とす「すぐり(間引き)」を行う。極寒の海の上での作業だ。
3~4月には、2mくらいまで伸びて「昆布らしくなる」。1株に10本くらいの昆布がわさわさと育っているので、6~8本ほど残して間引く。沖でひと株ずつ船に上げてチェックしていくというから、時間も手間も掛かる重労働だ。「うん、畑と一緒ですよ」。
間引いたものは、細くて柔らかいので天日干しして「早煮昆布」として出荷すると言う。
「頼まれるもんだからやるんだけどね。薄い小さい昆布を乾燥させると軽いでしょ。㎏単価だで歩留まりは悪いわね。うちは100%天日干し。天気と風が一致しなければいいものが出来ないのさ」と川井さん。
6月には「早採り」が始まる。「もう5mくらいには育ってるけど、まだ薄い。おしゃぶり昆布なんかになるんさ」。収穫→洗浄→乾燥という最盛期と同じ早朝からの作業は、この時季から始まるという。
7月には、身がぐっと厚くなり、「本採り」へ。8月20日くらいまでに終わらせないと、水の中で昆布が腐っていくらしい。900株をひと月半で上げなければならない。急げや急げ!というわけで、午前2時からの作業になるわけだ。
これが養殖に使うロープ。ここに種苗糸を絡めて海に垂らすのだと言う。
本採りの時季、株には6本もの長い促成昆布が付いていた。その株から1枚ずつ切り取って洗浄作業へ。
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