昆布はどうなる?

2023年夏、天然真昆布は採れたのか?

「天然真昆布が危機に瀕しています。和食にとって一大事ですよ!」。大阪・空堀(からほり)の『こんぶ土居』店主・土居純一さんのこの言葉から始まった本連載。ようやく真昆布漁の時季がやって来ました。いよいよ北海道は南茅部(みなみかやべ)地区へ。土居さんの現地との30年に及ぶ信頼関係のお陰で、我々は真昆布の現状をつぶさに見ることができました。多くの出会いがあり、物語を聞きましたが、果たして、今夏、天然真昆布は採れたのでしょうか。

文:団田芳子 / 撮影:竹田俊吾

目次


真昆布の町は夜中に目覚める

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7月20日早朝3時30分。真昆布の故郷、南茅部にやって来た。

ここは函館市だが、夜景で有名な函館山とは反対の東部、太平洋側。海岸線が35㎞に及ぶ南茅部地域は、平地は少ないが、古くから水産資源に恵まれ、北海道大謀網(現在の定置網)漁業の発祥の地でもある。

そして、江戸時代から300年、朝廷や幕府へ奉納された献上昆布を産した白口浜(しろくちはま)を擁する屈指の最高級真昆布の産地だ。

まだ日が昇る前というより、我々の感覚では真夜中、真昆布の町はすっかり目覚めていた。海岸線を走ると、荷台にわんさと昆布を積んだ軽トラと何度もすれ違う。海沿いには、昆布漁の作業場が点在し、煌々(こうこう)と灯りがついている。そこでは5・6人から10数人が忙しく立ち働いており、茶色いカーテンの如く大量の昆布が吊り下げられている。

町中には、昆布の匂いがそこはかとなく漂っている。想像を絶するほどに、この町は昆布一色に染まっていた。

kon0014b荷台から溢れる真昆布。海岸線を行き交うトラックはほとんどこの状態。7月初旬からお盆過ぎまでの漁期だけの光景だ。

kon0014c沖の養殖場から種苗を植えたロープごと水揚げされてきた昆布。3m以上あるだろうか。このままトラックの荷台に積み、各家の作業場へ運ばれる。

昆布はあれど、促成ばかり

南茅部地区には昆布が溢れている。けれど、その大半が「促成」と呼ばれる1年養殖ものだ。

初めて見る我々の目には、水揚げしたばかりの昆布は長くて立派に見えたが、後に目にすることになる「2年養殖」や、ましてや天然真昆布に比べれば、全体に細く、何より厚みがない。とはいえ、現状では98%がこの促成だ。

養殖技術が確立したお陰で、家庭で使う程度の真昆布は確保できているし、何より漁師は、出稼ぎせずに通年操業ができるようになった、有り難い存在であることは事実だ。

kon0014d臼尻(うすじり)漁港を訪ねると、沖の養殖場から昆布を運ぶ小船が何艘も帰ってくる。1日に2~3度往復するらしい。

漁師は午前2時前には沖に小船を出し、養殖場から昆布を水揚げし、トラックでそれぞれの作業場(ほとんど自宅前の浜辺にある)に運び込む。そこには家族はもちろん、親戚、ご近所の方も集まって待ち構えている。

荷台から順次下ろした昆布は、洗車機を横に倒して小型にしたようなグルグル回るブラシの間を通して汚れを落とす。ザブザブと水洗いした後、一枚ずつ吊るし、水気を切る。

その後、乾燥室へ。上部にレールを設けてあるが、長さ約3m、数10㎏ある昆布をガラガラと干し棹(ざお)ごと運ぶのはかなり重そうだ。壮年の男性が、オリャーッと気合いを入れて押している。干し上がるのは10~12時間後。

そんな工程が1日に2~4度ほど繰り返される。これは想像以上に重労働だ。

kon0014eほとんど会話もなく荷下ろし、洗浄、運ぶ、干すなどそれぞれが役割を分担して粛々(しゅくしゅく)と作業は進む。

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