昆布はどうなる?

2年養殖は難しい!?

今夏、真昆布の産地・函館市の南茅部(みなみかやべ)地区を訪ねた我々は、幾つかの昆布作業場を訪れました。そこで耳にしたのは「2年物は難しい」という台詞。昆布を養殖する漁師が口を揃えて言うのです。促成と呼ばれる1年物は豊富に揚がっているけれど、2年養殖の真昆布は天然物に匹敵するほどに貴重な存在のよう。そんな中、ベテラン漁師・吉村良一さんは2年連続で2年養殖に成功。その理由を知るため、川汲浜(かっくみはま)の作業場を訪ねました。

文:団田芳子 / 撮影:竹田俊吾

目次


幅広で分厚い! 2年養殖真昆布の迫力

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これは、まったくの別物だ―! 
天然物に匹敵すると言われる2年養殖真昆布に出合ったのは、2023年の天然真昆布漁を取材するため、南茅部を訪れて3日目。川汲浜の吉村良一さんの作業場でのことだった。

到着したのは早朝4時30分。陽が射し染める中、これまで見てきた促成昆布とはまるで違う迫力ある昆布の暖簾が目に飛び込んできた。それは、促成昆布とは別種ではないかと思うほどに違っていた。厚さが、ツヤが違う。生命力が漲っているかのような力強さがある。

「数年前、ある漁師さんの2年養殖の箱を開けて、驚いたことがあります。こんなん天然物だと言われても分からないくらいだと」。
それほど立派な2年物があったと土居純一さんから聞いてはいたが、これを見れば納得だ。

作業場では、吉村さんと奥さん、それにお手伝いの方々が既に早々と作業中。すぐ横を流れる川の水を引いた洗浄機で昆布を水洗いする人がいる。その横で、吉村さんは1枚ずつタワシで昆布をゴシゴシと磨いている。

「コケムシや、帆立や牡蛎の稚貝がくっついているのさ。これを一本一本タワシできれいに落としていくの。コケムシは生のうちにこすらないと。乾くと跡が残るんだ。この手間が促成昆布と違うとこ」と吉村さん。

立派な厚みのある2年物だが、その量、たったの400本。前日にお邪魔した川井靖之さんの促成昆布は7000本以上あると聞いたが、400本で今期の2年養殖物のすべてだというのだ。

2022年の南茅部の真昆布生産比率、天然0.3%、2年養殖1.6%、促成98.1%という数字が、ひしひしとリアルに感じられる。

kon0017b川汲川から引いた真水で分厚い2年養殖真昆布を洗い、台に掛けて水切りをし、1枚ずつ付着物を取り除く。

kon0017cコケムシは乾燥してからでは取れないため、1枚ずつタワシでこすり取る。1回で取れなければもう一度洗い、徹底的に取り除く。「跡が残ると値段が下がるのさ」と吉村さん。

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