これから天然真昆布はどうなる⁉
天然の真昆布の収穫は、2023年も無事に行われました。収量も少し増えたようです。とはいえ、促成(養殖昆布)の量と比較すると、文字通りケタ違いの差があります。この事実だけを見ても問題は山積みのよう。これからの真昆布はどうなっていくのか? 昨年の収量を振り返りつつ、今回の産地取材の案内役を務めてくださった大阪・空堀(からほり)の『こんぶ土居』店主・土居純一さんに、真昆布の未来について聞きました。
2023年の天然真昆布の収穫量は?
2007年は爆弾低気圧の影響で不漁。最後の豊漁が2014年で、その4年後には100tを切った。
我々が、最高級真昆布の産地、函館市の南茅部(みなみかやべ)へ取材に行ったのは2023年7月のこと。残念ながら天然真昆布漁を見ることは叶わなかったが、8月になって漁に出たという話は「南かやべ漁業協同組合(以下、南かやべ漁協)」に聞いていた。
天然真昆布の収穫量が集計されるのは半年後とのことだったので、年明けすぐに連絡してみると、「少し増えましたよ」と臼尻(うすじり)支所長・竹内幸敏さん。その言葉につかの間、喜んだのだが…。
23年の天然真昆布の収穫量は23t。21年を底に、わずかではあるが回復傾向にあるが、楽観視はとてもできない数字だ。
竹内さんによると、臼尻地区で23年に天然真昆布漁が行われたのは8月2日と3日のたった2日。しかも、1日2時間で漁を終えたという。収穫量は12tだった。
その他の木直(きなおし)、川汲(かっくみ)の浜でも、せいぜい1~2日。名産地として誉れ高い尾札部(おさつべ)地区では漁が行われなかった。
一昔前まで、天然真昆布漁は20~25日間行われていたらしいから、隔世の感がある。
促成と2年養殖を合わせた養殖真昆布の収穫量は、天然と比べて圧倒的に多い。
天然の漁期は養殖昆布の繁忙期!
天然真昆布漁の時期は、養殖昆布を手掛ける漁師の繁忙期と重なる。この連載でもお伝えしてきたように、漁師は真夜中から夕方まで、家族総出で働いている。
そんな中、天然真昆布は、晴天の日でも直前に雨が降るとダメ、南西の風・シカタが吹いてもダメで、いつ漁に出れるか分からない。出漁しても収穫量はわずかとあっては、わざわざ天然を採りに行く漁師が少ないのは致し方のないことだろう。
そんな現状を頭に置きつつ、上のグラフを見てほしい。06年から22年まで、養殖昆布の収穫量は2500t前後で安定している。それに比べて天然物は、グラフに表せないほどに少ない。
取材に応じてくれた吉村良一さんの父君・捨良(すてよし)さんが開発を手がけた養殖昆布は、2年前から取引価格も上がり、今や南茅部の漁師にとって一番の収入源になっている。そのため、漁師は天然真昆布に執着する必要がないという事実も知っておくべきことだろう。
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