大阪『楽心』6月の献立の立て方【前編】コース設計の思考
大阪・福島区。細い露地に現れるのは、数寄屋造りの精神を映した日本料理店『楽心』。店主・片山心太郎さんが毎月の献立を組み立てる際、特徴的なのが「直前まで決めない」こと。その時の季節の気配を感じ、生産者の声に耳を傾け、料理の流れや器、しつらいに至るまで思考を巡らせます。今回は、6月の献立が生まれるまでの思考のプロセスを伺いました。
片山心太郎さん:1977年千葉県生まれ。辻󠄀調理師専門学校卒業後、大阪・心斎橋『懐石料理 桝田』で8年経験を積み、その後、8年在籍した豊中『とよなか桜会(さくらえ)』では料理長を6年間務めた。2013年4月に大阪・福島区で独立。2025年3月、同じ福島区内で移転・拡張オープン。
献立は、前月末の1〜2日で決める
「考え抜くことが、大事だと思うんです」。
そう語る片山さんは、翌月の献立を前月末の1〜2日で決めるという。早い段階から組み立てることもできるが、“その時”に本当に食べたいものは何か。自らを追い込み、納得できる答えが見つかるまで向き合う。
「月末になると頭が痛いですし、なかなか浮かんでこない月もあります」。料理だけではない。器選びや仕上げの所作、空間の演出に至るまで、わずかな違いが印象を大きく左右する。献立が完成した後も目を閉じ、自分がお客になったつもりで、暖簾をくぐるところから料理を味わい、店を後にするまでの時間を頭の中で辿る。
「これは少しくどいな、ここは流れが悪い…」と感じたら、白紙に戻して組み立て直すことも。お客に“今月も楽しかったな”“いい時間を過ごせた”と感じてもらうために、最後まで考え抜くのだ。
「コースの値段は、考える能力の対価だと思っています」と片山さんは話す。食材の原価や技術だけではなく、表には見えない思考の積み重ねにこそ価値が宿ると考えている。
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