北鎌倉『心与(みよ)』7月の献立の立て方【後編】献立の背景にある人の縁
「鎌倉へ移ってからは、海や山との距離が近くなり、触れる食材も増えました。その分、献立について考える時間も自然と増し、常に料理のことが頭の隅にある状態です」と『心与』のユーゴ・ペレ=ガリックスさん。ユーゴさんの料理は、約10年間、日本で過ごす中で培ってきた縁に、約半年前から築いた鎌倉の人たちとの縁に支えられています。ここでは、そうした『心与』の献立の背景にいる人たちを紹介します。
ユーゴ・ペレ=ガリックスさん:1990年フランス中部・ドローヌ地方生まれ。ティエリー・マルクス氏のもとなどでキャリアを積み、2015年来日。京都『菊乃井 本店』での2年間を経て、2017年に東京・銀座のフランス料理店『エスキス』へ。料理長を勤めた後、2024年開業の西麻布『氣分』で料理長を務め、翌年ミシュラン1つ星を獲得。2026年6月、妻で女将の古本ゆきね氏と、神奈川・北鎌倉に『心与(みよ)』を開業。鎌倉の風土を表現する懐石料理に取り組む。
相模湾の目利き――長谷川大樹さん
鎌倉は山海の素材に恵まれた土地だ。まず海では、鎌倉が面する相模湾は駿河湾に次ぐ国内有数の深さのある湾で、海底地形も変化に富み、さらに黒潮の影響も受ける環境にある。そのため面積はさほど広くないながら、生息する魚種が非常に多い。浅場のアジやイサキと、深海のキンメダイやムツが同時に水揚げされる、世界的にも珍しい漁場として知られている。
「逗子の長井漁港で卸をしている長谷川大樹さんには、いつもお世話になっています。長谷川さんは相模湾の膨大な魚種を季節ごとに把握し、的確にすすめてくれます。また上質な魚をさらに上質に引き上げる締めの技術や流通方法を生み出し、漁師さんとの連携も進めて魚をより丁寧に扱う流れも作る、パワフルな人です。たまに、触ったことのない珍しい魚を届けてくれることも。いつも、挑戦心を刺激されています」。
7月の献立に登場するタコは、長谷川さんが脚一本ずつ神経締めしたもの。長谷川さんは魚種ごとに専門のワイヤーを作り、目も止まらない速さで水揚げされた魚を次々と活け締めしていく。そのスピードも、品質に直結する。
長谷川さんは実は魚だけでなく、山の人でもある。三浦半島や丹沢の山に入り、山菜やキノコも神奈川や都内の料理店に届ける。そんな山の幸も、『心与』で楽しむことができる。
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