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高校生が「和食の頂点」を目指し、競う夏――全日本高校生WASHOKUグランプリ in 金沢

「出汁を使った和食」をテーマに全国の高校生が腕を競う「全日本高校生WASHOKUグランプリ」が、今年も金沢で開催されました。料理を作るだけでなく、その意図をプレゼンし、審査員からの問いに答えるのもこの大会の特徴。高校生たちは「出汁」をどう捉え、料理にしたのか。また、金沢市がこの大会を続ける意味とは。熱気に包まれた一日を振り返ります。

文:柴田 泉 / 画像提供:金沢市役所 産業政策課

目次


高校球児が甲子園を目指すように、調理科の高校生が金沢を目指す

今年で7回目を迎えた「全日本高校生WASHOKUグランプリ」。

高校野球の頂点を目指して球児が毎年8月、甲子園に集うように、高校の調理科で料理に取り組む生徒たちが今年の8月4日、金沢で日本料理を競った。2人1組でチームを組み、一次のレシピ審査を勝ち抜いた6チームによる戦い。テーマは「出汁を使った和食」だ。

この大会を主催するのは、金沢市。加賀藩以来、工芸や芸能とともに食文化を大切に育んできたこの地の歴史を引き継ぎ、現在も市は食に関する施策に意欲的に取り組んでいる。

washokua会場は、旧野町小学校の校舎を改装した金沢市の施設「金沢未来のまち創造館」。厨房には撮影クルーが入り、YouTubeで大会終了まで中継。配信を担うアナウンサーや技術スタッフが集結するなど、自治体主催のコンクールとして相当に力の入った体制だ。写真は、沖縄県の美里工業高等学校から参加したチーム「てるてるぼうず」の照屋光生(てるや こうき)さん。

そんな金沢で2019年に始まったのが、この大会だ。金沢にて次代を担う料理人を発掘・育成し、金沢を“和食の聖地”にしたいという構想から始まったという。

開催委員長である『日本料理 銭屋』主人、髙木慎一朗さんは設立から深く関わった一人。

「料理に興味を持ってくれて、専門に学んでいる高校生たちに、一生ものの体験ができる場を贈りたいと創設しました。運動系、文化系の部活には、栄誉ある高校生全国大会がある。料理にもそうした“全力で挑戦できる場”が必要と思ったのです」。

washokub高校生と真剣に向き合う、髙木慎一朗さん。


「出汁」を自在に解釈し、一膳を制作

今年は16の都道府県から24校44チームの応募があり、決勝は東京都、滋賀県、広島県、沖縄県からの6チームが参加した。

大会のテーマは、初回から一貫して「出汁を使った和食」だ。「作りたいものを作り、どんどん冒険してほしいという思いから、幅広く解釈できるテーマにしています」と髙木さん。高校生たちはこのテーマに沿い、ご飯と汁物を含むお膳形式の食事を作る。

毎年、さまざまに工夫しただしと料理が披露されるが、今回の決勝に残った6チームのだしは実に多彩だった。一番だしや昆布とカツオ節のだしといった基本はもちろん、タイ、エビ、サバ、シジミ、ハマグリ、牛、豚、野菜、さらには茶をだしと捉えたチームも。

グランプリを獲得した滋賀県・綾羽高等学校のチーム「主人公」は7種類のだしを使い分けたが、料理を作るなかで出るさまざまな野菜の皮や端材でだしをとったり、だしをとった後の昆布、カツオ節、シイタケで箸休めを作るなど、素材を使い切る工夫にも力を入れた点も印象的だった。

washokucチーム「主人公」、図司暖大(ずし ひなた)さん(左)と角 進ノ助(かど しんのすけ)さん(右)。昨年、2年生で決勝に出場するもグランプリに届かず。悔しさをバネに再挑戦し、念願を果たした。

washokud「黎秋御膳」と題した、初秋をイメージした料理。一番だし、昆布だし、近江牛だし、カツオだし、シイタケだし、野菜だし、鯛のだしを使うという具合にだしの種類は多彩ながら、料理一品ずつは絞り込んだ要素で構成。だしと素材の風味がまっすぐ伝わる仕立てだ。

昆布の生産量が減少していることへの問題意識から、昆布そのものを掘り下げたのが、準グランプリとなった広島県立総合技術高等学校の「しぎーsはな」。真昆布、利尻昆布、日高昆布、羅臼昆布それぞれの特性を調べ、使い分けながら、地元広島の素材と調和させた。

washokue「しぎーsはな」の鴫田師門(しぎた しもん)さん(右)、清水 花(しみず はな)さん(左)。終始落ち着いて調理する様子から、確かなチームワークが伝わった。

washokuf「昆布奏でる米から始まる物語」。旨みの強い真昆布はタイと合わせ、炊き込みご飯に。すっきりとした利尻昆布はお椀に。濃厚な羅臼昆布は地元広島のブランド鶏“神明鶏”と合わせるなど、細やかに使い分ける。


自分の料理を、言葉でしっかり説明できるか

決勝では70分間の制限時間内で料理を仕上げ、審査員による試食に移るが、このコンクールは調理、料理に加え、「伝える力」も大切にしている点も特徴。審査員の試食と並行して3分間のプレゼンテーションも行われる。

washokug調理審査は朝の9時30分から。6チームで12分ずつずらして開始する。トップをきったのは、チーム「お茶―ズ」。スタート直前、気持ちを合わせる眞田心笑(さなだ こえみ)さん(右)と永見藍梨(ながみ あいり)さん(左)。調理中も審査対象で、作業の的確さ、清潔さ、ゴミや洗い物などの扱いもチェック。

washokuh綾羽高等学校(滋賀県)のチーム「ダシプロ」、西浦陽斗(にしうら ひなと)さん(左)、宮本星音(みやもと せいん)さん(右)。元気に声をかけ合い、キビキビと調理する様子が印象的だった。

washokui調理を終えたチーム「てるてるぼうず」(沖縄県・美里工業高等学校)の照屋光生(てるや こうき)さん(左)と比嘉優愛斗(ひが ゆあと)さん(右)。調理の次にはプレゼンが控える。切り替えて、集中力を保つ。

washokujレシピ考案から数ヶ月間にわたって取り組み続けてきた料理を、いよいよ審査員に食べてもらう。料理では独自性、五感の満足度、盛り付けの美しさなどが審査項目。なお審査員は委員長の髙木さんのほか、辻󠄀調理師専門学校 校長の辻 芳樹さん、武者小路千家 家元後嗣の千 宗屋さん、『京都𠮷兆』総料理長の徳岡邦夫さん、筆者。

washokukどのチームも練習を重ねたことが伺える、全力のプレゼンテーション。人にどう伝えるか考えることで、料理の精度は何段階もアップしたことだろう。写真は、野田鎌田学園杉並高等専修学校(東京都)のチーム「最強最高天才コンビ」、冨田 蓮(とみた れん)さん(左)と清野正義(せいの まさよし)さん(右)。2年生のチームだ。

washokul辻󠄀さんは調理師専門学校の校長として、料理そのものや料理に取り組む姿勢について。千さんは茶人として、季節感や料理の文化的側面についてなどを鋭く質問。

また表彰式後に、6チームすべてが審査員からそれぞれ、直接フィードバックを受ける時間が設けられている。自分たちの料理で改善できる点についてなどをストレートに聞いてくるところからも、コンクールに真剣に臨んできた様子が伺える。

washokum辻󠄀さんからのフィードバックに臨む、「ダシプロ」の二人。フィードバックは、選手たちが審査員と会話しながら、その日の自分たちの料理、調理をふり返り客観視する貴重な時間。何を質問してもいい。


本気になった高校生の、その後もフォロー

この大会では、決勝に参加した6チームの全員に、副賞として金沢市内の料亭での実地研修と食事体験が用意される。実際、このコンクールへの参加をきっかけに金沢の料亭へ就職した生徒もいるという。

さらに優勝チームは、8月下旬にニューヨークのミシュラン星付きレストランでの研修に参加できる。「真剣に取り組んだ結果にふさわしい、夢のようなご褒美にしています。料理人が社会的にリスペクトされている海外の現場を見てほしい。ニューヨークの料理人も『日本のハイスクールチャンピオン』として生徒をリスペクトしてくれる。この先の糧になる体験だと思います」(髙木さん)。

washokun開会式と閉会式には村山 卓金沢市長も参加して、高校生たちを激励。YouTube配信していたコンクールの様子も、公務の合間にチェックしていたという。

料理に夢中な学生が、高校時代の一時期、一つの献立の考案から制作、ブラッシュアップに全力を費やす。そんな彼ら彼女らが本気になれる舞台を料理人と自治体が真剣に作る。こうしたイベントや目標が、日本料理の未来を支える一角になっているに違いない。来年の挑戦者の頑張りも、今から楽しみだ。

washokuo戦いを終え、ホッとしたところで記念撮影。右から、美里工業高等学校(沖縄県)「てるてるぼうず」、広島県立総合技術高等学校からチーム「お茶―ズ」、同「しぎーsはな」、綾羽高等学校(滋賀県)「主人公」、同「ダシプロ」、野田鎌田学園杉並高等専修学校(東京都)「最強最高天才コンビ」。

▼全日本高校生WASHOKUグランプリ 公式ホームページ
▼全日本高校生WASHOKUグランプリ2026決勝大会 ダイジェスト動画

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