ミシュランガイド京都・大阪2026|6年ぶりに三つ星誕生。注目の料理人は何を語ったか【完全版】
4月23日、「ミシュランガイド京都・大阪2026」の掲載店が発表され、京都・大阪の料理界の現在地が明らかになりました。大きなニュースは、京都に6年ぶりとなる三つ星店が誕生したこと。新二つ星と一つ星に24軒、ビブグルマン12軒が加わり、総掲載店舗数は479軒となりました。そのセレモニーで料理人たちは何を語ったのか。評価の背景にある思想や、現在の取り組みを紹介します。
ミシュラン京都・大阪2026|星獲得店一覧【完全版】

三つ星——そのために旅行する価値のある卓越した料理
三つ星は京都6軒、大阪3軒。京都では6年ぶりに新たな三つ星が加わり、顔ぶれに変化が見られた。
京都:「瓢亭」「美山荘」「一子相伝 なかむら」「祇園 さゝ木」「菊乃井 本店」「未在」
大阪:「太庵」「ハジメ」「柏屋 大阪千里山」
二つ星——遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理
二つ星は京都・大阪ともに厚みのある層を維持しつつ、新規掲載5軒が加わった。京都は三つ星も含めて日本料理店のみという状態がここ数年続いている。
京都:「徳ハ本也」「有職料理 萬亀楼」「おたぎ」「獨歩」「京懐石 吉泉」「草喰 なかひがし」「緒方」「菊乃井 露庵」「室町 唯」「祇園 にしかわ」「祇園 又吉」「祇園 丸山」「建仁寺 祇園 丸山」「高台寺 十牛庵」「高台寺 和久傳」「山荘 京大和」「炭火割烹 いふき」「東山 吉寿」「凌霄」
大阪:「老松 ひさ乃」「カハラ」「天神橋 青木」「ぬま田」「宮本」「弧柳」「照屋」「フジヤ1935」「ラ・シーム」「鮨 原正」「幽玄」「旬彩天 つちや」
新・一つ星——近くに訪れたら行く価値のある優れた料理
一つ星には新たに19軒が加わった。
京都:「コガ」「ムベ」「東山 緒方」「ジェルモーリオ」「萬寿寺はくらん」「よこい」「イマ」「韓式料理ピョリヤ」「即今 藤本」「ひがしやま 司」「宮川町 ほった」「ルーラ」
大阪:「浮田町 いま」「エンパティ」「鮨 重永」「十皿」「ぬまた 双」「アトリエ ハナダ」「八盂」
今年の注目トピック|評価の変動と新規掲載
2026年版では、京都の料理旅館「美山荘」が新たに三つ星へと昇格した。京都・大阪で新たな三つ星が誕生するのは2020年版以来となり、京都の三つ星は6軒に。
二つ星には新たに5軒が加わった。京都からは「獨歩」「東山 吉寿」「室町 唯」「徳ハ本也」の4軒、大阪からは「照屋」が選ばれ、日本料理の層の厚さと多様性を印象づける結果となった。いずれも技術と個性を兼ね備え、時代感覚を映し出す店である。
一つ星は京都で12軒、大阪で7軒の計19軒が新たに掲載。両エリアともに次世代を担う料理人たちの台頭が鮮明となった。伝統を踏まえながらも、素材の解釈や表現において独自のアプローチを打ち出す店が増えている点も見逃せない。
また、ビブグルマンには京都で3軒、大阪で9軒が新規掲載。加えて、京都・大阪エリアで初となるソムリエアワードには、大阪「ルイーズ」のオーナーソムリエール・田中美希氏が選出された。さらに、メンターシェフアワードは大阪「柏屋 大阪千里山」の松尾英明氏、サービスアワードは京都「高台寺 和久傳」の桑村祐子氏が受賞。料理のみならず、人材育成やサービスといった側面にも光が当てられる結果となった。
受賞者コメント|料理人は何を語ったか
「ミシュランガイド京都・大阪」は、初版より、多くの日本料理人が星を獲得しているのが特徴。2026年版で受賞した4人の日本料理人の言葉を集めた。
三つ星「美山荘」中東久人氏

京都・花背の料理旅館「美山荘」は、2010年の初版で一つ星、翌年に二つ星を獲得し、2026年版で三つ星へと昇格。2021年版からはグリーンスターにも選出されている。
主人の中東久人氏は、自ら山に入り採取する旬の自然の恵みを生かした料理で知られる。その季節にあるものを、その土地で料理するという、料理の原点ともいえる営みを変わらず積み重ねてきた。春は山菜、夏は川魚、秋はきのこ、冬はジビエと、里山の移ろいをそのまま映す献立も、この店の大きな魅力。静謐な自然の中にある空間と相まって、訪れる者に特別な時間をもたらす。
また、女将の中東佐知子氏は2023年版でサービスアワードを受賞。料理とともに、もてなしの質の高さも国内外から評価を集めている。長年の積み重ねが結実し、三つ星という最高評価に至った。
「純粋に嬉しいです。これまで二つ星の評価をいただく中で、『いつか三つ星を獲りたい』と思っていました。本日このような評価をいただき、本当に嬉しく思います。同時に、三つ星には大きな責任が伴うとも感じています。料理やサービスに、これまで以上に力を尽くし、自分自身の感性を開いて、これからも取り組んでいきたいと思います」。
二つ星「徳ハ本也」松本進也氏

京都の「徳ハ本也」は、店主・松本進也氏の経験を礎にしながら、新たな表現を模索する一軒だ。囲炉裏を用いた焼き物をはじめ、正統な技に創意を重ね、自身の料理を探求し続けている。今回の二つ星獲得は、そうした飽くなき探求の積み重ねが結実したものといえる。
「料理を始めた頃、京の景色を見ながら『ここで一番を獲れるような料理人になろう』と声をかけてくださった先輩がいました。僕はその言葉をまっすぐに追いかけ、どうすれば辿り着けるのか、どんな心がけが必要なのかを考え続けてきました。その積み重ねが今につながっているのだと思います。小さな一言でも、人の心に火を灯すことがある。自分もそうした姿勢で、次の世代の料理人を育てていければと思います。また、僕を支えてくれたスタッフ、女将、お世話になった先輩方、そして素晴らしい食材を届けてくださる生産者の皆さま、関係者の方々に心より感謝しています。皆さまあっていただいた賞です。『徳ハ本也』、これからも精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします」。
一つ星「ひがしやま司」宮下 司氏

京都・東山に店を構える「ひがしやま司」は、日本料理の伝統を踏まえながら、宮下氏の感性を織り込んだ一皿を追求する一軒。端正な技の上に、独自の解釈を重ねた表現が持ち味だ。
その歩みは、必ずしも平坦ではなかった。自身の作る料理が「分かりにくい」と感じられるのでは、という迷いが生じた時期もあったという。それでも自らの感覚を信じ、試行錯誤を重ね、地に足のついた料理を提供できるようになってきた。今回の一つ星は、そうした積み重ねがひとつのかたちとして認められた結果といえる。
「今回評価いただいたことは、とても嬉しく思っています。ただ、これで満足することはできませんし、すべきではないとも思っています。一つ星をいただいたことで、自分が取り組むべき課題がより明確になり、次の段階へのスタートだという意識が強くなっています。料理はもちろん、器や空間も含めて、より細やかな視点で見つめ直し、それぞれの精度を高めていきたいと思います」。
メンターシェフアワード「柏屋 大阪千里山」松尾英明氏

大阪で三つ星とグリーンスターの双方を獲得する「柏屋」。その主人である松尾英明氏は、大阪千里山本店と北新地店を率いながら、多くの門弟を育ててきた料理人だ。海外からの研修生も積極的に受け入れ、日本料理の技術のみならず、その根底にある思想や姿勢を伝えている。
また、大阪の料理人による研究会「大阪料理会」に参画し、地域の食文化の発展にも寄与。調理師学校での指導をはじめ、次世代の育成に向けた活動を店の内外で続けている。
さらに2025年の大阪・関西万博では、大阪の食の魅力を国内外へ発信するなど、日本料理の未来を見据えた取り組みを重ねてきた。こうした継続的な人材育成と社会への貢献が評価され、今回のメンターシェフアワード受賞に至った。
「60歳を過ぎ、長く料理に携わる中で、食材をとりまく環境のことや、いまの料理業界の流れについて考えることが増えました。おいしいものを追求することは大切ですが、それと同時に、環境への配慮も欠かせないと思っています。そうしたことを実践しながら、若い料理人とともに歩み、この視点や考え方を伝えていきたい。ひとりでも多くの料理人に受け継いでいければと思います」。
料理人の言葉から読み解く、2026年の潮流
2026年の受賞者たちの言葉からは、環境や社会との関係を、これまで以上に意識するフェーズへと移っていることが伝わってきた。自然の恵みを受け取り、一皿を組み立てる。その営みの根底にある「美味しさ」を大切にしながらも、それを未来へつないでいく責任を、料理人一人ひとりが意識しているように感じられる。
同時に、料理人の探求はより深まってきている。何を選び、どう表現し、価値ある料理として提示するのか。料理店が増え、選択肢が広がるいま、個性の磨き方や表現のあり方は一層多様になっている。
さらに印象的だったのは、技術の継承にとどまらず、環境への配慮や仕事への向き合い方といった考え方も、次の世代へと手渡そうとする姿勢である。伝える、伝わるには時間がかかる。だからこそ、「いま」から積み重ねていくことの重要性を、第一線に立つ料理人たち自身が自覚しているように感じた。
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