料理人のためのソムリエ試験対策 Vol.19 三次試験・論述試験を突破するために必要なこととは?
論述試験対策で大切なのは、知識を増やすことだけではありません。限られた時間の中で、問われたテーマについて自分の知識を引き出し、200~300字の文章として「書き切る力」を身につける必要があります。では、何を、どのように練習すればよいのでしょうか。今回は過去10年の出題から設問ごとの傾向を整理し、得点につなげるための対策を解説。さらに、本番を想定した20問の練習問題も用意しました。
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松岡正浩(「合同会社 まじめ2」代表 / 大阪・谷町四丁目『Fujiya1935』ソムリエ)
兵庫県出身。山形大学に進学後、県内のホテルに就職。東京『タテル ヨシノ 芝』にて本格的にフランス料理の世界に入り、その後、渡仏。『ステラ マリス』を経て、パリの日本料理店『あい田』ではシェフソムリエとして迎えられた。帰国後、和歌山『オテル・ド・ヨシノ』にて支配人兼ソムリエを務め、2016年、日本料理『柏屋』へ。こちらでも支配人兼ソムリエを務め、ワイン・日本酒を織り交ぜたペアリングコースを提案。レストランガイド「Gault&Millau(ゴ・エ・ミヨ)2021」にてベストソムリエ賞受賞。2022~23年、京都・御所東のフランス料理『Droit(ドロワ)』においてギャルソンとして勤務。23年6月より、大阪・北新地の中国料理『空心 伽藍堂』にてシェフソムリエを務める。26年より大阪のレストラン『Fujiya1935』にてソムリエを務める。
過去問から「出題傾向」を掴む
前回、10年分の過去問を紹介し、それらを調べながらでもよいので解答してみてくださいとお伝えしました。
実際に挑戦されて、いかがでしたでしょうか。社会人になってから200~300字の文章を書いたことがない、という方も少なくないはずで、苦労された方も多かったと思われます。
一次試験対策の際にもお伝えした通り、入試や資格試験において最も効率的なのは過去問を主とした学習です。「同じ問題が出るかどうかわからない」と思われるかもしれませんが、出題にはそれなりの傾向があり、それらを意識しながら学習することが最も効率的だと多くの識者が口を揃えます。
設問①の傾向と対策
設問①を振り返り、その対策を考えます。
2020年と2021年を除き、論述試験はテイスティング試験の後に行われてきたため、「テイスティングしたワインについて」問われる設問が定番となっています(2020、2021年はコロナ禍のため論述試験が先に実施されました)。
この流れが続くと仮定し、二次試験に出題される可能性の高い主要ブドウ品種の特徴と、それに合わせる料理を具体的に想定して文章化する練習を重ねましょう。近年、ソムリエ教本に「ペアリング」の項目が加わったこともあり、ソムリエ協会はこのテーマを重要視しています。だからこそ、しっかりと準備し、確実に得点につなげたいところです。
設問①で最も重要なことは、テイスティングで供出されたワインのブドウ品種に自信がなくても、いまいちわからなかったとしても、ご自身が想定したブドウ品種の特徴を明記して解答することです。
過去の受験報告を見る限り、ブドウ品種が間違っていてもしっかりと書けた方が合格しています。
協会発表の採点基準にも「香りや味わい、特徴が明記されている」としている一方で、ブドウ品種そのものへの言及は求められていません。つまりブドウ品種を外しても大きな減点にはならず、ワインの特徴を的確にとらえられているかどうかが重要だと考えられます。ソムリエコンクールでも、曖昧な解答や無回答は、間違った解答より評価が低いと言われています。
例え、間違っていると思っても気にせず合格のためと割りきって、はっきりと明確に書き切ることが何よりも大切です。
設問①対策として
・主要ブドウ品種の特徴について言語化できるようにする
・主要ブドウ品種と料理・チーズとの相性について言語化できるようにする
設問②、③の傾向と対策
設問①が「テイスティングしたワインと料理の相性」という定番化された内容であるのに対し、設問②、③は年によって様々です。それらを大きく2つの系統にわけて考えることにします。
・専門知識の説明を求める問題
オレンジワイン(2017)、日本ワインのラベル表示ルール(2017)、ジョージアワイン(2018)、ケソ・マンチェゴ(2019)、地理的表示(2019・2024)、オーストリアのゼクトg.U.(2020)、十勝ラクレット(2025)と、特定の産地・製法・法規・食材についての知識を簡潔にまとめる力が問われてきました。
近年のソムリエ協会は、日本ワインや日本関連のテーマに力を入れています。ラベル表示、GIなど、特にここ数年のうちに改定されたものはしっかりと押さえておきましょう。また、設問①とも重なるのですが、チーズに関しては、ある程度予想して準備をしておくとよいでしょう。そうすることで、例え知らないチーズが出題されたとしても、気合で乗り切れるかもしれません。さらに、オーガニックワイン、サスティナビリティ、地球温暖化がブドウ栽培に与える影響など、時事的なキーワードにまで手を広げることができれば申し分ありません。
・接客・提案力を問う問題
赤ワインを冷やしたいお客様への提案(2016)、ワイン初心者への提案(2020)、クレーム対応(2021)、チーズを楽しむお客様への提案(2024)と、知識そのものよりも、お客様の要望を汲み取り、どう言葉にして提案するかという実務的な対応力が問われました。
採点基準を見ると、このタイプの設問でも重視されているのは「理由の論理性」と「実際に試してみて効果がありそうか」という点です。専門知識の説明を求める問題とは違って、プロとしての接客経験がそのまま解答の説得力に反映される設問と言えるでしょう。
この設問②、③は、実際にお客様からその質問をされた場面を想定して書くことが大切です。採点者を、目の前にいるお客様とイメージしてうまく伝えることができれば、高得点につながります。
また、設問①の「ブドウ品種がわからなくても書き切る」という姿勢は、設問②、③にもそのまま当てはまります。わからないテーマや用語が出題されても、一次試験対策で培った知識の断片までを総動員し、紙面を埋める工夫をしましょう。
過去10年の傾向から考えた「想定問題20問」
さて、過去10年の傾向を踏まえて、想定問題を20問用意しました。実際に一問ずつ、文字数を意識しながら書いてみてください。
日本ワイン・法規関連
①新潟県のワイン造りの歴史と発展について説明してください。
②「日本ワイン」と「国内製造ワイン」の違いについて説明してください。
③ワイン産業における日本とNZの現在の関係について説明してください。
④「亜硫酸無添加ワイン」について、お客様から質問された想定で説明してください。
製法・スタイル関連
⑤ブドウ栽培の一年のサイクルを300文字以内で説明してください。
⑥ペットナット(pét-nat)について、スパークリングワインにあまり詳しくないお客様に説明してください。
⑦アンフォラ(クヴェヴリ)を使ったワイン造りについて歴史的な背景もふまえて説明してください。
⑧ビオディナミ農法について、慣行農法との違いをふまえて説明してください。
⑨「マセラシオン・カルボニック」について説明してください。
⑩シェリーの「ソレラシステム」についてワインに与える効果もふまえて説明してください。
産地・トレンド関連
⑪イギリスのスパークリングワインが近年評価されている理由について述べてください。
⑫「ナチュラルワイン」という言葉の定義があいまいな理由について、あなたの考えを述べてください。
⑬気候変動がワイン産地に与えている影響について、具体例を挙げて説明してください。
⑭低アルコールワイン・ノンアルコールワインの需要が増えている背景について説明してください。
接客・提案系
⑮「甘口ワインが苦手」とおっしゃるお客様に、食後のデザートに合わせるワインを提案してください。
⑯ウォッシュタイプのチーズを初めてお召し上がりになるお客様に、ワインの相性についてもふれつつ説明してください。
⑰妊娠中のお客様から「ノンアルコールでワインのような雰囲気を楽しみたい」と相談された場合の対応を説明してください。
⑱ワインの保管に関して、ワインセラーをお持ちでないお客様からの相談に対して適切な方法を説明してください。
⑲「ワインには詳しくないが、上司への手土産として恥ずかしくない一本を選びたい」というお客様に対する提案について説明してください。
⑳海外のお客様に「日本料理に合わせるワインを選んでほしい」と相談されました。季節も想定し、対応を(日本語で)説明してください。
上記はあくまで想定問題です。このまま出題される可能性は低いと思われますが、過去の傾向を意識し流れを掴むことで、一次試験対策で学んだ知識を呼び起こして書くことができるようになります。
また、ご自身で想定問題を作成し、自ら解答してみてください。想定問題を考えるうちに、ご自身の中で傾向が自然と整理され、ポイントが掴めるようになってきます。さらに、個別のテーマを考え、調べる過程で得た知識が、試験本番で思わぬ力を発揮するかもしれません。
設問①に6割。まずは「書き切る力」を鍛える
過去の受験者の報告を読んだ私の体感ですが、3つの設問のうち、(正しいかどうかは別として)2つしっかりと書くことができれば、1つはうまく書けなくても大丈夫だと思われます。
このことからも、傾向はあるとはいえ、ピンポイントでの出題が想定しづらい設問②、③よりもパターン化して準備できる設問①対策を優先させます。
設問①を確実に得点に結びつけ、設問②、③のどちらかをなんとか頑張って書き切る。もう一方は残りの時間で、嘘でもハッタリでも何でもよいのでできる限り紙面を埋める。このラインをクリアできれば十分合格圏内です。
ですから、何よりもまずは書く訓練を繰り返すことです。そして、時間の6割を設問①対策に、残り4割を設問②、③対策に充てるくらいの配分がよいのではと私は考えております。
最後に
残念ながら不合格になった方の受験報告を総合すると、あまり書かなかった方、自信がないからと曖昧に書いた方が多かったように感じます。ですから、例え全くわからなかったとしても、火事場のなんとかで創作でもよいのでできる限り紙面を埋めましょう。
もし、興味がございましたら、私が名誉管理人を務めている「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」において、9月以降、過去十数年分の受験報告がアップされますので、参考にしていただければと思います。
皆さんの健闘を祈ります。
▼料理人のためのソムリエ試験対策 他の回はコチラから。
Vol.1 概要編
Vol.2 一次試験対策前にすべきこと
Vol.3 一次試験対策の準備と春先までの勉強法
Vol.4 一次試験対策、教本と過去問を利用した勉強法
Vol.5 二次試験対策の準備
Vol.6 二次試験対策として意識すべきワインについて
Vol.7 テイスティングして書き留める
Vol.8 ワインの酸とアルコール
Vol.9 主要白ブドウ品種の特徴
Vol.10 主要黒ブドウ品種の特徴 その1
Vol.11 主要黒ブドウ品種の特徴 その2
Vol.12 ラストスパート!一次試験前二ヶ月間の一次試験対策
Vol.13 二次試験を意識したテイスティング
Vol.14 白ワインを3つのタイプに分ける
Vol.15 赤ワインのタイプ分け
Vol.16 二次のテイスティング対策最終章~「模範テイスティングコメントを暗記する」
Vol.17 三次試験・サービス実技対策
Vol.18 三次試験・論述試験対策
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