10月の献立づくりに役立つ記事|きのこ・栗・十三夜・新米【和食・日本料理】
暑さがようやく落ち着き、秋の深まりを感じる10月。和食・日本料理の献立では、松茸をはじめとするきのこや栗、銀杏、新米など、秋の実りをどう取り入れるかが楽しみな時季です。また、中秋の名月(十五夜)に続く「十三夜」も10月ならではの歳時。2026年は10月23日(金)にあたり、旬の栗を供えることから「栗名月」とも呼ばれます。そこで今回は、10月の献立づくりに役立つWATOBIの記事を、「きのこ」「栗と十三夜」「ご飯」「名店の10月の献立」の4つのテーマからご紹介します。旬食材の生かし方から、炊飯の調理科学、歳時の取り入れ方、人気料理店の献立の組み立てまで、秋の料理を考えるヒントとしてお役立てください。
10月に作りたい、きのこの人気レシピ
撮影/竹中稔彦、東谷幸一
秋の味覚として真っ先に思い浮かぶものの一つが、きのこです。
舞茸、椎茸、シメジ、ナメコ、松茸、香茸など、ひと口にきのこといっても、香りや旨み、歯ざわり、水分量はさまざま。揚げる、蒸す、炒める、炊くなど、調理法によっても持ち味が大きく変わります。
WATOBIの「きのこの人気レシピ10選」では、そんな個性を生かしたプロの料理をまとめて紹介しています。
例えば京都『乃し』の「ヒラキナメコの秋巻き」は、ヒラキナメコをはじめ5種類のきのこを春巻きの皮で包み、水分や旨みを逃さず、とろりとしたあんのような状態に。栗や銀杏も加え、ひと皿に秋を凝縮します。
大阪『㐂川』創業者・上野修三さんの「裏白椎茸の揚げ出し」は、朝採れの原木椎茸に豆腐真丈を合わせ、さっと揚げることでフレッシュな香りと弾力を残す一品。さらに干し椎茸の戻し汁を加えただしを張り、椎茸の旨みを重ねます。
一方、京都『瓢亭』15代目当主・髙橋義弘さんは、舞茸やハタケシメジ、ナメコ、ムキタケを塩麹に一晩漬け、炒めてペーストに。卵白で作った茶碗蒸しに添え、複数のきのこが持つ旨みと香りを一つにまとめています。
水分を閉じ込める、逆に乾燥させて旨みを凝縮する、油によって香りを引き出す、複数種を組み合わせる——。レシピを見比べると、それぞれのきのこの持ち味を生かす、プロならではの工夫が見えてきます。
▶ きのこの種類・調理法から探せる「きのこの人気レシピ10選」を見る
十三夜は「栗名月」。旬の栗を献立に
撮影/竹中稔彦、東谷幸一
2026年の十三夜は10月23日(金)。旧暦9月13日の月を愛でる十三夜は、中秋の名月(十五夜)に次いで月が美しいとされ、日本で生まれた月見の風習です。十五夜が「芋名月」と呼ばれるのに対し、十三夜は、この時季に収穫される栗を供えることから「栗名月」とも呼ばれます。
栗が本格的に料理屋の献立に登場するのもちょうどこの頃。
京都『二條 みなみ』の南 建吾さんが仕立てる「丹波栗の飯蒸し」は、栗ともち米という、十三夜にふさわしい組合せ。もち米は調味だしを用いて蒸し、栗とは最後まで別々に調理します。提供する直前に合わせて再び蒸すことで、栗の香りをもち米に移しながら、それぞれの食感を生かします。
大阪『能勢 日本料理 新』の中井 建さんは、地元・能勢の栗を、実だけでなく葉や枝まで使って一つの甘味に。栗は低温で数週間寝かせて甘みを引き出してから渋皮煮にし、お汁粉に。葉はお茶に、枝は塩麹の燻製に使い、栗が育つ土地そのものを表現しています。
また、浪速割烹の名料理人・上野修三さんは、大粒で穏やかな甘みを持つ能勢の銀寄栗を「料理栗」として高く評価。ウズラとの炊合せや甘鯛との蒸し物など、栗料理を考案してきました。
ほかにも、蒸した栗と甘露煮を合わせた「栗いが揚げ」や、栗あん、栗塩など、WATOBIではさまざまな栗の生かし方を紹介しています。栗ご飯や甘露煮だけではないプロの発想から、十三夜や10月の献立に取り入れるヒントを探してみてください。
▶ 八寸、炊合せ、蒸し物、甘味まで。栗料理をもっと見る
新米の季節に知りたい、おいしいご飯の炊き方
撮影/綿貫淳弥
秋は新米の季節。栗やきのこなどを炊き込んだご飯も魅力的ですが、米そのものがおいしい時季だからこそ、白ご飯の炊き方を改めて考えてみるのもよいでしょう。
東京『麻布 和敬』店主・竹村竜二さんと農学博士・川崎寛也先生が検証した「炊飯のロジック」では、吸水から浸水、ザル上げ、加熱、蒸らしまで、ご飯を炊く一つ一つの工程を科学的にひもといています。
竹村さんが理想とするのは、一粒ずつの食感があり、口の中ではらりとほぐれ、噛むともっちりとするご飯。いわゆる「粒立ち」と「はらけ」のよさを目指しています。
そのために重要になるのが、まず吸水です。実験では、同じ15分でも水温によって米の吸水量が変わることを検証。水温が高ければ吸水は早く進みますが、必ずしもそれがおいしさにつながるわけではありません。竹村さんが求める粒立ちのよいご飯では、水温を15℃に保って浸水させることが、狙った食感を生む一つのポイントになっています。
さらに、「なぜ浸水するのか」「ザルに上げる意味は何か」「蒸らしは必要なのか」と、料理人が経験的に行ってきた工程にも一つずつ考察。白ご飯だからこそ、米、水、温度、時間の違いがそのまま味や食感に現れます。炊飯を感覚だけでなく科学の視点から捉え直すことで、日々のご飯を見直すヒントが見つかります。
▶ 吸水から土鍋炊飯まで。「炊飯のロジック」シリーズを見る
人気日本料理店に学ぶ、10月の献立の立て方
秋の食材は豊富ですが、それらをただ並べれば10月らしい献立になるわけではありません。
京都『祇園さゝ木』のコンセプトは「師弟で挑む味づくり」。献立会議では、大将・佐々木 浩さんと調理スタッフでアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせて組み立てていきます。10月において佐々木さんは「山々が錦秋に染まる11月は秋真っ盛りという感じやけど、10月はそこまでいってない。まだ暑さも続きそうやし、魚も端境期」と話します。
お椀や鉢物では、この季節ならではの鱧と松茸を掛け合わせた「鱧松」の意見が上がり、ご飯物では、きのこに着目。一皿のおいしさだけでなく、食材や調理法の重複、料理の順番、彩りまで考えながら献立を組み立てていきます。
▶『祇園さゝ木』10月の献立会議を見る
▶【動画】『衹園さゝ木』10月の試食会[2025]を見る
撮影/岡森大輔
一方、東京『銀座 小十』の奥田 透さんはこの年、新たな趣向を取り入れました。
茶の湯では、炉開きを迎える11月を“茶人の正月”とするのに対し、その前月の10月は「名残の月」。そこで、一人一人異なる器を使う茶事の「寄せ向」を料理屋流にアレンジし、6種類の付出しを用意。客が最初に注文したお酒などを見ながら、奥田さん自身がその人に供する一皿を選びます。
さらに、焼物には20年来の秋の名物「魳松茸包み焼き」を。松茸を脂ののったカマスで包んで炭焼きすることで、直接火を当てずに蒸し焼きにし、香りと味を閉じ込めます。
▶ 十三夜や名残の茶事を取り入れて。『銀座 小十』の10月の献立を見る
撮影/大山裕平
京都『飯田』では、「菊」と「十三夜」という二つの主題をコース全体に織り込みます。
先付では重陽の節句の「菊の着せ綿」を料理で表現しますが、その後は菊にちなんだ器へとバトンタッチ。料理は焼き松茸や戻り鰹など、秋の味覚をまっすぐに楽しませます。そして締めには、栗名月にちなんだ栗の菓子を。
一つのテーマを料理だけで繰り返すのではなく、室礼、器、料理、甘味と表現方法を変えながら、コースを通して季節を感じさせる。その組み立て方も、献立づくりの参考になります。
▶ 菊と十三夜、二つの主題を一つのコースに。京都『飯田』の10月の献立を見る
撮影/岡森大輔
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