大阪料理会

【レシピ付き】棒鱈と慈姑(クワイ)の皮揚げ——『じょう崎』城崎栄一さん作

1月に開催された大阪料理会では、おせちのため大量に仕入れた食材を使った料理提案が光っていました。なかでも吹田の『じょう崎』店主・城崎栄一さんは、角の折れたものや皮などを使って、ここまでやる⁉というクワイの料理を発表。でんぷんを抽出した、驚きの「水溶きクワイ粉」のレシピは必見です! また、関西のおせちには欠かせない棒鱈を、いかに簡単に作るか?という難題にもチャレンジ。柔らかく、味がしゅんでいるのに煮崩れなし。会員が絶賛した棒鱈の仕事とは?


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
城崎栄一さん(大阪・吹田『じょう崎』店主)

1967年、福岡県生まれ。18歳で神戸の料亭に入り、関西の数軒のホテルで和食の経験を積む。1995年、神戸・三宮にて割烹の料理長に抜擢されたところで震災が起こり、同年4月、大阪の吹田で独立を決意。「野菜の皮など未利用部分をもっと活用した提案をしていきたい」と語り、実直に大阪料理と向き合う。

簡単な棒鱈の仕事と、クワイの皮とでんぷんの使い方を提案します

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今回の一品には、2つの提案を入れています。
まず、棒鱈をいかに簡単に煮るか。関西の和食の料理人は、おせちに入れる棒鱈の仕込みに大変な労力をかけていると思います。

うちでは戻した棒鱈を仕入れ、スチームコンベクションで6時間蒸します。こうすると、炭酸を使わなくても、ウソみたいに骨まで柔らかくなるんです。真空をかけているので形も保てて、皮もずる剥けません。温度はいろいろ試して今のところ95℃がベストかな、と思っています。

煮る時に赤酒※を使うのは、甘みや旨みに優れているだけでなく、酒類では珍しく弱アルカリ性なので、棒鱈が柔らかく炊き上がるため。身が適度に締まるのも利点です。

2つめの提案は、クワイの有効活用。おせちのために大量に仕入れると、角が折れていたり、形の悪いものも混ざっています。これを水と共にフードプロセッサーにかけて濾すと、おろしクワイとクワイ水が取れます。このクワイ水のでんぷんを抽出してみました。おろしクワイは今回使いませんでしたが、これでクワイ饅頭を作ると美味しいですよ。

クワイ水は沈殿させて、上澄みの水を取り除くと、でんぷん質が残ります。ですが、特有の苦みがあるので、上澄みの水は3回取り換えました。
これを水で溶いて、クワイの皮揚げにも、仕上げのあんにも使っています。

大量に余った皮は、正月休みにずっと干しておいて、余分な水分を抜いてから揚げて、衣に使いました。
ちなみに、クワイの皮は刻んで乾燥させ、100℃で焼いておくと1年は保存できます。うちでは、これを220℃で焙煎し、クワイ茶としてお出ししています。

※赤酒:熊本に伝わる別名「灰持酒(あくもちざけ)」。清酒と同工程で仕込み、もろみに木灰を投入し、酸敗を防いだ伝統製法で仕込む。

osa0012-2c3人の発表者の中で共通テーマにしていた「梅人参」。城崎さん(右)は「ねじり梅とは違う彫り物に」。さっと直煮して地に浸している。畑 耕一郎会長は「こんな美味しい棒鱈を久しぶりに食べた!」と感嘆していた。

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