【レシピ付き】ヴィーガン料理「擬製子持ち鮎料理」——『懐石料理 喜一』北野博稔さん作
精進料理は、動物性食材を使わないため、まさに古式ゆかしきヴィーガン料理。その中に、肉や魚を用いた料理に見立てた「擬製(もどき)料理」があります。今回、河内長野の『懐石料理 喜一』の北野博稔(ひろとし)さんが、つくね芋をベースに仕立てたのは、擬製子持ち鮎の塩焼き。卵の食感やワタの苦みも表現した、手間がかりの一品です。若い北野さんのチャレンジに触発された会員から様々なアドバイスが出て、会は大いに盛り上がりました。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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北野博稔さん(大阪・河内長野|『懐石料理 喜一』店長)
1983年生まれ。高校卒業後、兵庫県の料理屋で3年修業し、2005年、父が営む創業30余年の日本料理店『懐石料理 喜一』に入る。ワイン好きが高じて、ソムリエの資格を取得。日本料理とワインの相性を追求する若手として、大阪料理会でも一目置かれている。
つくね芋をベースに、鮎の卵はもち粟、ワタの苦みは赤味噌で表現しました
うちでは晩春から鮎をよく使っていて、夏を越すと塩焼きに飽きたお客様も増えるので、寿司にしたり、背に道明寺粉を詰めて煮浸しにしたりと、一工夫してお出ししています。
鮎の仕事ばかりしていたので、しまいには何でも鮎に見えてきて(笑)。今回のテーマが「ヴィーガン料理」と聞いて、擬製豆腐ならぬ、擬製鮎の塩焼きをやったら面白いな、と思ってチャレンジしました。
身は、つくね芋を裏漉しした生地で整形しました。鮎の肌を表現するのに、とろろ昆布を表面に付け、背には青海苔をまぶして。目は黒ゴマ、尾ビレはジャガイモを素揚げして作りました。
始めは身に見立てる生地にジャガイモを使ったのですが、生地が黄色になってしまって…。つくね芋の方が味わいに繊細さがあって、色合いも良かったんです。僕は豆腐好きなので、絹ごし豆腐も加えています。鮎は脂があるので白絞油も入れて、塩だけで味を付けました。
つくね芋の生地は作りたてだと水分が結構あるんですが、1日置くとほどよく硬さが出て、扱いやすくなります。軽く成形してから、真ん中をくぼませて、鮎の卵に見立てたもち粟と、ワタの代わりとして赤味噌・ゴマ油で和えたトンブリを包みました。
芋だけだと味わいが単調になりますが、もち粟のプチプチした食感、赤味噌のほろ苦さとコクがアクセントになったと思います。ライスペーパーで巻いて串を打ち、サラマンダーで焼いて、焼き色を付けました。鮎の塩焼きらしく、蓼(たで)あんをかけて仕上げています。
もどき料理は、作っていて楽しいですね。卵は何で表現しよう? ワタの苦みに近い調味料は?と、いろいろ考えながら試して、まるで図工をしているようでした(笑)。
今回は、ライスペーパーで巻いてから焼く、というアイデアが利いていると思います。それと、ジャガイモの素揚げで作った尾ビレ。焼くと軽く焦げて少し苦味が出て、かなり尾ビレの風味・食感に近くなりました!
「北野さんが楽しんで料理をしているのが伝わってきて、楽しくいただけました!」という声が圧倒的に多かった。ベテラン会員からは、ワタの苦みを味噌+ココアや大徳寺納豆などで表現したり、魚の身の繊維感を出すのに「ゴボウやレンコンを柔らかく茹でてすり鉢で当たるといい」というアドバイスも。畑 耕一郎会長は「鮎の皮目のパリッとした感じが出ていない。ワタに見立てた苦みも弱かったかな」と、あえて厳しい意見を伝えつつ、北野さんの健闘を称えた。
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