【レシピ付き】鱧真丈モッツァレラ射込みと舞茸の変わり椀——『和洋遊膳 中村』中村正明さん作
ようやく秋風が吹き始めた10月末に開催された139回目の大阪料理会。西心斎橋の『和洋遊膳 中村』店主の中村正明さんは、秋鱧と舞茸を使った変わり椀を仕立てました。鱧真丈の中には水牛のモッツァレラチーズを射込み、吸い地は舞茸のすり流し風で、トマトの旨みを潜ませています。ポイントは、舞茸のたんぱく質分解酵素を利用したこと。吸い地には卵黄でまろやかさを添えていますが、この酵素のおかげで凝固しないのだそう。その発表に、会員は皆、釘付けでした。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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中村正明さん(大阪・西心斎橋|『和洋遊膳 中村』店主)
1963年、奈良県生まれ。20歳で『志摩観光ホテル』のメインダイニング『ラ・メール』入店。総料理長・高橋忠之氏の下、フランス料理を修め、スウェーデン日本大使館の公邸料理人に。さらに『浪速割烹 㐂川(きがわ)』で腕を磨き、1995年に独立。和洋の枠に捉われない自由闊達な料理に定評がある。奈良に菜園を持ち、自ら野菜も栽培。「大阪料理会」運営委員。
舞茸のポタージュをイメージし、異なるうま味成分を重ねた一椀です
『浪速割烹 㐂川(きがわ)』時代、鱧ちりをした残り湯に余った舞茸を入れて、よく味噌汁にしていました。これがすごく美味しくて。以来、鱧と舞茸はテッパンの相性だと思っています。
このお椀は、10月にお客様にお出ししていまして。うちは単品で楽しんでいただく割烹なので、食べ応えが必要。料理名にもインパクトがあった方がいい。“和洋遊膳”と謳っているのでワインもよく出ることもあり、「鱧真丈モッツァレラ射込み」としました。
鱧真丈は揚げて仕上げますが、その衣に「かけらもち」を使っています。もち米のおかきを砕いたものですね。香ばしくて、食感もいいですし、衣が吸い地を吸うとまた違う美味しさになる。すごく気に入っています。
吸い地は舞茸のポタージュをイメージしています。鱧だしにトマトと舞茸、それから卵黄を混ぜ合わせて加熱し、フードプロセッサーにかけたすり流し風ですが、不思議と卵黄が凝固しないんですよ。
茶碗蒸しに生の舞茸を入れて蒸し上げると、うまく固まらないですよね。あの現象は、舞茸のたんぱく質分解酵素によるものだそうです。この酵素が、卵液のたんぱく質を分解してしまい、凝固を阻止するんです。今回は、その作用を逆に利用してみました。
フードプロセッサーにかけると、卵の効果でとろっと仕上がるんですね。今回は、半量ほど裏漉しして、滑らかさを出しながら舞茸の繊維感も残したのですが、うちでは裏漉しせずに、そのままザラッとした舌触りを楽しんでいただいてます。
実は、今回のお椀には、舞茸のグアニル酸、モッツァレラチーズやトマトのグルタミン酸、鱧のイノシン酸と、多種のうま味成分が入っています。うま味成分が複数合わさることで、インパクトある美味しさに仕上がったと思います。
「まさに“和洋遊膳”の一椀。赤ワインに合いそう!」と会員が口々に声を上げるほど大好評だった。畑 耕一郎会長も「かけらもちの衣がいい仕事をしている。カリカリからしっとりへ、食感の流れがいい」と絶賛。舞茸のすり流しは「トマトの酸の利かせ方が絶妙」とベテラン会員。裏漉しを控えめにして、粗さを残した方がいいという意見が多く、中村さんは我が意を得たりのこの表情に。
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